若いリスナーにも良い音楽を届けたい――MASATOとMinnesotahが語る『KANDYTOWN LIFE presents “Land of 1000 Classics”』

KANDYTOWN   2017/09/01掲載
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 今夏は〈SONICMANIA〉や〈SUMMER SONIC 2017〉にも参戦し、現在のヒップホップを代表するクルーとしての実力を確かなものにしつつあるKANDYTOWN。7月には昨年リリースのフル・アルバム『KANDYTOWN』をアナログ・カット。さらにメンバーそれぞれのソロ活動 / リリースも活発な中、DJであるMASATOとMinnesotahがタッグを組み、ミックスCD『KANDYTOWN LIFE presents “Land of 1000 Classics” mixed by MASATO & Minnesotah』を8月30日にリリース。

 今作はKANDYTOWN関連のミックスではなく、クルーが所属するワーナー・ミュージックの傘下にあるレーベル「Atlantic Records」作品の中からR&B / ソウルの楽曲をチョイスし、ミックスした作品。レイ・チャールズアレサ・フランクリンアーチー・ベル&ザ・ドレルズなど、Atlanticに所属したキラ星の如く輝くアーティストの作品を、20代中盤の彼らはどのように切り取り、どのように繋いだのか。名曲群とフレッシュな感覚とのミックスも興味深い一枚だ。
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――まず今回のミックスのお話を伺う前に、MASATOくんとMinnesotahくんの繋がりから教えて貰えますか?
Minnesotah「KANDYTOWNの中でも、MASATOくんは和光出身で、IOくんやYUSHIくんと同じ学年だったんで、BANKROLLのメンバー。僕は公立校出身で学年も一個下なんで、学校的な繋がりは無かったんですけど、地元が喜多見なんで、地元の先輩にサンタくん(B.S.C.)やRyohuくんがいて、彼らがBANKROLLを結成したことで、僕も彼らの輪の中に入っていって、そこでMASATOくんとも繋がったんですよね」
――KANDYTOWNはそういう相関図が面白いし、重要な部分なような気もして。
MASATO「超複雑なんですよね。それでKANDYでアルバム作る時も、ワーナーの会議室でレイジ(OKAMOTO’Sのオカモトレイジ。KANDYTOWNのA&R)がホワイトボードに人間関係図を書き出して、会社に説明して(笑)」
――では二人の音楽的なバック・グラウンドは?
MASATO「自分はもともと、兄貴がブラック・ミュージックやヒップホップを聴いてたのがキッカケですね。それからYUSHI。彼は小学校の時からエミネムとかジェニファー・ロペスとかを聴いてて、それを一緒に聴いてたし、“いずれ一緒に音楽をやろうぜ”っていう話は当時からしていて」
――それがBANKROLLやKANDYTOWNに繋がるんですね。
MASATO「それで自分が高校生ぐらいの時に兄貴がタンテを買ったんで、自分もDJを始めたんですよね。当時はカニエ・ウェストやジャスト・ブレイズだったりが好きだったんで、そのネタとしてサンプリングされた元曲も掘るようになって、そこからもっとブラック・ミュージックを知るようになっていきましたね」
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――Minnesotahくんはいかがでしょう?
Minnesotah「KANDYTOWNのNeetzとは小学校1年生から一緒なんですけど、彼は小学校の時からZeebraとかを聴いてて、それでなんとなくヒップホップは耳に入ってたんですね。自分でも中学ぐらいからヒップホップのCDを借りたりするようになって、JAY-Zとかカニエみたいな、サンプリング・メインのヒップホップを聴くようになって。それで自分でもDJを初めて、ネタのレコードとかも買うようになって……っていう」
――MASATOくんはラップもされますが、2人ともアートフォームとして“DJ”を選んだのは?
Minnesotah「なんだろう……人間性?(笑)」
MASATO「『SCRATCH』(2001年)って映画あったじゃん」
Minnesotah「あー。あった」
MASATO「俺はそれを見てDJを始めた感じでもあるのかな。“スゲえかっけえ!”って」
Minnesotah「MASATOくんは今でもラップをやってるけど、俺もラップして遊んだりもしてたっすけどね。でもターンテーブル買って、レコード買ってたら、自然にDJを始めててっていう感じかもしれない」
MASATO「そうだよね。音楽がめっちゃ好きだったから、“集めたい”っていうのもあって、今でもレコードもCDもメッチャ買ってるし、(レコードを)掘る事の延長でDJを始めた部分もありますね」
――なるほど。2人の繋がりが深くなっていったのは?
Minnesotah「10代後半ぐらいですね。高校生の時」
MASATO「俺が渋谷の『NoStyle』で、和光の連中とか兄貴や兄貴の繋がりのDJと一緒にイベントをやってて」
Minnesotah「そこに俺も呼んで貰って、そこで初めて人前でDJしたんですよね。僕はヒップホップをかけてたんですけど、MASATOくんはその時から既にソウルとか80S〜70Sぐらいの曲をかけてた記憶があるっすね」
――ディグはその当時からしてたんだ。
MASATO「そうですね。『I Love Sampling』(サンプリング・ソースの辞書的な冊子)で勉強して」
Minnesotah「俺もレコード屋で働くようになって、そこで参加アーティストのクレジットを読んだりするようになって、本格的に知識を入れ込み始めて」
――それはどこのレコード屋さん?
Minnesotah「渋谷の『FACE RECORDS』ですね」
――ソウルやジャズの強いレコード屋さんですね。
MASATO「俺も某レコード店で働こうと思ったんですけど、そこは働いてると中古盤を買えないシステムだったんですよね。“安くなるどころか買えないの?これは無理だ”って(笑)」
――でも確かに、レア盤に安い値段付けて自分で買っちゃうとかも出来るからね。
MASATO「目の前に超欲しい盤が入ってきても買えないんですよ?もう地獄じゃないですか(笑)。だからレコ屋では働いてなかったですね」
――音楽的な情報交換も出会った頃からしてましたか?
Minnesotah「全然してました。最初はMASATOくんに教えてもらってたんですけど、その内に、お互いに知らないところを教えあうようになって。お互いに『これが格好いい』っていう根本は似てると思うんですよね」
――HMVのWEBに掲載されてた『無人島 〜俺の10枚〜』でも、ダニー・ハサウェイジョー・バターンを二人とも挙げていて、感性が似てる部分も感じましたね。
Minnesotah「根本的に好きな部分は似てると思うし、それが被ってる部分はあるんだけど、そこから先の部分は、ちょっとお互いに変わってると思いますね。俺はロックとかも全然好きだし、MASATOくんはフィリー・ソウルとかサザン・ソウルが好きだったり」
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――2人はトラックメイクは手がけていないけど、掘ってるとトラックメイクをしたくならない?
Minnesotah「プロデューサー陣に“これ使えるんじゃない?”みたいに、ネタを渡すことはあるっすけど、自分で作るってことはしないですね。Neetzとプロダクション・チームみたいなのやろうよ、って話をしたり、MPCを買ったりもしたんですけど、あんまりハマらなくて。別にそこまで本気になる度は高くなかったというか。それよりも俺はDJだなって感じでしたね」
MASATO「自分もMPCを買ったりはしたんですけど、機械にメッチャ弱くて……。レコードだったら針落とせばすぐに音が出るじゃないですか。そっちの方が楽だわ、単純な事しか出来ないわって(笑)」
Minnesotah「あと、KANDYでプロダクション出来るチームと話すと、やっぱり聴いてる耳が違うなって思うんですよね」
MASATO「そうそう」
Minnesotah「俺らはリスニング寄りというか、曲として踊れるか踊れないかとか、グルーヴがあるない、曲として格好いいかどうかって感じなんですけど、プロダクション・チームはもっと耳がヒップホップというか、勿論、曲としての格好良さも感じてると思うんですけど、ここが使えるとか、もっと曲のパーツに寄ってように感じるんですよね。そこが違うのかなって」
MASATO「確かに。だから曲全体って感じだよね、自分らの場合は」
――今回のミックスも、ヒップホップ・ユニットのDJチーム、しかもKANDYTOWNという、サンプリングの快感を形にするグループのDJチームが作るミックスだから、自分たちの使ってるネタを使ったり、もっとネタ寄りになるかと思ったら、それとは違う、もっとリスニング寄りの感触の内容になってて。
Minnesotah「ネタとして使われてる曲はあるけど、大ネタって感じではないですね」
――アレサ・フランクリンの〈Rock Steady〉とかはネタとして有名だけど、他の曲は使われてても“クラシックの大ネタ”という感じではないですね。
Minnesotah「正直なところを言うと“アンオフィシャルでKANDYのネタでミックス作る?”って話をしてたんですけど……」
MASATO「それはマジで止めろ、とワーナーから言われ(笑)」
――そりゃそうだね(笑)。その意味でも、今回もそういったKANDYの楽曲に強く紐付かない形での、DJとしてのチョイスを出したかったというか……というと誘導尋問みたいですが。
Minnesotah「でも実際そうですね。選曲もAtlanticの歴史を辿って、ちゃんとした名曲をチョイスしてるミックスって、そんなに無いのかなとも思うし。ちゃんとポップスとして水準を超えている楽曲を選びつつ、かつヒップホップ・サイドも喜べるミックスというのは念頭にありましたね。Atlanticはカタログも膨大だし、音楽史的にも超重要なレーベルじゃないですか。だから、ちゃんとした名曲をピックしたいっていうのはありましたね。70周年っていう節目もあるって訊いてたんで、歴史を踏まえた名曲ってことで、50年代、60年代から始まって、70年代に入っていく構成にして」
MASATO「“レイ・チャールズから始まったら間違いないっしょ”っていう」
Minnesotah「クラブ目線、レア・グルーヴの方向性で考えると、70〜80年代が固まっちゃうけど、60年代のソウルも良くね?って。それも僕らの提示としてありますね」
MASATO「イベントとかでも、“良い音楽”を聴ける場所が減ってるのかなって感じるんですよね。昔は良い音楽が聴けるミックスやイベントがいっぱいあったと思うんで、若いリスナーにもそういう感覚を伝えられる役割を、このミックスが果たせればなって」
――個人的にこれを入れたかったという曲は?
Minnesotah「俺はソロモン・バークですね。単純に好きっていうのと、60年代で選ぶならっていう」
MASATO「ベタですけど、スピナーズは入れたかったですね。フィリー・ソウルが好きだし、単純にメッチャ格好いいんで、絶対入れたくて」
――スピナーズといえばMotown時代の〈It’s a shame〉が有名だけど、Atlantic時代にも〈Then Came You〉とか〈Mighty Love〉のような名曲が多くて。
Minnesotah「〈I’ll Be Around〉を入れたのはミックスの流れだよね」
MASATOサム・ディーズの〈Come Back Strong〉の後に繋いだらヤバイよね、って」
――アーチー・ベル&ザ・ドレルズも〈Tighten Up〉じゃなくて、〈A Thousand Wonders〉を選んでるところも、超定番で終わらない感じになってますね。
Minnesotah「ちょいひねりはしてると思うっすね」
――DJミックスだけど、スクラッチや2枚使いも無いし、スムーズなミックスだから、全体のトーンとしてコンピレーションにも近い感触もありますね。
MASATO「作ってる最中は、〈ROCK STEADY〉で2枚使いとかして遊んでたんですけど、それを正規リリースの盤にするのはちょっと違うのかなって。それよりも聴かせる事を考えましたね」
――今もレコードは掘ってますか?
MASATO「ゴリゴリ掘ってますね。レコ屋も行くし、通販やネットでもディグって。基本、掘るのはアナログですね、自分は。機械に弱いんで(笑)。見てきたDJがそういう人たちだったっていうのが自分の中ではあって、自分の中でもそれが美学というか」
Minnesotah「俺はアナログも買うけど、CDJでUSBとかも使うし、新譜物はレコードで無いもの多いのでデータだったり、ケースバイケースですね。ただ、旧譜でレコードで出てたものは、レコードで買うようにしてますね」
――ではKANDYTOWNの動きはいかがでしょう?
MASATO「KANDYTOWNとしてのライヴは大きいイベントぐらいしかないんですけど、このミックスとメンバーのMUDのアルバム『Make U Dirty』に紐付いた形で、9月2日に原宿で〈“Land of 1000 Classics”&“Make U Dirty” W RELEASE PARTY〉をやるんで、それも楽しみにして欲しいですね」
Minnesotah「グループとしてのリリースはちょっと分からないけど、曲はみんなそれぞれ作り続けてるんで、ソロの動きだったりを期待して下さい」
取材・文 / 高木“JET”晋一郎(2017年8月)
"Land of 1000 Classics"&"Make U Dirty" W RELEASE PARTY
FREE LIVE
2017年9月2日(土)
東京 原宿 VACANT
出演: MASATO / Minnesotah / MUD / Neetz
開場 / 開演 17:00
無料

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