花井悠希 ニュー・アルバムのテーマは“物語” フォトブック『ばよりん彼女』も同時発売!

花井悠希   2011/03/02掲載
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 今春大学を卒業したばかりのヴァイオリニスト、花井悠希が3枚目のソロ・アルバム『譚詩曲(たんしきょく)〜11 stories on Violin』をリリースする。曲のもつストーリーに惹かれて選んだという11曲は、プロコフィエフからケイト・ブッシュまでバラエティに富んでいるが、その表現力は、デビューからわずか一年余りにもかかわらず目覚ましい成長を感じさせる。ピアノの林そよか、チェロの林はるか姉妹とのトリオも充実し、林そよか作曲のオリジナルも収録されている。クロスオーヴァーでもお堅いクラシックでもない、不思議な感触のハートフル・ミュージックは、聴き手の心のもっともデリケートな部分に触れてくるのだ。自然体でありながら凛とした音楽を作り上げる花井悠希の“いま”を訊いた。


――最新作『譚詩曲』が完成しましたね。でき上がってから何回くらい聴きましたか?
 花井悠希(以下、同) 「よく寝るときに聴いています。今回は激しい曲が少ないというのもあって、耳を澄まして聞こえるか、聞こえないかという音量でかけていますね。このアルバムでは、ただ綺麗な音楽、メロディというのではなく、目を瞑ったときにいろいろな物語や妄想が聞こえてくるような曲を選びました。曲に対する尊敬の気持ちも込めています」
――選曲は、ピアソラに始まってボロディンシュニトケショスタコーヴィチプロコフィエフ、そしてケイト・ブッシュに坂本龍一とバラエティに富んでいます。
 「クラシックの曲とポップスの曲をあまり分けて考えていないんですね。私自身、マルーン5が好きだったり、J-ROCKが好きだった時代もありましたし、雑食というか、いろんなものを聴くタイプだったんです。坂本(龍一)さんの〈千のナイフ〉は、YouTubeで弦楽アレンジ版を見つけて、その動画がものすごくかっこよかった。原曲は知らなかったけど、絶対やりたいと思いました」
――歌心、というのが隠れテーマなのかなとも思いました。グリーグの「過ぎし春」やワーグナーの「ジークフリート牧歌」は、とくに泣ける演奏。心が熱くなります。
 「小学5年生の頃から地元のアマチュア弦楽合奏団に入っていたのですが、そこで初めて、私が弾くことで感動して涙を流してくれる人たちと出会ったんです。カルテットを組んで老人福祉施設に行ったりすると〈りんごの唄〉みたいな曲で、泣いてくれるんですよ。音楽の力を目の当たりにしましたね。〈津軽海峡冬景色〉なども弾いてました」
――なるほど。聴衆を泣かせるって、表現者冥利に尽きますよね。
 「心の声を楽器に乗せたい、といつも思っています。楽器でしか表現できない声。それは、自分が感じた曲の第一印象だったり、ぼんやりとした光景やストーリーだったり……もちろん曲のバックグラウンドも勉強しなきゃいけないけど。入魂して弾けたときって、その曲に深く深く入り込んで、目の前の景色がぼんやりして、すごく不思議な精神状態になるんです。一人で練習しているときよりも、人に聴いてもらっているときのほうが、断然それが強く感じられる。人前で弾かせていただけるようになってから、練習しているときもその状態に入っていけるようになりました」
――時間も空間も溶け合って、一つの音楽になっているような感じ。いい演奏会ってそういう不思議な感覚に襲われます。
 「練習でも、その状態に到達できたときほど、先生から“いい演奏だったね”と言っていただくことが多いかもしれません」
――ところで、タイトルの『譚詩曲』は、最初から決めていたんですか?
 「曲目が全部決まってからつけました。コンセプトとして“古(いにしえ)”“神話”“物語”といったぼんやりとした言葉はスタッフみんなと共有していたし、それに見合う言葉をずっと探していましたが、なかなか見つからなくて……。辞書でいろいろな言葉を調べて“譚”という漢字が“物語”を表わすということを知ったんです。“譚詩曲”でバラードという意味ですね。ほとんど使われなくなった昔の言葉ですが」
――“いにしえ”“神話”“物語”……なるほど、そんなイメージです。
 「中学から高校にかけて、ファンタジー小説にどっぷり浸かっていた時代があって。『ハリー・ポッター』から入って、『指輪物語』とか、ああいう世界に入ると抜け出せないタイプ。本に付いている地図や人物相関図などのガイドを片手に、あれこれ想像をふくらませながら何度も読み返してました。物語好きなんです」
――世の中はどんどん便利になっているけど、多少不便でも、何か“いにしえ”の香りのするものが好きなんじゃないですか?
 「未来的でシャープなものも好きなんですが、木のぬくもりみたいなもののほうが、根底の部分で落ち着きますね。雑貨や服でも、そういうぬくもりのあるものが好きですし。ヴァイオリンも木でできていますよね。今弾いている楽器は6年目ですが、1810年にロンドンで作られたもので、ニスがつやつやしてすごーい“美人”なんです。高い音より低い音が好き。G線の音がとてもいい音なんですよ」
取材・文/小田島久恵


『ばよりん彼女〜花井悠希フォトブック』同時発売!
 「クラスにひとり、こんな女の子がいたら……」。そんな想像をするだけでシアワセな気分になってしまう花井悠希の魅力がたっぷりつまったフォトブックが音楽出版社より発売されます! デビューから1年間、少女から大人の女性へと羽ばたいていく彼女の成長過程を、100点を超える写真でとらえた待望の一冊。オールカラー、120ページの大ボリュームでお届けします。

『ばよりん彼女〜花井悠希フォトブック』
B5判 120頁/税込2,000円
音楽出版社刊

■第1章 GIRL
デビュー・アルバム『主人公〜さだまさしクラシックス』『光の風〜ヴァイオリン・クラシックス』リリース直前の鎌倉でのフォト・セッションより。

【クリックすると大きな画像が表示されます】

■第2章 PORTRAIT
ヴァイオリニストとしてステージに立つ演奏姿から、本人提供写真による20歳までの生い立ちの記録、ツアーなどでのオフショットまで。花井悠希のあらゆる“顔”を見せます。

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■第3章 ONE DAY WITH YUKI
高層ビルと下町情緒が同居するワンダーランド、東京での一日散歩。本書のための撮り下ろし最新フォト・セッションで、彼女の素顔に迫ります。

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■第4章 FAVORITES
現役大学生詩人、文月悠光との対談を収録。その他、花井さんに10の質問、持ち物チェック、お気に入りの洋服、得意レシピなどを紹介。

【クリックすると大きな画像が表示されます】

■第5章 LADY
最新アルバム『譚詩曲〜11 stories on violin』のフォト・セッションの模様をいち早く紹介。

【クリックすると大きな画像が表示されます】


撮影:鳥巣佑有子(angle)
花井悠希オフィシャル・サイト
http://columbia.jp/hanaiyuki/
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