【伊藤ゴロー Ito Goro】ジャキス・モレレンバウムとともに、アントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲を中心に録音したデュオ・アルバムを発表

伊藤ゴロー   2014/11/20掲載
はてなブックマークに追加
 ボサ・ノヴァ・ユニットのnaomi & goroをはじめ、ソロ・ワークや豪華アーティストの顔合わせによる『ゲッツ / ジルベルト + 50』のプロデュースなど、さまざまなプロジェクトを手がけてきているギタリスト / 作曲家、伊藤ゴロー。ブラジルからカエターノ・ヴェローゾらとの仕事でお馴染みのチェロ奏者ジャキス・モレレンバウムとその妻でシンガーのパウラ、さらに2人の娘ドラを迎え、ジャキスとの共同名義作としてリリースされることになったのが、今回のアルバム『ランデヴー・イン・トーキョー』だ。日本サイドからはピアノの澤渡英一、ドラムス&パーカッションの小川慶太が参加し、かつてジャキスがグループの一員として加わっていたアントニオ・カルロス・ジョビンのナンバーを中心に、双方のオリジナル曲も交え、音楽へと向き合う姿勢を互いに信頼しあっているような、親密な空気感の漂うアンサンブルを奏でている。
――ジャキスとはどのような巡り会いがあったんですか?
 「naomi & goroで、2009年にブラジル録音をすることになりまして、ゲストでぜひ彼に弾いてもらいたいと。そこで、教授(坂本龍一)に相談して紹介してもらったんです。それが最初の出会いですね」
――最初の出会いから、彼とはずっと連絡を取り合ったりしていたのでしょうか?
 「僕が2012年に『GLASHAUS』というソロ作を作った時にも、ジャキスに弾いてもらいたいというのがあって、演奏とアレンジを1曲お願いしたんです。同じ年の12月には、ジャキスが教授とのツアーで来日して、その際、一緒にデュオでコンサートをする機会などもありました。なので、けっこう短いスパンで、ここ何年か一緒に演奏してきましたね」
――共演作の構想は、以前からお持ちだったんですか?
 「そんなことはまったく思ってもいなかったんですけれども、たまたま今回、ジャキスとパウラが来日するにあたって、一緒にライヴをしませんかという話をいただきまして。ライヴのブッキングが最初にあったんですね。それでジャキスに、どれくらいまで日本に居られるんだという話をしたら、数日時間をとれることが分かったので、じゃあレコーディングしたい……しよう、みたいな(笑)。突発的に決まった話だったんです」
――ジョビンの曲を中心とした構成になっていますが、そこは当初からこうしたいというのがあったんでしょうか?
 「そうですね。ジョビン没後20周年ということと、やっぱりパウラのヴォーカルを入れたいということで、どうしてもジョビン中心にやりたいなというのがありました。それと、モレレンバウム夫妻と教授とのトリオがジョビン作品を演じたアルバム『Casa』は、僕にとってジョビンそのものと同じくらい重要なもので、この2人と一緒に、そういう作品ができたらなというのもあったんですね」
――『Casa』を意識したところがあるわけですね。
 「相当意識してますよ(笑)。あからさまなオマージュということではないんですけど、ちょっとしたハーモニーとかイントロとか、『Casa』のフレーズを使ったりとか。ピアニストの澤渡くんも『Casa』が大好きだということで、ちらっとあのアルバムにでてくるフレーズをピアノでやると、ジャキスも同じように演奏したり。で、3人でニヤリと。そんな感じで録音を進めていきました」
――ジョビンの曲に対する伊藤さんの向き合い方というか、どのような捉え方をされているかを教えていただけますか?
 「僕がブラジル音楽に取り組みはじめたころ、ジョビンの曲はしょっちゅう演奏され、録音もされていたので、ちょっと違ったアプローチで演ろうみたいなところがありました。けれども、ずっと演奏していくと、やっぱりオリジナルというか、根本的に彼の作ったものを再現していくことが、いちばん美しいのかな、と思って。今回のレコーディングの時も、ジャキスがジョビンはこういう流れで弾いていたとか、いろいろ指示してくれるんですよね。それがすごく的確だし、勉強にもなった。そうやって丁寧にジョビンの曲を演じていくのが、いちばんふさわしいのかな、と感じています」
――伊藤さんのオリジナル曲もしっくり収まっていて、共同名義作ですが主役同士で主張しあうということではなく、穏やかに共鳴したサウンドという印象を受けました。
 「僕はギター弾きですけど、ギターがど真ん中にいる音楽には興味がなくて、アンサンブルされたものというか、たとえばデュオでも対等に話をしているようなもののほうが好きだから、そういうように聴こえるのかなと思います。ジャキスもソロ名義作というのはなくて、誰かと一緒に演奏したり、もしくはサポートするような立ち位置が多いから、そういう2人が作るとこうなるのかもしれないですね(笑)」
取材・文 / 長嶺 修(2014年10月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015