フックアップしながら自分も“新鮮さ”をもらってる、その関係性こそがヒップホップ ISSUGI「7INC TREE」

ISSUGI   2017/04/26掲載
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 昨年8月に行われたフリースタイルMCバトル〈KING OF KINGS〉東日本大会で優勝を果たしたラッパーのISSUGI16FLIP a.k.a. DJ Killwheelとしてビートメイカー、DJとしても活躍する彼は、昨年2月にJJJとの共作ミックステープ『LINK UP 2 EXPERIMENT』、9月にGRADIS NICEとの共作アルバム『DAY and NITE』を発表。その精力的な活動を通じて、揺るぎないヒップホップ観を提示してきたが、昨年2月より12ヶ月連続で7インチシングルをリリースしてきた「7INC TREE」プロジェクトをアルバム1枚に凝縮した『7INC TREE / V.A』が新たにリリースされた。Mr.PUG、JJJ、ILLNANDES、DJ K-FLASH、GRADIS NICE、KID FRESINO、16FLIP、CRAM、YOTARO、BUDAMUNKOYG仙人掌DJ SCRATCH NICE、DJ BRESS、SLEPTT、FEBBMASS-HOLEDJ GQDJ SHOEという錚々たるラッパー、ビートメイカー、DJをフィーチャーして展開された一大プロジェクトを通じ、彼が提示するヒップホップの遊び方、楽しみ方について話を聞いた。
――まず、今回のアルバムのもとになっている「7INC TREE」のプロジェクトについて教えてください。
 「きっかけは、仙人掌“BE IN ONES ELEMENT”やDOWN NORTH CAMPのALBUMプロジェクトもお願いしているCPF(CREATIVE PLATFORM: 会員限定で制作資金の先行投資を募る音楽コンテンツ・プロジェクト)から“色んなビートメイカー、ラッパー、DJをフィーチャーして、毎月7インチシングルをリリースする企画はいかがですか?”というオファーがあって。その企画はただ7インチをリリースするだけでなく、Diaspora skateboardsを主宰している小林万里くん(ミュージック・ビデオを多数手掛けている)に撮影をお願いして、その制作過程を映像に残して、サイゾー動画というメディアで放送しよう、と。お願いしたいビートメイカー、ラッパー、DJに関しては、スタートの段階で3、4人決まっていたんですけど、ビートを募集してみたり、友達からもらったビートから選んだり、そのほとんどは企画を進めながら、決めました」
――そのプロジェクトありきで制作した12枚の7インチシングルをまとめたものが、アルバム『7INC TREE / V.A』なんですね。ビートメイクであったり、制作過程を映像で紹介するプロジェクトとしては、dublabのドキュメンタリー『SECONDHAND SURESHOTS』や、目隠しで選んだレコードをもとにビートメイクするヒップホップサイト、MASS-APPEALの動画企画「Rhythm Roulette」がよく知られていますが、7INC TREEはそうしたプロジェクトが念頭にあったんですよね?
 「そうですね。初めて、Rhythm Rouletteの動画を見た時、すごく面白いなと思うと同時に、そういえば、日本でビートメイクの様子を動画で見せている人がいないなって。だから、7INC TREEではそのアイディアを形にしてみたかったんです。ただ、なにせ初めての試みだったので、やっているうちに企画がなし崩しになってしまったところもあるし、課金制のサイゾー動画はプラットフォームとして、見る人が限られてしまったという反省点もありました」
――ただし、1ヶ月に1曲、それを12ヶ月続ける制作スタイルと7インチでのシングルカットを念頭に12曲作ることは通常のアルバム制作ではあり得ないことですよね。
 「やっている最中の意識は、前作『DAY and NITE』のような通常のアルバムを作る作業とは違う部分もありましたし、出揃った12曲を振り返った時、意図せずとも今まで自分が作った曲と共通するものが表れるんだなと感じる部分もあり。アルバムの曲順は、2016年2月の初回から出来た順番そのままなんですけど、アグレッシヴな前半からメロウな、ディープな後半への流れが自然と生まれたのが我ながら面白いな、と。ラスト2曲、MASS-HOLEがプロデュースした〈FU-JIN RAIJIN〉とDJ GQがプロデュースした〈EMERALD〉のガツンガツンとしたトラックに関しては、自分の普段のアルバムではこういう締め括り方はしないんですよね多分。でも、12ヶ月の流れを大切にして、結果こうなったっていう。そういう流れにしてもそうだし、ビートのチョイスやその時思ったことを形にするフリースタイルに近いリリックに表れている感情も、もしかすると作った季節も影響しているのかもしれないですね」
――そして、JJJがプロデュース、スクラッチがDJ K-FLASH、そして、Mr.PUG、JJJ、ILLNANDESをフィーチャーした1曲目の「RAP RUSH」は、昨年2月に無料配信されたISSUGI×JJJのミックステープ『LINK UP 2 EXPERIMENT』にも収録されていますね。
 「曲自体は7INC TREEのために作ったんですけど、JJJと作っていたミックステープにもショート・ヴァージョンを入れて、同時期に公開したんです。去年はこのプロジェクトを進めながら、ミックステープも作ったし、『DAY and NITE』もリリースしたんですけど、リリースするしないに関係なく、曲作りのペースはそんなに変わってないし、その流れをキープ出来たらいいんですけどね」
――今回の12曲では、CRAM、YOTARO、SLEPTTという3人のビートメイカーが初顔合わせということで、それぞれ紹介していただけますか?
 「SLEPTTはその時まで会ったことがなかったんですけど、CRAM、YOTAROはもともと知ってて、ビートも聴いたことがあって。CRAMは福岡出身で、カナダのトロントで活動していた時期もあり、今は神奈川在住なんですけど、福岡時代からビートを聴かせてもらっていて段々仲良くなりました。色々聴かせてもらってる中にそのなかにやりたいビートがあったので、7INC TREEのタイミングで声をかけました。YOTAROは奈良在住で、このプロジェクトが始まってしばらく経った頃に“これ、ISSUGIくんに合うと思うんで、このビートを聴いてみてください”って、渡されたビートにぴんと来る何かがあって、速攻でラップを録りました。で、SLEPTTに関しては、ビートを募集した時に送ってくれて、ファンクを感じるベースラインがいい感じで自分の周りにはあんまいないタイプだなと思って、音の鳴りもバランスがいいんですよ。それで連絡を取りました」
――ISSUGIくんはライヴで地方に行くことも多いと思うんですけど、現場で若い、あるいは知らないビートメイカーからビートをもらうことは多々ありますよね?
 「正直、超あります(笑)。でも、実際の話あまりに多すぎて、全部聴けるわけではないんですよね。だからゆっくり時間をかけて少しづつ聴いてます。だから、ビートを募集すればそういう人もビートを送ってくれるんじゃないかなって。そして、俺自身、SEEDAくんの『CONCRETE GREEN 2』でMONJUをフックアップしてもらったし、今度は俺がそういう役割が出来るんだったら新しいビートメイカーをフックアップしつつ、でも結局俺自身が新しいビートメイカーから新鮮さをもらってフックアップされるところもあって、そういう関係こそがヒップホップだなと思っていて」
――そのヒップホップ観というのは、7INC TREEというプロジェクト名の“TREE”にあたるものなのかな、と。
 「そうですね。ラッパーはビートメイカーをリスペクトして、ビートメイカーはラッパーをリスペクトしてないと両方を上げれる曲は生まれないと思うので。実際、今回、選んだ面子は何かしら共通するものがあると思うんですよ。〈RAP RUSH〉はJJJが自分のアルバムでは使わないビートを選んでいたり、GRADISのも今回はTRAPではないのを選んでたりするのでそこには俺の好みが大きく反映されているとは思うんですけど、それぞれをシングルで発表した12曲をまとめた今回のアルバムから共通する何かを感じ取ってもらえればうれしいですね」
――プロジェクトのテーマでもある7曲目の「7INC TREE」のビートは、16FLIP名義でISSUGIくん自身が手掛けています。
 「この曲のネタは、リリックでも歌っているんですけど、下高井戸にあるTRASMUNDOのブラジル音楽コーナーからピックアップして、ビート自体、すごく気に入ってたので、番組のテーマ曲として流していて、録るタイミングを考えていたんですけど、夏っぽいイメージのビートだったので、8月にリリースしたんですよ」
――TRASMUNDOで買ったレコードで作ったビートといえば……。
 「『DAY and NITE』のリリース・パーティ限定で『16FLIP VS TRASMUNDO』っていうビートテープをリリースしたんですよね。どうしても出したいということで、店主のハマさんが提供したネタをもとに2日で作ったんですけど、自分の場合、超ヤバい曲を作るんだと常に意気込んでるわけではなく、気軽に遊びでやってみることで、いい曲が出来ることも多々ありますからね」
――そういう軽いフットワークの遊びこそがヒップホップの面白い部分でもありますし。
 「だから、今回まとめた7INC TREEのファースト・シーズンの経験も踏まえて、5月からFRESH! by CyberAgentでこのプロジェクトのセカンド・シーズンを始める予定です。みんなに観てもらいたいですね。日本には音楽の側面を打ち出したヒップホップの番組がまだまだ足りないと思うんですよ。自分としては、7INC TREEプロジェクトを通じて、ヒップホップの内側にもっと興味を持ってもらいたいし、そうすることでより身近なものになるんじゃないかなって」
――あと、先日のFEBBのリリースパーティでMONJUのライヴ中に、ISSUGIくんは“いまMONJUのレコーディングをしてる”と語っていましたよね。
 「そうですね。MONJUは今年こそリリース出来るようにレコーディングを進めていて。あと、一番近いところでは5月に『DAY and NITE』のリミックスが出ますし、BUDA(MUNK)と作ってるビート集だったり、Mr.PUGのFREE EP、アルバム単位で何作品か聴けるんじゃないかと思います」
取材・文 / 小野田 雄(2017年4月)
「7INC TREE -TREE & CHAMBR-」
5月放送開始 毎週木曜22:00〜
FRESH! by CyberAgent
※第3木曜 15:00〜 HARAJUKUAbemaStudioからDJ PLAYを生放送予定

7INC TREE Tree & Chamber -BEAT MAKE SPECIAL-
4月27日(木)21:00〜23:00放送予定
出演: BUDAMUNK / ISSUGI

ISSUGIが豪華客演陣と共に12ヵ月連続で7インチをリリースするというユニークな企画「7INC TREE」。毎月リリースされる楽曲のレコーディング風景やLIVEレポート、ISSUGIが仲間の元に足を運び、共にBEAT MAKEしたり、その時々のEXCLUSIVEな情報を伝えていくHIP HOPチャンネル。今回はBUDAMUNK & ISSUGIがリスナーから募ったSAMPLING SOURCEを元に生でBEAT MAKEを繰り広げる。
ISSUGI“7INC TREE”RELEASE PARTY at clubasia
拡大表示
2017年5月13日(土)
東京 渋谷 clubasia
開場 22:00
当日 3,000円 / 前売 2,500円(税込 / 別途ドリンク代)
※前売特典: DJ SHOE&ISSUGI 7inctree exclusive mix


[出演]
RELEASE LIVE
ISSUGI & 7INC TREE GUEST(仙人掌 / OYG / MrPUG /KID FRESINO / JJJ / MASS-HOLE & ILLNANDES)

GUEST LIVE
JJJ / MASS-HOLE / PSYCHO PATCH

BEAT LIVE
CRAM / YOTARO

DJ
BUDAMUNK / FEBB / DJ K-FLASH / KID FRESINO / DJ GQ / DJ SHOE / DJ SINNOSKE / DJ ENDRUN / TRASMUNDO DJs / SENNA / MASS-HOLE / 二木 信 / 原島“ど真ん中”宙芳 / DJ ZONO(COCKROACHEEE'z)


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