Especia『GUSTO』発売記念 鼎談: Schtein & Longer + illicit tsuboi + 南波一海 “¿A qué sabe?”

Especia   2014/05/28掲載
はてなブックマークに追加
レイドバック・アーバン・ファンクをクレバーにビルドアップしたサウンドと、特異な切り口を見せる一風変わった活動スタンスで明らかに異彩を放ちながらも、メンバー6人の輝く個性と成長著しいパフォーマンスとの相乗効果で着実に支持層を拡大してきた大阪・堀江のガールズ・グループ“Especia”。彼女たちがいよいよ、2年に亘る活動の集大成たる初のフル・アルバム『GUSTO』をリリース。これを記念し、全楽曲のサウンド・プロデュースを務めるSchtein & Longer 横山佑輝氏、Especiaの魅力を一ファンとして多角的に捉えるillicit tsuboi氏、そしておなじみ南波一海氏による鼎談が実現。Especia愛溢れるお3方の発言から、『GUSTO』の味わいにをより豊かにする新鮮なフレイヴァが発見できること請け合いです。
『GUSTO』 Live DVD Edition / CD Edition
――レコーダー回しますね。
illicit tsuboi 「カセットじゃなくても“回します”って言うんですね」
――あ、たしかに。
Schtein & Longer 「今だと磁気テープ自体を知らない子もいますよね。巻き戻しの“巻く”って何を巻くの、みたいな」
――Especiaも最初はCDを出す前にカセットをリリースしましたよね。
S & L 「冗談で出しましたね。そもそも盤がなかったので、売るものがなくて。その時はアナログ・リバイバルがあったりしたので、ここはテープかなと」
tsuboi 「そっち行っちゃった(笑)。それはどういうふうに売ったんですか?」
S & L 「お店とかには置かず、ライヴの物販で」
tsuboi 「売れたんじゃないですか?」
S & L 「すぐなくなりました。清水さん(マネージャー)が1本1本等倍でダビングして」
――等倍で。
tsuboi 「そこからおかしいですよね」
S & L 「“もうイヤだ”って言ってました。1曲入れて、B面にトークみたいな」
tsuboi 「最高じゃないですか。またやらないんですか?」
――以前は購入特典でつけたりしてましたよね。
S & L 「じつは今回、アルバムについてくるライヴDVDをVHSにしたんですよ」
tsuboi 「うおお。見れない人多いんじゃないかな」
S & L 「VHSの業者に渡す時に、SDの画質に落としてからDVDに焼いたものを渡さないといけなかったらしいんですよ。その時点でHDじゃなくなってる。そこからさらにVHSにしたのを取り込んだやつを見せてもらったんです」
tsuboi 「VHSをさらにデータにしたんですね」
S & L 「僕、VHS見れないんで。最後のスタッフロールはトラッキングノイズで読めないんです(笑)。ダウンコンバートにダウンコンバートを重ねてるので。それが特定の会場(*)で両バージョン同時購入特典でついてくるみたいです」
*5月25日(日)横浜クルージング・ワンマン〈Te Gusta La Noche?〉〈Te Gusta La Tarde?〉および6月1日(日)2周年記念フルバンド・ワンマン〈Viva Disocteca Especia 2014〉
tsuboi 「完璧っすね」
※映像や音声のノイズは再生機に起因するものです。実品には収録されておりませんので­予めご了承下さい。
※CD + DVD盤に付属するDVD映像はHD画質となります。
S & L 「色味も青っぽくしていて」
tsuboi 「コマが粗いですねぇ。僕なんかは馴染みのある感じ。落ち着きます。うわー目悪くなりそう」
――以前にTwitterで“テープ・コンプが”みたいに言ってたのはこれのこと?
S & L 「そうです。コンプレッションがいい感じにかかりますね」
tsuboi 「VHSの音は使う人結構いますね。カセットテープより如実に出るんですよ。あと、ベータだと音がよすぎるから、普通のVHSがいいんですよ」
S & L 「(映像を見ながら)ここひどいですよ。VJの映像素材をメンバーより手前に映してる(笑)」
――ひどい!
tsuboi 「これ、失敗ですよね?」
S & L 「VHS版だけでやってるんです」
※映像や音声のノイズは再生機に起因するものです。実品には収録されておりませんので­予めご了承下さい。
※CD + DVD盤に付属するDVD映像はHD画質となります。
――わざわざヴァージョン違いの映像を作ったんだ(笑)。いいですね。
tsuboi 「いいのかな(笑)。怒られるんじゃないの」
S & L 「こことか文字に邪魔されてメンバーの顔ほとんど映ってない」
tsuboi 「すごい。構図とか特に考えてない感じがヤバい」
(スタッフロールを見る)
一同 「あははは!」
tsuboi 「これ冗談でしょ!? いや、素晴らしい」
S & L 「リコール対象でしょうっていう」
tsuboi 「参りました」
S & L 「アルバムについてくるDVDは普通にフルHDなんですけど、これ見ちゃうと……」
tsuboi 「物足りないかもしれない。ヤバいじゃないですか。完璧にやられちゃいましたよ」
――そもそもツボイさんがEspeciaを聴くようになったきっかけは何だったんですか?
tsuboi 「『AMARGA』が出た時ですね。たまたまなんですよ。知り合いが聴いていて、“変だから聴いてみ”ってことで聴いたら、ガツンとやられちゃって。出し方がすごいと思ったんです。2種類あって(*)、収録曲が2曲違うんですよね。その4曲がとにかくすごくよいと思って。どうしてその出し方にしたのか訊いてみたいなと思ってたんです。売り上げのためのよこしまな考えなのか、そうじゃない考えがあったのか」
S & L 「アートワークが2案あってどっちもよかったから出したいっていうのがありました。フル・アルバムにしては曲数も少ないし、2枚のEPにするのがいいだろうと」
tsuboi 「なるほど。でもこれが1枚で出ていたら僕はここまでハマらなかったと思う。それくらいこの2枚っていうのはデカかった。2曲違うだけで重なっている曲の聴こえ方まで変わってくるんですよ」
――それはありましたよね。
tsuboi 「よくあるジャケ違いっていうだけだとコンセプトとしては意味がないじゃないですか。2曲が差し替わって、ちゃんと情景も変わるっていうのが……完璧に洗脳されてる証拠ですね」
――あははは!
S & L 「ありがたいです」
tsuboi 「これを知らない人に説明してもわかってもらえないんですけど。一時、うるさ方が集まる飲み屋界隈で大騒ぎになりましたよ。(『Tarde』と『Noche』の)どっちがいいみたいな話になって」
『AMARGA-Tarde-』 / 『AMARGA-Noche-』
――ただのカップリング違いではなくて、作品として意味があるように受け取ったわけですよね。Especiaサイドはそれは狙ってたんですか?
S & L 「それが、何も考えてなかったんです。2種類のアートワークで出そうっていうのだけは決まってたんですけど」
tsuboi 「ヤマタツのカヴァー(*)もそこにはめこんでいった感じ?」
*『Noche』で山下達郎の〈Midas Touch〉カヴァー)
S & L 「そうですね。ビジュアル・イメージだけが決まったいたので。4曲を割り振るとしたらどうするか、みたいな感じで」
tsuboi 「これはずっとやっていって欲しいですね。アルバム出した後に、また2種類出して、アナログも出して、という感じで」
S & L 「そういうふうに仰って頂けると嬉しいんですけど、ファンの方からは“うわーいっぱい買わせるやつだ”みたいに言われたりもしましたけどね」
tsuboi 「ちなみになんですけど、僕はメンバーのことを全然詳しくないんですが、そういうアイドル的なところもあるんですか?」
S & L 「僕もその辺の立ち振る舞いとかは全部マネージメントにお任せしてるんですよ」
――そういう意味ではEspeciaは普通にアイドルですよ。握手会もするし撮影もするし。
tsuboi 「やっぱりそうなんですよね。音とメンバーの方たちとの距離と言いますか……バラバラですよね」
S & L 「乖離はありますよね。最初からそうしようっていうのはありました」
tsuboi 「Perfumeの時もそうでしたけど、その辺、メンバーの気持ちと作ってる側のそれはどうなってるんですかね」
S & L 「まったく関係なくて。さっきご覧頂いた映像もゲスト・プレイヤーが入っているセクションが一番気に入っていて。フロント6人とバック3人と映像が全部何にも関係ないんですよ。鳴っているビートに合わせてるところだけしか共通項がないっていうのが最高だなと。今度も大阪でフルバンドでライヴがあるんですけど(*)、ドラマーの方が“何がいいかって、インタープレイで熱くなっててもそれに絡むことなく自分たちのフリを淡々とやってるのが最高”みたいなことを仰っていたそうですよ」
*6月1日(日)に大阪 梅田 CLUB QUATTROで開催される〈Viva Discoteca Especia 2014〉
tsuboi 「わははは! 変わった方ですね(笑)」
S & L 「“こんなん初めてだ”みたいな。ギターとかベースの方も合わせて盛り上がってるのに、みんなは踊ることに一生懸命で」
――PVもそうですけど、本人たちはよくわかってないけど、まわりが“ヤバい”みたいなことを言ってるのを知って“これは面白いものなんだ”って気づくパターンが多いですよね。
tsuboi 「ということですよね。この歩幅は寄り添っていくんですかね」
――それこそPerfumeはそうなっていきましたよね。
S & L 「寄り添ってきたらこっちはどんどん離れていこうと思います」
tsuboi 「あははは!」
――ファンの方が杏里のCDをプレゼントしたりしてましたね。
S & L 「そうそう、角松ワークスをあげたりしてるんですよ。本人たちもTwitterで“カッティングばかり聴いてまうな”みたいなこと言ってて、これはかなりきてるなと」
tsuboi 「そういう交流にオープンなところもいいところですよね。彼女たちのカラーリングもあって、妙にポップになるのがいい。そうやってまわりの人たちが遊んだりするのが、変な方向に行ってる感もあって」
Especia
――屈託のないキャラクターなんですよね。
tsuboi 「何より歌ってるのが楽しそうですよね」
――曲の世界観を、わからないなりに必死になって演じようとするのがいいんですよね。やたらムーディーに歌ったりするのもそうで。
S & L 「そのズレがいいですよね」
tsuboi 「うはははは。聴き手からしてみたら、偶然なのか作為的なのかあんまりわからない。さっきのVHSもそうですけど、作為的に見えそうな感じがあるのに、そんなこともなくて。俺はそういうものがダメなタイプなんですけど、その先にちゃんと純粋なものが見える感じがしていて。正直、アルバムはそれが崩れていくかなと思ったんです。実際にまとまってはいたんですけど、まだこういう方向があるんだなと思って。今年は聴きまくると思います」
S & L 「おお……ありがとうございます」
tsuboi 「また時期がいいですよね。夏前に爽快感のある邦楽が出ると、その夏を乗り切れるって感じなんですけど、今年はこれ」
S & L 「恐縮です」
tsuboi 「こういう、シーンの真ん中というよりも、もっと端の、エポックメイキング的なところのものが詰まっている気がして。普通はそこから洗練されていくものなんでしょうけど、そのエリアにずっといる感じがします。これが持続できればいいですよね。リリースが結構ハイペースでしたけど、ストックがあったんですか?」
S & L 「ほぼアルバム用の書き下ろしですね。僕一人じゃ追いつかないので他の作家さんから頂いた曲もあります。でも進行はなかなかキツかったです」
――レコーディングってどうやってるんですか。
S & L 「みんなが東京に来るより僕が一人で大阪に行く方が安いのであっちで録ってます」
――歌割りは? 全員が一曲分歌っていいテイクを採用する方法ですか。
S & L 「いや、それだとセレクションとエディットが追いつかないので。プリプロするんですよ。仮歌録って、音域とか歌いやすそうだなっていうのを聴いて、レコーディング前に割り振っちゃう」
――で、その部分だけ集中して練習してもらうと。
S & L 「はい。“あなたはここをバッチリにしといて”と」
tsuboi 「この分量はすごいですよね。往年のビーチボーイズみたいに頭がぐちゃぐちゃになりそう。しかもその後に振り付けもあるし」
S & L 「そうですね。僕はTD終わってマスタリングが終わったらクランクアップですけど、彼女たちはそこからがいよいよですもんね」
tsuboi 「しかも難しいじゃないですか。AメロBメロCメロすべてに癖がある。こう来るだろうなっていうところで来ない。今回のアルバムは落とし穴だらけじゃないですか」
――アルバムの最初にくる歌が一番テンポ遅かったりするし。
S & L 「それがやりたかっただけじゃないかっていう。イントロからのこれっていう。曲間もできる限り詰めました」
tsuboi 「普通絶対やらないですよね」
Schtein & Longer / 南波一海 / illicit tsuboi
――試聴機対応へのアンチでしょ?
S & L 「そうそう。ズコーッていう」
tsuboi 「それやったら俺らでも怒られるのに。あれでガッツポーズの人と、ふるいにかけられていなくなっちゃう人もいらっしゃると思うんですよ」
S & L 「曲順決めた時に“これ曲順最悪ですね。怒られますよ”って話しました」
tsuboi 「それを形にできるのはいいプロダクションですよ。これまで出た曲もアルバム・ヴァージョンにしてるのもいいですよね」
S & L 「僕らが飽きちゃうんですよ。彼女たち的には大変ですよね。BPMも歌割りも変わってるので」
tsuboi 「ライヴでもやるんですか?」
S & L 「やってますね。覚え直しです」
tsuboi 「ええ!」
――サービス精神というよりは自分たちが飽きてしまうから違うヴァージョンも作ったんですか?
S & L 「両方です。みなさんシングル買ってくれてるし、Especiaはアイドルの中で言ったら音楽コンシャスというか、そっち側じゃないですか。だから同じ曲を入れたら怒られるんじゃないかと思って。だから、せめて歌の再録はしましょうと。でもそれだけじゃ面白くないのでエディットもしましょうと」
tsuboi 「ファンとしてはどうなんですか? ライヴを見て喜ぶのか、こんなの知らないって思うのか」
S & L 「両方いると思いますよ。おれはこんなのを聴きに来たんじゃないっていう人もいらっしゃいます」
――Especiaのファンの方は慣れている人の方が多いですよね。イントロに全然違うのをくっつけたりとかも以前からやっているので。
S & L 「そうですね。我々もなかなか意地悪なんで、無告知でいきなりやったりするんですよ。“今日は新曲初披露!”みたいなことも言わないし」
tsuboi 「その不親切感が報われてない感じもしますね(笑)」
――反応が結構薄い時もあります(笑)。
tsuboi 「メンバーがそうすることに喜びを感じているのかも微妙だったりするし」
S & L 「そうなんですよ。でもなんか言いたくないんですよ」
tsuboi 「わかります、大切ですよ」
S & L 「基本は何とも思われないベースでやっていて、誰かが気づいてくれればくらいの気持ちでやっています」
tsuboi 「〈くるかな〉はひっくり返りましたね。こういう曲もあるんだと。でもアルバムは不思議とトータル性を感じました」
S & L 「ありましたか?」
tsuboi 「ないように作っていて、結果的には出ちゃってるのがいいと思ってます」
――コンポーザーのみなさんはEspeciaを意識した曲を作ってくるでしょう?
S & L 「はい。なので、意識してきたものは差し戻します(笑)」
tsuboi 「やっぱり。それをやってる感じがあるんですよ」
S & L 「前に出した〈海辺のサティ〉の時も、Pelly coloさんに作ってもらったんですけど、一回戻してるんです。“アイドルとか気にしなくていいのでいつもの感じでお願いします”って」
tsuboi 「その判断力は重要ですよね」
S & L 「先輩グループのBiSの曲を作っている松隈(ケンタ)さん中心のチームがあって。そこが、BiSっぽい曲を渡されると差し戻すんですね。そのスタンスがいいなと思って取り入れてます」
――そうした方が結果的に面白くなる?
S & L 「ですね。Especiaっぽさみたいなのを意識して書いてもらったものを最後まで持っていったことがないんですけど、途中でこうなるかなって予想がついた先から増えない気がして。テンションが上がらないんですよ」
――ハプニング的な要素が望めない。
S & L 「はい。“そうなるでしょうね”ってなってしまいそうで」
tsuboi 「それは曲作る側にはよくある話ですけど、難しいのが、歌い手さんが乗っけた時に、さらに上に行く場合もあるじゃないですか。歌が入って“おっ”って思ってさらに積んでいくのか、それとも歌はある程度予測がついてるのか、どっちなんですか?」
S & L 「両方ですかね。バリバリ歌う子たちじゃないので、ある程度は予想はしています。でも実際に聴くと、大体……爆笑しますね」
――爆笑(笑)。
tsuboi 「僕もひっくり返ったわけですよ。歌い直したやつとか聴いて、なんか変な感じに成長というか変化している。アレンジよりもそこに驚きました。何回も歌ってるだろうに、こうなるかっていう(笑)。それを極力生かしてる感じって言うんですか。普通、アレンジと歌っていうのは綿密な世界観があってパッケージされると思うんですけど、Especiaの歌って、聴いていると“この日は何を食ったんだろうか”とか、その先に日常が見えてくるんですよ」
S & L 「ああ! それはありますね!」
tsuboi 「情景が見えてくる。僕が普段レコーディングしてるっていうのもあるんですけど」
S & L 「歌のコンディションが普段の生活にバンバン左右されていくという。全然プロ意識が足りないと怒られそう(笑)」
tsuboi 「僕とかプロの感じだと、どっちかと言うとそれを消していく作業をやってしまうんです。Especiaもやられているとは思うんですけど、消しても消せないものがある。全曲そうなってる。ピッチ直したりすると情感がこもらないとか言うじゃないですか。でもそれにも限界があるというか」
――ピッチ修正をものともしない生活感が出ている(笑)。
S & L 「声はやっぱり人間から出ているものですからね。その生活感の強度たるやすさまじいですよ」
――そこがまさしくアイドルのよさですよね。
tsuboi 「とはいえここまで見えてくるのっていうのがなかなかね。他にもいらっしゃるとは思いますけど、ちゃんとしたライヴができるっていうスタンスまで行ってない人がほとんどで。普通に聴けて、かつそういうところもあるっていうのがいいですよね」
S & L 「ありがとうございます」
tsuboi 「アルバムのマスタリングもバッチリって思うのは、ある程度音量は揃ってますけど、音圧が上がったり下がったり聴こえるんですよ。下がった時に“よし!”って思うんです。わかってんなーと」
S & L 「ピークがなんとなく揃ってればいいなくらいの感じでやってもらいました」
tsuboi 「そのポイントがいいですよね。“声小さ!”みたいな時もある(笑)。サックスより小さいのありますよね。さっきのVHSで、メンバーよりテロップが前に出てるのを見て思いました。全体の形としての印象付けを大事にしているというか。メンバーが文句さえ言わなきゃ大丈夫ですよね」
――Especia全般における人間味というかルーズさみたいなものは間違いなく長所ですよね。
S & L 「あと、僕がビビっちゃうんですよ。ピッチ補正もやっているので、あんまり声を上げ過ぎるとバレるんじゃないかって」
一同 「あははは!」
S & L 「もうちょっとまわりをパッドで埋めようぜみたいな。ちょっとした迷いがね。一回寝て、起きて聴き直して“どうしようかな”って思ったり」
tsuboi 「とはいえ歌が上手になりましたよね」
S & L 「『DULCE』の頃に比べると歌えるようになってきました」
tsuboi 「そうなってきた時に、それをもってしても歌えない歌を持ってくるじゃないですか」
S & L 「それはあるかもしれないですね。ここまでできるならもっと行けるかなと」
tsuboi 「ライヴ映像なんかを見るとパフォーマンスできているじゃないですか。思ったよりCDとの差が大きくない。もっと開きがあると思っていたんです」
――前はギャップを楽しんでいたんですけど、本当にうまくなっているなって思う瞬間がたびたびあるんですよね。
S & L 「とはいえ、やっぱりまだまだなんですけどね」
tsuboi 「そのバランス具合がいいですよね。今日お会いして“本当はもっとこうしたんですよね”って言うかと思ったら、全然その気配がないからよかった(笑)。面白いですよね。80年代に少女隊って3人組がいたじゃないですか。色んな作家さんで変わったことをやっていった感じだったんですけど、やっぱり最終的には上手くなっていくんですよね。それが自然な流れだったからよいなって思うんです。Especiaのチームがどうなっていくのか想像つかないですけど、アルバムを聴いて安心しました。2曲目のズッコケと、あそこからの地味な流れが最高ですよね」
――地味ですよね。
tsuboi 「だからなのか、飽きない。めっちゃ聴いてますよ。一発目聴いたら流れで最後まで聴けますもんね」
S & L 「本当ですか。長くないですか? 通して試聴するのが本当に苦痛で」
tsuboi 「何度も作業してるからですかね」
S & L 「当初、もう一曲新曲入れる予定だったんですけど、“これだと総尺が第九より長いぞ”ってことで」
tsuboi 「わははは! 一曲削ってもイントロとスキットとアウトロは残してるというのがね。でも必須っすよね」
S & L 「そこは外せなかったです」
tsuboi 「レコードはあんまり執着はないんですよね? シングルになったものを7inchで聴きたいって思うんですよ。それも当たり前すぎるって感じですか」
S & L 「去年くらいだったらまだ大丈夫かなって思うんですけど、今アナログ切るっていうのも“はいはい”みたいな感じですよね。だったらMDやりたいなくらいで」
tsuboi 「売り出すんじゃなくて、裏で作って欲しいですね。メンバーがライヴ中に投げることでしか手に入らない盤とか」
S & L 「いいですね。それくらいでもいいんじゃないかって思います」
tsuboi 「だから策を練ってるんだろうなって思ってたら、VHSだったので仰天しました」
――驚きましたね……。ともかく、アナログは今のところ考えてない。
S & L 「機会があれば是非!とは思いますが、それよりもまずはCD売らなきゃっていう」
tsuboi 「そうですよね」
――アイドルのアルバムって、握手とか特典会狙いで気軽に買いやすいシングルと違って一気にハードルが高くなるイメージがあります。
tsuboi 「DVD付きっていくらでしたっけ」
S & L 「5,000円くらいです。ちょっと高いんですけど、フルのライヴDVDが2,000円だと思えばいいでしょって感じなんですけど」
tsuboi 「でもこの打ち出し方だと、フルのライヴが入っているっていうのが伝わらないような気もしますね。オマケみたいに捉えられがちというか」
――全21曲、104分入っていますと声を大にして言いましょう。
S & L 「言った方がいいですね」
tsuboi 「フルバンドライヴは東京ではやらないんですか?」
S & L 「正直やりたいですね。やっぱり予算と人員が。だから後付けですけど、大阪のアイドルなので、大阪に来てくださいということにしてます」
tsuboi 「よくライヴに行く人は“やっぱり見るなら大阪だよな”みたいなのがありそうですね。ファンの方は行くしかないですね」
取材・文 / 南波一海(2014年5月)
Especia
2nd Anniversary Fullband Oneman Live
“Viva Discoteca Especia 2014”
www.especia.me

2014年6月1日(日)
大阪 梅田 CLUB QUATTRO
〒530-0051 大阪府大阪市北区太融寺町8-17 プラザ梅田 10F
開場 16:00 / 開演 17:00
前売 3,500円(税込 / 別途1ドリンク代) / After Party付(税込 / 別途2ドリンク代)

ぴあ(P: 224-199) / ローソン(L: 52919) / e+
※After Patryは当日終演後会場内再入場の上実施となります。(予定時間 21:00〜22:00 / 当日の状況によって多少前後する可能性有り)
※After Party付きチケットは入場時、再入場時それぞれドリンク代が必要となります。

※お問い合わせ: サウンドクリエーター 06-6357-4400
www.sound-c.co.jp



大きな地図で見る
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015