【ブライアン・フェリー interview】ロキシー・ミュージック全盛期のメンバーが再集結――ブライアン・フェリーの新作ソロ・アルバム

ブライアン・フェリー   2010/10/19掲載
はてなブックマークに追加
 フジロックフェスティバル '10でブライアン・フェリーロキシー・ミュージックとしてステージに立ったことはいまだ記憶に新しいだろう。そんなブライアン・フェリーが13枚目となるオリジナル・アルバム『オリンピア』を完成させた。ブライアン・イーノを含めた全盛時代のロキシーのメンバーが『フォー・ユア・プレジャー』(73年)以来約37年ぶりにスタジオに集結したことがすでに話題となっているが、一方で、レッド・ホット・チリ・ペッパーズフリーレディオヘッドジョニー・グリーンウッドらも参加、さらにはシザー・シスターズグルーヴ・アルマダら若い世代との共作もある。そしてその内容は、フェリーの黒人音楽指向とロマンティシズムとが麗しく共存した躍動感あふれる力作だ。フジロックフェスティバル '10での来日時に実現した貴重なインタビューをお届けしよう。
――ロキシー時代の仲間たちとスタジオで音を出した際のケミストリーは変わっていませんでしたか?


ブライアン・フェリー(以下、同)「ああ全然ね。2009年、ちょうど今回のソロ・アルバムの作業を終わらせたまさにその日のうちに、今度はロキシーのライヴをすることになってさ。で、さっそくリハをしたんだけど、これが素晴らしかったんだ。僕はそもそも初期のロキシーの曲が大好きでね。今回の僕のアルバムにはそういうちょっと懐かしい空気もシンクロしてるんじゃないかな。まあ、ブライアン・イーノはいつも自分のことでとても忙しいからツアーには参加しないけどね(笑)。彼とはスタジオだけ。それが僕たちの自然な習慣なんだ(笑)」
――今回のアルバムはとくに若いミュージシャンとも関わっていますし、楽曲も躍動的なものが多くなっています。これは意識的に世代を超えたリベラルな目線を持ち込もうとした結果なのでしょうか?
 「どうだろう。自分自身のスタイルって偶然に見つかるもので、デザインされているものではないんだ。そして、それは音楽で一生懸命頑張ることの醍醐味でもある。今回、シザー・シスターズとかグルーヴ・アルマダとコラボレートしたのは、いつも自分のヴィジョンを広げているからなんだと思うよ。たとえばピカソをみてごらん。彼は20世紀の巨匠として知られているけれど、晩年の作品には多くの遊び心と楽しみがある。そこが重要なんだよ。ま、僕も自分をミュージシャンというよりはむしろアーティストだと思っていてね。ハハハ。僕は音楽の枠にはまらない、いい意味でアウトサイダーだと思っているよ。毎日音楽の中で働いているけれどね(笑)」
――カヴァーにチャレンジするのもそういう理由からなのでしょうか? 今作ですとティム・バックリィの「ソング・トゥ・ザ・サイレン」とトラフィックの「ノー・フェイス、ノー・ネーム、ノー・ナンバー」。とりわけ「ソング・トゥ・ザ・サイレン」はディス・モータル・コイルが83年にとりあげたヴァージョンにも負けない美しい仕上がりです。
 「実はこの曲は、発表された時には知らなかったんだ。最初に聴いたのはまさにそのディス・モータル・コイルによるカヴァーだった。その時に僕もいつかこの曲をやりたいなと思ったよ。ずいぶん時間がかかっちゃったけどね(笑)。でも、ジョニー・グリーンウッドとデヴィッド・ギルモアの素晴らしいギター・プレイが堪能できる美しい仕上がりになっているよ。そもそも僕は声に特徴のあるミュージシャンの曲を歌いたくなるほうでね」
――そういえば、スティーヴ・ウィンウッドもあなたも、アングルは違えどいずれも英国産ブルーアイド・ソウル・シンガーですよね。
 「そうだね。初めてスティーヴ・ウィンウッドを観た時のことを今でも覚えてるよ。スペンサー・デイヴィス・グループのライヴだった。僕はまだ大学でアートを勉強していてね。でも、スティーヴはもうステージに立っていた。それで、僕は彼のキャリアの後について行ったんだ。最初はスティーヴを真似していたなあ。もっとも、大人になって自分自身の曲を書き始める頃には独自の世界ができてきてたけどね」
――ええ、あなたの音楽は昔から一環した美学で貫かれていて、たとえば、それは“ダンス”という表現方法とポップ・ミュージックとを結びつける作業にも表われています。かつて「ドント・ストップ・ザ・ダンス」と歌ったあなたは、今作では「ユー・キャン・ダンス」と歌っている、というように。
 「まさにそうだよ。ハハハ。とくに音楽とダンスの親和性が高いことは前々から気づいていて、そこが自分の居場所であることはわかっていたんだ。実際、僕はダンスするために生まれてきたようなところがあってね(笑)。今でもいろんな舞台を観に行くんだけど、素晴らしい音楽、衣装、セット、照明……それらが一つになるのを観ると本当に感動して、自分もそういうのを作りたくなるよ。そこで、〈ユー・キャン・ダンス〉のビデオ・クリップで実践したってわけ。もう観てくれた? 30人ものキレイな女の子が、僕の歌に合わせて踊ったり、歌ったりするビデオ。最高だっただろう?(笑)」
取材・文/岡村詩野(2010年7月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] のん (映画『私にふさわしいホテル』)[インタビュー] 角野隼斗 イメージ・キャラクターを務める「ベスト・クラシック100極」のコンピレーション・アルバムを選曲・監修
[インタビュー] 色々な十字架 話題の“90年代ヴィジュアル系リヴァイヴァル”バンド 待望のセカンド・アルバムをリリース[インタビュー] アシックスジャパンによるショートドラマ 主題歌は注目のSSW、友成空
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015