クラシックの教育を受けた4人のセクシーな女性が、エレクトリック・ヴァイオリンなどを手に、名曲をロック&ポップスのアレンジで弾きまくる……。2000年に英国から登場し、クラシカル・クロスオーヴァーの新世代として世界の音楽シーンに一大センセーションを巻き起こしたストリング・カルテット、
ボンド。日本でも2001年のデビュー・アルバム
『ボーン』が記録的なセールスをあげ、来日公演でも大成功を収めたのだった。
あれから10年、新メンバーを加えてさらにパワーアップした彼女たちが、7年ぶりとなるニュー・アルバム
『プレイ・フォー・スマイル』を携えて、日本に愛と笑顔のエールを届けにやってきた!
――日本デビュー10周年を迎えて“ボンド旋風”ふたたび、ですね。
エイオス・チャーター(vn)「10年の重みは感じているけど、3年前にヘイリーの脱退に伴って新しくメンバーに加わってくれたエルスペスも、今ではすっかり馴染んでるし、今回、妊娠して飛行機に乗れなかったゲイ=イーのために急遽参加してくれたリジーもそう。つねに“今”の私たちの演奏を楽しんでもらえたら、それでいいの」
――ボンドの一員になった時は興奮しませんでしたか?
エルスペス・ハンソン(vn、va)「興奮しました! 学生時代から大ファンだったのよ。ボンドはクラシックの弦楽器奏者にとって画期的なコンセプトでした。若い世代の私たちに新しい道があることを示してくれたの」
――音楽シーンのいろんな演奏家に影響を与えたユニットだと思います。
タニア・デイヴィス(vn)「デビュー当時は、まだクロスオーヴァー自体が珍しかったから驚かれたりもしたわ。でも私たちの強みはクラシックを学んでいるからあらゆるジャンルに対応できて、大好きな音楽はなんでも演奏できたこと。それにインストゥルメンタルのメリットは言語の壁を超えて、世界中の人々に受け入れてもらえることよ」
――新しいアルバムはじつに7年ぶりですね。
エイオス「ライヴ中心に活動していた時期に、プジョーから新車のキャンペーン用にとヴィヴァルディの『四季』のアレンジを依頼されて、久々にスタジオに入ったら、もう楽しくて……またアルバムが作りたいって思うようになったの。それからたくさんのアイディアを絞り込んで、2人の最高のプロデューサーと一緒に完成させたアルバムなの」
――とくにワールド・ミュージックのエスニックなサウンドをとり入れたトラックが印象的です。
タニア「〈ビートルート〉はメンバーのゲイ=イーの書き下ろしで、ロシア風のメロディに東欧ユダヤ系のサウンドがマッチした楽しい楽曲。弦楽カルテットらしさをぞんぶんに発揮できるところも好き。それからアラビックな〈ロード・トゥ・サマルカンド〉もお気に入り。とにかく私たちのサウンドの可能性は無限大だわ」
――リジーさんのお気に入りはどれですか?
リジー・メイ(vc)「日本盤のボーナス・トラックの〈レディー・ガガ・メドレー〉よ。iPodに入れてふだんからジムで聴いていて……本当に自然と身体が動き出しちゃうような曲よね。一昨日、CDショップのイベントがあってステージで演奏したんだけど、もう最高だった。エレクトリック・チェロを弾きながら、思わずヘッドバンギングしちゃったもの」
――日本のファンだけへの素敵なプレセントですね。また今回は、アルバム・ジャケットで着用したステージ衣装と、サイン入りサイレント・ヴァイオリンをオークション・サイト“クラウンジュエル”に出品されるとか。
エルスペス「11月9日からオークション開始で、収益は東日本大震災で被災された子供たちのために活用されます(※セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 東日本大震災 支援)。早く皆さんに笑顔が戻ることを祈ってるわ」
――ぜひまた日本でコンサート・ツアーを実現させてください。今後のご活躍におおいに期待しています!
タニア「最近、“うちの子はあなたたちの音楽を聴いてヴァイオリンを始めたのよ”って言われることも多くてすごく嬉しいの、私たちがクラシック音楽への入り口だなんて! これからも誰もが楽しめる音楽を作っていきたい」
エイオス「次は
ナイジェル・ケネディと一緒にやりたいの。彼と組んでもっとエレクトリックな要素を入れたロックやフォークなど、実験的な音楽を作りたい。バンドとしてインプロヴィゼーションにも挑戦したいわ」
エルスペス「ボンドの音楽の旅をリスナーとしてずっと見ていたから、それに私も加わって、これからも一緒に続けていけるなんて、すごく幸せ!」
取材・文/東端哲也(2011年9月)