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鼎談『Accumulation』――黒電話666 × 那倉太一(ENDON) × 西山伸基(soup) × 平野Y([...]dotsmark)

黒電話666   2017/01/25掲載
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東京を拠点に活動し、幾多のエフェクトペダルに古風な回転ダイヤル式電話機をカスタムしたオシレータを繋ぐ唯一無二のスタイルで注目を浴びるクリエイター、黒電話666が、初の全国流通作品『Accumulation』をリリース。大きくはハーシュノイズにカテゴライズされるであろうテクスチャの内部には、“ハーシュ”から連想されるウォール・オブ・ノイズとは異なる躍動感とマッシヴな低域、“音楽”的なダイナミクスを伴うアーキテクチャ、KyokaENAを起用するリミキサー陣の人選からも伺える、テクノやハードコアパンク等とフラットにリンクする活動の所以であろう“音”へのスタンスがひしめいています。
本稿では黒電話666に加え、親交の深いENDONのフロントマン・那倉太一氏(G.G.R.R.)、黒電話666のホームのひとつとなっている東京・落合「soup」のエンジニアを務める西山伸基氏(元warszawa, HEADZ / FADER)、リリース元「[...]dotsmark」のオーナー・平野Y氏を迎えて『Accumulation』を大解剖。黒電話666が“新しいノイズ”たる理由を突き止めます。
direction Masashi Narita
――今回が初めての正式リリースなんですよね。
黒電話666(以下 黒電話) 「そうです」
――当初から黒電話を用いたスタイルだったのでしょうか。
黒電話 「当初はDJをやっていて、その名義が“黒電話666”だったんです。電話を使うよりも名前が先」
西山伸基(以下 西山) 「なんでその名前にしたんですか?」
黒電話 「家で黒電話使ってたからというだけで。ただ“黒電話”だけだと味気ないので黒い数字を沿えました」
――DJではどんな音楽をスピンしていたんですか?
黒電話 「ミクスチャーとかですね」
――そこからノイズ / アヴァンギャルドに興味が移るきっかけがあったのでしょうか。
黒電話 「Digital Hardcore Recordingsです。学生の頃にATARI TEENAGE RIOTLive At Brixton Academy 1999』(2000)を聴いてからノイズとか実験音楽を知って、DJでもかけるようになりました」
那倉太一(以下 那倉) 「初めてDJでかけたノイズって覚えてる?」
黒電話 「MERZBOWMASONNAのどっちか。そのうちに自分でも何かやろうと思って、名前は引き継いでDJを止めて、録音を始めたんです」
那倉 「じゃあ自分の名前に引っ張られるように、電話で何かするようになったんだ。それは面白い」
西山 「ノイズを始めるにあたって自分の発信機を製作する段階で、名前が“黒電話666”だから電話で作るべきだろう、ということ?」
黒電話 「いえ、始めた頃は電話は使っていなくて。ギターだったり、シーケンサーにディストーションかけたりしてました。平野くんはその頃も知ってますね」
平野 「黒電話は使ってなかったね。サンプラーとか使ってた」
――電話スタイルに移行したのはいつ頃のことなのでしょう。
黒電話 「2004年です。その数年前にCDRっていう友達と知り合ったんですけど、彼が中野 HeavySick ZEROでやるイベントに誘ってくれて。その日初めて電話にマイクをぶっこんで使いました」
西山 「それは今使ってるのと同じ電話?」
黒電話 「違います。その時はダイナミックマイクを入れてました。それを使ってHeavySick ZEROの地下で、30分くらい音をガーって出したのが始まりです」
那倉 「DHRもそうだし、HeavySick ZEROっていうところに黒電話の出自を感じます。ノイズ以外の、MURDER CHANNELとかとの繋がりはそういうところだもんね」
黒電話 「MURDER CHANNELなしに今の自分はないですね」
――電話を使おうと思ったのはやっぱり、何かしらのアクションを伴うほうが好みだったからなのでしょうか。
黒電話 「そうですね。“シャカシャカ”が欲しくて」
――MASONNAで言うところの(笑)。
西山 「サクマドロップスの缶にあたるものとして選んだのが黒電話だったわけですか(笑)」
黒電話 「そう。やっぱりあれがやりたかったんですね。それまでにもサンプリングのソースとしてベルの音を使うことはあったんですけど」
西山 「でも、名前のほうが先にあったという事実は意外ですね。てっきり“電話でノイズを出す”という行為が先にあってこその名前だと思ってました」
黒電話 「よく言われます。“黒電話”に縛られすぎるのを避けるために、昔ほどそれを推さずに近年は活動してます」
――GUILTY CONNECTOR(GUILTY C.)だって今はシバいてないですもんね。それと一緒ですよね。
黒電話 「そうですね」
――当時GUILTY CONNECTORの存在は黒電話さんの目にどう映っていましたか?
黒電話 「“雑誌の中の人”みたいな存在でしたね。たしか同い歳なんですけど、僕が始めた頃、彼はすでに海外でもライヴやってましたし。行動力がズバ抜けてる」
平野 「彼は同世代の中でもデビューが早かったし、国際的な展開も早かったですよね。すでに人気者で」
――黒電話さんと同世代だと、GUILTY CONNECTORを除けばアクションを交えたパフォーマンスでノイズをやっている方って当時は少なかったように思うんです。
黒電話 「どうなんですかね」
平野 「暴れたいだけに見える感じの人が何回かやって、気が済んで消えるってパターンが多かったのかな?あの頃は若い人自体が少なかったよね」
那倉 「アクショニズムとは違う、ハーシュノイズをレッスルするスタイルだと、同年代ではないけど兎にも角にもやっぱりINCAPACITANTSだよね」
平野 「初期のdestructionistiesとかもそうだったかもしれないけど、彼らが出てくるのはもう少しだけ後だから」
那倉 「そうだね。当時SETE STAR SEPTもやっていたSAKAIさんと葛にゃん(現SELF DECONSTRUCTION)がdestructionistiesをやっていて、黒電話がいて、Kazuma Kubotaがいて、みたいなところに僕はどちらかというと後から接近していったわけだけど、電子雑音とかの周りの、例えば帝都音社系の人たちとはちょっと違うと思ったわけ。Kazuma Kubotaくんも、ああいう人だけど、アクションがあるじゃん。僕みたいにバンドの人からしてみると、そのほうが親和性が高くておもしろいな、って近づいていったわけよね。僕が界隈に入っていったタイミングはすごく象徴的で、田野(幸治 / MSBR)さんが亡くなった年だったんだよ。黒電話は出てなかったけど、20000V(東京・高円寺)で田野さんの追悼イベントがあって。僕らの世代は、ハーシュノイズとかカットアップに、プラスでアクション。身振り手振りでレッスルするみたいなのが流行りというか」
黒電話 「関東の僕ら世代は電子雑音の読者 / お客さんで、中央線沿線で細々と自発して育った雑草が多いんじゃないですかね」
西山 「黒電話はどういう影響でライヴでの身体表現的要素を取り入れるようになったんですか?ノイズの文脈として、ひとつの様式として、ということ?」
黒電話 「激しいバンドとか好きな人って、動きも求めるじゃないですか」
西山 「でも出自がDJなら、そこは逆に取り入れないという選択肢もあったりしませんでしたか?」
黒電話 「ブレイクコアだとラップトップを前に動く人はたくさんいますけど、やっぱり昔のATRの影響です。Nic Endoが後ろでブシャー!ってやって、前方に煽る連中がいて。跳ねたリズムも動きに通じるし。とにかくアーメンブレイクが好きで、アーメンで何かをやろうとしていたのにノイズになってしまった」
――アーメンでの実動に至らなかったのは?
黒電話 「MIDIで躓きました。出来がダサくて。ノイズだったらもっと巧くいくと思って」
西山 「ダイレクトな反応性を求めてノイズになったわけですね。でも逆にフィードバックのノイズには、コントロールし切れない部分がありますよね?」
黒電話 「そこは最初すごく難しかったですね」
西山 「アーメンが好きな自分と、ノイズが好きな自分、その折り合いはどうつけてるんですか?激しさという面ではどちらも激しい音楽だけれど、その音楽を実現するアプローチは異なりますよね。今回の作品もそうですけど、黒電話はより構築する方向、緻密な方向に向かっている印象があるんですが、それを実現するには、もしかしたらMIDIのほうがもっと緻密に実現できるかもしれない。でも不安定なフィードバックという回路の中でやるということをあえて選んでいるわけですよね?」
黒電話 「ハーシュノイズをやる上では、若干の揺らぎみたいなものがないと暴力性みたいなものが表現できないんです。もちろんプログラミングで作られた音楽も激しいんですけど、僕はある程度の揺らぎが必要」
西山 「それはライヴとして?録音物として?」
黒電話 「基本的に全部ライヴを前提にして考えてしまうんです。だから作品を作るのが逆に難しい。これまで殆どはあえて一発録りなんですけど、普通制作ってオーバーダブしたり、後から修正もするじゃないですか。その発想になかなかうまくシフトできていないんです。ライヴでいかに表現するのか / できるのかばかりに頭がいってしまって」
那倉 「そこはでも、やっぱりアイデンティティじゃない?ジャパノイズIDだと思うんですよね。ジャパノイズにPro Toolsのイメージは持たないでしょ、普通(笑)」
平野 「でも、黒電話が一発録り / ライヴに拘るのは、“気合い一発”とか“体ひとつあればいい”みたいな魂の話以前に、“演奏の技量で差別化したい”っていうプライドなんだよね」
黒電話 「そうですね。ライヴってその瞬間にしか生まれないものだし、良い演奏をしたい。音源が好きなアーティストのライヴを観て、“音源と全然違ってショボい!”って思ったことがあったんです。音源とライヴに大差があるっていうのはけっこうショックでした」
那倉 「さまぁ〜ず大竹(一樹)が何かJ-POPのコンサートに行って、“サビの感じが違ってムカつく”って言ってるのと一緒でしょ?“一番いいところで煽りとか入れんじゃねー!”とか“俺はCDのままの一番いいところを大きい音で聴きたいんだ!”みたいな。自宅学習して現場に行くっていう意味は、ノイズだろうがなんだろうが、一緒だもんね。いわゆる再現性を求めるということは、100%現場で体験する現象というより、ノイズのヒット曲があるような感覚を前提としてるわけだよね。もっと言うと“商品”というか」
西山 「ある意味日本のノイズはギターアンプ / ペースアンプの文化。それはそれでライヴの現場では良くて、ダイレクトに伝わる演奏としての側面を最大化するわけだけど、音源として細かい音を考えた時にはまた別のアプローチが必要になってくる。もちろん日本のノイズでも、PAINJERKやASTRO、GOVERNMENT ALPHAのような人たちがいるけれど」
黒電話 「たしかに五味(浩平 / PAINJERK)さんが指標になっているところはあります。吉田(恭淑 / GOVERNMENT ALPHA)さんもいわゆる御大世代とはかなり違いがありますよね。様々な影響で近年は、ライヴと録音物に乖離があってもいいかもと考えるようになってきたんです。『Accumulation』は自分が今できる範囲で、ライヴと差が出ない程度の“録音物”を作るというチャレンジの一環です」
――そういった意識は、Jay Randall(AGORAPHOBIC NOSEBLEED)のレーベル(Grindcore Karaoke / Annex 1 | Pro-Noise)からリリースされたフリーDL作品『GUIDANCE × GUIDANCE』の頃にも感じられました。
黒電話 「ライヴと録音物を切り離そうかと意識し始めた頃ですね」
西山 「もっと異業種で言うと、Red Bull(EMAF)のコンピがありましたよね」
黒電話 「完全に俺だけ浮いてるやつ」
西山 「あれを1枚通して聴くと、やっぱりものすごく他と差が出てるわけじゃないですか。ノイズの方法論だと」
黒電話 「あれはあえてそうしました」
――『Accumulation』こそ、EMAFのコンピレーションに入っていたら本当はちょうどよかったような内容ですよね。
黒電話 「そうですね」
那倉 「うん。『Accumulation』は黒電話の今のトータルっていう感じがあると思います」
――黒電話さんがライン直でやっているのは、やっぱりフロアミュージックと繋がる部分なんでしょうか。
黒電話 「全然意識してなかったですね。スピーカーがあればあるだけうるさいでしょ?っていう意図でベースアンプとギターアンプはサブで使うんですけど、細かい音を出すにはやっぱりラインじゃないとダメですね。落合soupでやり始めてから、低音を出すことに注視し始めました」
那倉 「黒電話は上(高音域)よりも下(低音域)だしね。五味さんの話をすると、五味さんてENEMA-SYRINGEみたいなグラインドコアとかとも一緒にやってるのに、上が鳴る、下が鳴らないの話でライヴハウスに出るか出ないか決めちゃう。そういうのって実際あるよね。大事なことだよ」
西山 「アウトプットにそれだけ責任を持っているってことですよね。例えば池田亮司さんみたいに、自分の思い描くアウトプットができなければ絶対ライヴをやらないっていう人もいて、それは自分の音の責任を引き受ける、ということでもある。逆にアウトプットはPAさんに任せて、ひたすら“演奏だけやります”という方法論ももちろんあるけど」
那倉 「それで言うと黒電話とENDONはけっこう似てるよ。“どっちも”でしょ?やんや言うし、お任せもする(笑)」
西山 「おいしいところを取りたい(笑)」
那倉 「そうそう。だからPAの人と会話する機会が増えるよね。自然と」
黒電話 「うん、PAさんとの交流は大事ですね。それで左右されるし」
那倉 「丸投げするわけでもないし、こっちのドグマがあるわけでもなくて、想像で“どうすかねえ?”みたいな。“なんとかなりませんかねえ……”とか言って。そういうタイプだよね(笑)」
西山 「実際、ハコの音はそのハコのPAの人が一番よくわかってるし、自分の音は自分が一番よくわかってるわけだから、それが正しいんじゃないですか?ノイズでありがちなのは、PA側との相談自体はあっても、もっと“闘い”の様相を呈してくるということ。“デカい音を出すためには勝ち取らなくてはいけない”みたいな意志と現実的なシステムのキャパとのせめぎあいになったりもしますからね。オーディオの信号としてノイズの鳴らし方をどう模索できるか、というのは重要なポイントだと思います。特に録音物は」
那倉 「だから、体の良いことを言っちゃえば、そこは“新しいノイズの鳴らし方を模索する姿”だと言っても過言じゃないと思うね。PAの人に相談するっていうのは。居直ってないんだよ」
――soupでやり始めてからということは、環境が低音を意識させたということですか。アーメンて元々低音ないですもんね。
黒電話 「そうですね」
西山 「ドラムンベースとかって低音そんなに低くないんですもんね。100Hzくらいとかで。普通のスピーカーでも出る。本当のサウンドシステム文化だと、60とか50とか出ないといけない。そこを意識しているだけでも昔の世代と違うと思います。“演奏”だけではない、従来の日本のノイズとは違う視点が生まれている感じがして、興味深いですね」
黒電話 「あとはMURDER CHANNELに関わっている中で、2000年代半ば辺りにダブステップが出てきたのも大きかったかもしれない。ベースミュージックの影響はありますね」
西山 「ベースを出すためにキックもスネアもハットも音が高くなって、上をスカスカにして下を出すっていうダブステップの作りは分かり易いですね。ダブステップ以降、単純にみんなベースがデカくなった(笑)。フツーのUKインディとかでもベースがデカくなりましたからね」
――今回の作品も、構造としてはそうなっていますよね。
黒電話 「もっと上手く出したいですけどね」
――ノイズ的に語弊があるかもしれないですけど、こういう風に“綺麗に”ベースが出ている作品て、なかなかないと思うんです。
黒電話 「ハーシュノイズに括られるものの中ではあまりないかもしれないですね」
――ベースミュージックからノイズに寄せた作風へと進化したRoly Porterみたいな例もありますけど、そういう感じで捉えることもできる気がして。
西山 「EMPTYSETとかもそうですよね」
――そうそう。ダブステップ以降のフロアミュージックの流れから、エクスペリメンタルに移行していく人ってけっこういると思うんですけど。
黒電話 「その流れでいうと、〈BACK TO CHILL〉には勝手に親近感をもっています。中心メンバーのGOTHさん(GOTH-TRAD)、100madoさんがノイズ演奏を経ていて、元々そうじゃなかったENAくんが近年エクスペリメンタルな方を向いているっていうのが」
西山 「Roly Porterとかは、爆音なんですけど、常にラウドネスがマックスというわけじゃないですよね。小さいところはすごく小さいし、ダイナミックレンジがものすごくあって……。ノイズだと、フィードバックの特性もあってそれは難しい。そういう意味では『Accumulation』はRoly Porterに近いところがあると思います。細かい構築がちゃんとあって、レンジが広い」
黒電話 「ハーシュはずっとブシャー!なのが長所であり短所」
西山 「『Accumulation』は細いところ、海苔じゃないところがちゃんとあって、メリハリが効いてる」
那倉 「押し引きなんだよね。これは僕の観る側としてのファンタジーかもしれないけど、ハーシュノイズって結局休符なんだよね。ゼロを作ってバーン!と鳴らすっていうのがハーシュノイズの一番のダイナミズムだから。そこがかっこいいかどうかっていう話。休符の取り方で好きな音楽がわかる奴もいる。黒電話は特にそう」
西山 「Roly PorterとかPaul JebanasamとかEMPTYSETとかって、すごくマッシヴな音なんですけど、とても西洋的なバックグラウンドを感じさせるマッシヴさですよね。ある種宗教的な要素もあって。黒電話の場合はもっと日本的というか、宗教的なバックグラウンドがないがゆえの振り切れ方みたいなのがあって、そこがおもしろい」
――ノイズ側からのアプローチで言えば、Russell Haswellの近作『As Sure As Night Follows Day』(2015)とかもある意味近い作品なのかもしれないですよね。隙間を作る構造って、インダストリアル / ボディが再興する下地を作った気もしているんです。PSYCHIC TVみたいにビートミュージックとノイズが並列で存在していた時代を再び掴み易くなったというか。
黒電話 「なるほど」
西山 「たしかに、BLACK RAINみたいにインダストリアルだけど低音を出してた人がリヴァイヴァルしてるよね」
――そのあたりの影響はなかったんですか?
黒電話 「PRODIGYとかDHR〜ブレイクコアの影響のほうが大きいです。PAN SONICは好きでしたけど」
――DHR全盛期、NYのIndustrial Strength Recordsも元気でしたよね。DELTA 9Vinyl Communicationsからもリリースしていたから、そういう流れでのノイズもあったのかな?と思ったのですが。
黒電話 「ガバは全然通ってないんです」
西山 「速いのが好きっていうわけでもないんですね」
黒電話 「やっぱり跳ねたリズムが好きなんです。パーカッシヴな感じというか。かといってキラキラドラムンベースみたいに艶やかな感じは好きじゃなくて」
西山 「Hospital Records的なドラムンベース?」
黒電話 「そうですね。汚くて激しいのを求めてVENETIAN SNARESとかに流れました。ブレイクコアとノイズがぐしゃぐしゃになってる、スネアズとSPEEDRANCHの共作(『Making Orange Things』)があるんですけど、そういうのが好きで。だからビートを作るよりも、ぐしゃぐしゃにする方向に気持ちが向かっていきました」
――でも、この作品を聴いていると、ビートを作っていてもヘンじゃないと感じるんですけど……。
黒電話 「周りに優秀なビートメイカーがたくさんいるし、そこじゃない部分で勝負すべきだと思って。ノイズの中でビートを聴かせちゃうと“ノイズ的に負け”だな、というのはけっこう意識してます」
西山 「ビートは出せる音のレンジの中である程度音量を確保しないといけないし、それを邪魔しないようにノイズを出すとノイズが小さくなってしまう、ということ?」
黒電話 「ノイズではなくなってしまう。あくまでノイズ主体で考えて、ビートを使わずにグルーヴを出すことを考えてます。絶対にビートを入れないと決めているわけじゃないですけど、そこの判断センスはなかなか難しいところです」
那倉 「ENDONはいわゆるツインギターのバンドの楽器構成をシンセとハーシュで模倣しながらズラすというスタイルを今はとっているので曲としてのまとめ方がちょっと違いますけど、僕らの周りにはカットアップノイズの連続で曲を作っていく人たちが多いわけです。それを見ていて、長年やっていると“音楽的”なグルーヴが出てくる人が多いなあ、とは思いますね。最近soupで観た中で言うと、Kenny(Sanderson)がやってるFACIALMESSはやっぱりリズムがあるし、逆にSCUMくんなんかはわざとカットアップの連なりが音楽的にならないようにやってる。Kubotaくんは明らかに“これは音楽ですよ”ってわかるように後ろでホワ〜ンて鳴ってる中でバコーン!バコーン!ってやるわけですよ。なんだかんだみんな音楽の範疇ですよね。うちを含めイカれた人間がそんなに多くないってことかもしれないですけど、長くやっていると“今は何をやりたいか”っていうコンセプトをはっきりと出してきますよね」」
西山 「特にPAINJERKはそうですよね」
那倉 「うん。五味さんは文脈をかなり推してくるところがあるから、けっこう啓蒙的な側面があるんですよ。後輩としては(笑)。僕とか黒電話なんかは、そこを見てきたっていうのが大きい気がします。ノイズ、ノイズって言ってるけど、やっぱり僕らのノイズってもう、ハーシュノイズのことなんですよ。僕らとか黒電話、Kubotaくんは、それを扱って何をするかっていう中でやっぱがんばってきたわけで。速くてうるせーバンドが曲を作るように、“ノイズを1曲仕上げる”みたいな気持ちでやってるんだよね。メランコリックでマイブラとかLUSHが好きなKubotaくんがいて、ブレイクコアが好きな黒電話がいて、ロックとかメタル / ハードコアが好きだから、バンドをやるところに戻ってきた僕らがいて。黒電話はMIDIで躓いたって言ってたけど、僕は最初、バンドで躓いたんですよ。バンドをやることに躓いてノイズに行った。ノイズって、本当悪いことに、包容力があるんですよね」
黒電話 「ほんと子供でもできるからね」
那倉 「ある種の挫折、ブレイクスルーできなかったみたいな経験、まあある種の挫折をして、うるさくて包容力があるシェルター、もう胎内みたいな中に入って居直ってみると、勿論その中には幼児化した格好悪いことやってる奴らがいるって、わかるじゃないですか。“ダラしねーな、こいつら”みたいなのがいっぱいいるわけですよ。そこで“そうなくなりたくない!”ってなって、整理整頓して好みの構築手法を確立する時に、シェルターに逃げ込むきっかけになった挫折ポイント、それは固着しているポイントなんですけど、そこに回帰してゆく感じなんですよね。挫折のポイントをノイズの構築のためのスパイスとして......挫折してるからやっぱりルサンチマンと疎外感とで妄想的に“ブッ殺す!”、みたいな」
黒電話 「うん。ブッ殺そうって思ってる」
西山 「(笑)。ブッ殺すっていう気持ちひとつ取っても、単純に“殺すためにとにかくうるさくしよう”っていう人と、“殺すためにも、もうちょっと細かいところに気を配ってがんばらなくちゃね”っていう人といると思うんですけど、その差が大きくアウトプットにも顕れるんじゃないかと思いますね。ノイズって雑音だから、一般のリスナーにとっては気にもされ辛いところなのかもしれないけど、そういう中にあって、ENDONにしろ黒電話にしろ、はっきり目指してるところを感じさせるというか」
――ノイズも、“音楽”をやるためのツールのひとつという認識ですよね。
那倉 「そうそう。ただの道具」
西山 「それは、ノイズを純粋に音質なり音のひとつとして捉えることができているからこそじゃないですか。ノイズって、ノイズという行為自体の意味性に引っ張られてきたところがやっぱりあると思うんですよ」
那倉 「“もうノイズはノイズじゃない”って言いたい。ノイズって“排除されるべき対象”って意味だから、そんな夢は見てられない」
黒電話 「緒先輩方と意識は違うんだろうけど、それがどう違うのかうまく言葉にできないですね」
西山 「そこは黒電話のおもしろいところですよね。意識してるかしてないかは知らないけど。文脈を踏まえて色々理解をしようとしているんだけど、そこから少しずつ外れてるっていう」
黒電話 「あまり意識的に制作するタイプじゃないからですかね」
――でもたぶん、そういうモヤモヤって、きっと秋田(昌美)さんの頃からあるんですよね。秋田さんとツェッペリンの関係みたいな。
那倉 「秋田さんはノイズが先か、自分が先か、卵が先か、鶏が先か、っていうレベルがありますけど。それを除けば、僕らも同じようなものかもしれないね。僕らもある意味ノイズの意味性に引っ張られてるところはあるし、ノイズって特許性が薄いんだよ。単純に、同じことやってたら有名なやつのほうが良いじゃん。別にディスってるわけじゃなくて、僕だったら絶対有名なほう買うもん(笑)」
西山 「それはノイズに限らずでしょ(笑)?」
那倉 「うん、有名なほう買う(笑)。だから、奇をてらってるわけじゃなくて、ちょっと有名になるためには、ちょっと違ったことをやらないと有名になれないっていう、すごく単純なことでもある」
西山 「世代交代がないですしね。J-POPの分野だったらすぐに消えることも多くて、世代交代があるけど、エクスペリメンタルの分野に行けば行くほど、やってる人は長いことやるから」
那倉 「でもそれは良いことですね。あまりにファストだったらさ、そのジャンルが好きな人は文脈が追えなくて、ただ“良い曲だな”みたいになっちゃうじゃん。固有名詞を出せば何のことを言ってるのかちゃんとわかるもんね。良い文化だよね(笑)」
黒電話 「今から始める人でも話が通じる」
西山 「だからこそ、上と同じことをやると、ずっとそこは超えられない」
黒電話 「我々より若い世代もきっと意識が違うはず」
平野 「違うんじゃない?30年選手の人たちのノイズがあって、俺ら世代にとってのノイズもあるし、俺らより下のここ2、3年で出てきた人たちにとってのノイズもあって」
西山 「レーベルをやっている立場としては、若い人たちのノイズをどう感じてるんですか?」
平野 「俺らの世代とは関係なく、素直に80〜90年代リヴァイヴァルしてる感じがある」
那倉 「あと、僕の印象では自分の周りの年下のノイズファンは先行世代に比べて下地のオルタナ、グランジ、アメハー好きが透けてみえる人が多い。“みんなSONIC YOUTHとか好きなんだな”って、まあそこもある種リヴァイヴァルなのかな」
西山 「僕はSONIC YOUTH世代だけど(笑)」
那倉 「いや(笑)、SONIC YOUTHみたいなのはSONIC YOUTHがやってれば良いんですよ。僕はSONIC YOUTHが嫌いなんじゃなくて、もろSONIC YOUTHみたいになっちゃうってことを恐れずに、SONIC YOUTHに近づいていく人たちの気が知れないっていうだけなんですよ。どうよ?っていう」
西山 「そこで客観視できるか、というのが大事ですね」
――そうなんですよね。スマートフォンですぐ調べられるのが当然の世代だから、検索上位の人、有名な人に左右されるのかな?って思ったりもするんです。メディアの功罪というか。
一同 「ああ……」
西山 「SONIC YOUTHもそういう意味ではそうですね。最初は型から入るっていう人も、もちろん多いだろうし」
那倉 「あと、閉塞感から逃げ出した人たちという点では、僕らともちろん似ているんですけど、ノイズの母性に寄り掛かり過ぎてる気がするんですよね。でもはっちゃけたいから、自分たちの素人性、稚拙さをそのままお客さんを巻き込んで観てもらうことで“ケミストリーが起きる”みたいなファンタジーを信じてるっていうか」
――そういうの、なんか“サブカル”っぽいんですよね……。
那倉 「「そう。たとえケミストリー起きたとしても、そんなファンタジーが大して役に立たないってことは、わかるじゃないですか。というかもう、それは音とかノイズじゃなくて大量の言葉を必要とするわけじゃないですか。逆に僕らはおっさんなんで、ロック幻想があって。舞台に立つ者と、立たない者の差は、やっぱり舞台の高さだけあるべきだっていう。“曲を作る”って言ってるくらいだから。僕らの良かったところは、サブカル的な連帯をしなかったっていうことだよね。サブカル的な連帯はやっぱり、傍から見たらクソだよ」
西山 「でも、ノイズこそ昔はサブカルの象徴だったわけですよね?」
黒電話 「俺まさに中央線サブカル育ち」
那倉 「そうなんだけど!そうなんだけどさ、大阪的なジャパノイズ、電子雑音的なハーシュから、US、UKの“なんか色々いっぱいいるよ”っていうのを経て、形容詞としてメタリックに、硬くなっていったわけじゃん。それをサブカル的な乱痴気騒ぎで台無しにするんじゃない!って僕は思うんだよ。正に老害、抑圧的な意見ですが(笑)」
黒電話 「良い事言いますね」
――そう。それですよ。
西山 「例えば、自分はバックグラウンドがテクノなんですけど、ある時期のノイズとテクノが同じ場所を目指していたことで、ノイズがおもしろいと思えたんです。共通項がわかるとお互いの広がりも見えてくるというか」
黒電話 「五味さんが今テクノに寄ってるのはすごくおもしろいですよね」
平野 「そうそう。ノイズを実験音楽っていう有難げな何かじゃなくて、テクノを聴くような耳で聴いてるんだよね」
那倉 「音派なんですよね」
黒電話 「俺の場合は音派になってきた、って言うのが正しいけど。電話使ってる時点でサブカル背負ってるんで」
那倉 「すいません、忘れてました(笑)。僕も頭から血とか流してたんだった(笑)」
平野 「でも最終的に音派にならないと脱皮できないところはあるよね」
那倉 「それもあるし、やっぱりね、簡単なことじゃないんだよね。日々コンセプトを生成して見せるように軽やかに生きるのは。人はそんな簡単にChim↑Pomみたいに生きられないってことに気づくのよ!僕にはムリだって(笑)」
一同 「(笑)」
那倉 「あんなに健康度が高くて、なおかつ持続してるのは並大抵のことではないと思う」
西山 「例えば、Russell Haswellとかもそうだけど、アートカルチャーの中に入ってるノイズっていうのもあるじゃないですか。Russelと美川(俊治)さんて仲は良いけど、両者のノイズは正反対な印象がある。その違いは黒電話と往年のジャパノイズの違いと似てるところがあるように感じます」
黒電話 「サウンドアート / アカデミックなノイズの人たちとの違いって、ジャパノイズ好きの人たちは意識してるんですかね」
西山 「昔はノイズという行為自体がアートだったんじゃないかな。それで成立してしまう。サウンドアート系のノイズは、“ノイズとしてのアート”じゃなくて“音としてのアート”で始まってるから、そこがやっぱり違う」
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2017.1.14 落合soup “Accumulation 1” / photo 藤島 亮
――そうですね、僕らはmegoからMERZBOWが出ていた世代ですもんね。
西山 「Warpも『Satanstornade』(秋田昌美 + Russell Haswell)を出してましたよね」
黒電話 「ラップトップ期のMERZBOWめちゃくちゃかっこいいですよね。これは勝てねーなと思いました。あれくらい研ぎ澄まされた表現がしたいですね」
――そうそう!あの頃って、秋田さんが“音としてのノイズ”にフォーカスした時代だったと考えているんですけど、当時オールドスクールなジャパノイズが好きな人からしたら、たぶん“なんじゃこりゃ?”っていう感覚だったじゃないですか。僕らはそれを良いと思えるという。ビートが効いた『Merzbeat』も出していたり。
那倉 「Ant-Zenからも出してましたもんね」
――うん。『Accumulation』にも、それと近い感覚を覚えて。同じ頃に秋田さん、ダブのアルバムも出してますよね。
西山 「『Merzdub』!黒電話がやっている“moshimoshi”名義でのダブDJは、速いDHRとかブレイクコアの反動としてのダブなんですか?」
黒電話 「反動というか、ノイズじゃない派生した趣向ですかね。Alec Empireが昔ジャングルを作っていて、その中にはアーメンがあってノイズがあってラガがある。ラガってレゲエから来てるじゃないですか。あと、その時期ってドラヘビとかAUDIO ACTIVEが流行ってて……そういうカルチャーに触れたからっていうのもありますね」
西山 「THE CLASHを聴いてるうちにレゲエが好きになるのと似た感じということ?」
黒電話 「それです」
西山 「レゲエのサウンドシステム・カルチャーに触れたのは?」
黒電話 「昔の新宿リキッド(LIQUIDROOM / 現東京・恵比寿)で初めてJah Shakaを観た時ですね。ハーシュやメタルでなくとも、音がデカくて足から頭までビリビリくるうるさい音楽があるんだと思って。でも自分のノイズとのリンクには、そんなに意識的ではないです」
西山 「じゃあ黒電話666とmoshimoshiは別物なんですね」
黒電話 「別物です。DJは遊びなんで、レゲエじゃないことをやるかもしれないし。今はレゲエが好きだから、という感じですね」
――そうやって長年の蓄積と紆余曲折を経てこの作品に辿り着いたわけですけど、そんな集大成的な作品だけに、正直、もっとたくさん曲が入るのかと思ってました(笑)。
西山 「曲が少ないことについては、そもそも構想段階でCDフォーマットを考えてなかったからなんですよね?」
黒電話 「そうです」
平野 「色々話し合って、最初は多少カルトなアプローチにしてみようかな、と思ってテープを選んだんですよ。テープ用に一度マスタリングもしてもらったんですけど……よくよく話し合ってみたら、お互い本当はCDのほうが良いって思ってたんだよね」
黒電話 「意思の疎通が取れてなかった」
一同 「(笑)」
平野 「この作品を出したかったのは、AmazonなりCDショップなりでライトユーザーでも欲しいと思った時に買える状態になっている黒電話の音源が1枚もないっていうのが、歯痒かったからなんですよ。ENDONと一緒にEUツアーに行ったでしょ?あの時、せっかく向こうでライヴやるのに、そこで観た人が買える盤がないのは良くないな、って思ったことも大きかった。本当はそのツアーに合わせて音源を出す計画もあったんですけど……」
黒電話 「全然動かなかった」
平野 「今回出すにあたって、色んな人に聴いてもらいたいならCDのほうが全然訴求力が高いということで」
那倉 「でもCDっていうフォーマットは、ハーシュノイズのアーティストとしては珍しいっちゃ珍しいスタンスだよね。もともとは新規開拓でみんなに聴いてもらいたくて作る人たちって少ないじゃない?ノイズは」
平野 「拡大目的でCD、ってパターンは少ないかもね」
那倉 「どちらかといえば何がイケてるかをスケールにする人のほうが多いから、今テープが流行ってるっていうのもあるしさ。そこで黒電話並びに[...]dotsmark、僕もそうだけど、CDで出す。それは僕らの欲望の形だよね。活動のね。CDなんだよ。日本でみんなにノイズを聴いてもらおうって思ったら、やっぱりCDで出すんだよね」
平野 「所謂“ノイズだったらカセット、ヴァイナル、特殊ジャケで限定版だろ”っていうのとは違う」
西山 「ナンバリング入りのCD-Rとか」
平野 「そうそう(笑)。そういうのじゃなくて、他のジャンルと同じように、ジュエルケースに入ったCDがキャラメル包装されてタワレコに置いてある、っていうのが今回重要で。所謂ノイズの人以外にも聴いてもらいたいし、聴いて良いと思ってもらえるような音楽のはずだっていう確信があったから」
那倉 「ある側面から言うと、そういう商魂じみたもので実はコンテンツを平板化させて"ノイズ"をつまらなくしようとしてるのは僕たちかもしれないよね、超どーでもいいけど。みんなMASFの“SCM”振ればいいんだよ(笑)」
――(笑)。Kyokaさん、ENAさんをリミキサー陣に選んだのも、ある種ポピュラリティに関連した意味で?
黒電話 「そこは音楽とセンスが好きだからというシンプルな理由です。ここ数年のかっこいいものを切り取った感じにしたくて。冴えたものを作っている人たちにお願いした感じです」
西山 「ジャンルは違えど、黒電話が思い描く音たるものを形にしている人たちという感じ?」
黒電話 「そうですね。頼れる人たち」
――結果的に、レーベルとしても過去最もキャッチーな作品だと思います。アートワークもかわいいし。
平野 「そうですね。ノイズだけど、すごくキャッチー」
――所謂大多数に聴かれる音楽って、何らかのエモーションに左右されるものが多いと思うんですけど、その点はどうお考えですか?
西山 「ポピュラリティのエモーションって、要は記憶に結びついてるということですよね。“あの時好きだったあの子と聴いたあの曲”だとか。そのレベルの強度という話だとすると、ノイズはもちろん、ポピュラーミュージックから外れた音楽にとって、エモーションはほとんど何の実体も伴わないと思います」
――さきほど“殺す”というお話がありましたけど、そういう部分て、一般的に“感情表現”という論評で語られがちな部分ですよね?
黒電話 「そこはある意味エモーショナルな部分ではありますけどね」
那倉 「でも“殺す”っていうのは単純に“勝つ”っていうことだからね。そこに哀しみとかそういうのを乗せようと思ってるわけじゃないし。僕は究極的にはやっぱりノイズは感情や意味というより運動の美学であって欲しいと思ってる節がある」
西山 「エモーションという言葉と絡めると、つまりENDONも黒電話666も、一体感に甘えてはいないっていうことなんじゃないですかね。音楽って、ある種みんなで一体になれる装置として機能する側面があって、そこには共有なりエモーションという言葉が似合う効果がたしかにある。共感を得やすいものって記号論で、それはポピュラーミュージックの枠組みの中だけでなく、“ノイズ”なり“ハードコア”なり“メタル”なりの狭い枠組みの中でもそう。でも黒電話たちは全く記号になっていない。そこが良いんですよ」
那倉 「だから僕らは売れないんだよね。マスが消費するのは記号だからね」
西山 「でも、そんなの最初からわかってやってるわけで(笑)」
那倉 「大衆の快楽の方向に行きたいっていうのはあるんだけど、やっぱりみんなが消費しているのは記号なんだ……って思うんですよね(笑)」
西山 「黒電話たちがやっていることは、一般のリスナーにとってなんらかのエモーショナルな実体験の強度を伴わせるものではないのかもしれないけど、かといって何も伝わるものがないというわけではない。むしろ一般のリスナーにとって伝わり難いと思われがちなノイズという音の断片のなかに、何かを感じさせてくれるのでは……そう思わせてくれるのが黒電話666なんじゃないでしょうか」
黒電話 「それが一番のエモーションかもしれないですね……」

進行・文 / 久保田千史(2016年1月)
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