話題急上昇! 九州発のアイドル・グループ、LinQ躍進の秘密に迫る!

LinQ   2012/01/12掲載
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 2011年2月、九州発のアイドル・グループとして結成されたLinQ(リンク)。4月にはデビュー公演を開催、6月に1stシングル「ハジメマシテ」をリリースする。毎週末の劇場公演を中心とした活動を続け、地元福岡で着実にファンを増やすと同時に、耳の早いアイドル・ファンの間で、その楽曲の良さが密かに話題になっていた。11月には、タワーレコードのアイドル・レーベルT-Palette Recordsから初の全国流通となる2ndシングル「カロリーなんて」を発表、オリコンウィークリーチャート22位を記録。さらには2011年終盤の最重要イベントとなった<アイドル横丁祭>では20分のステージをノンストップで駆け抜け、大きなインパクトを残した。

 デビュー1年足らず、しかも福岡を拠点とするいわゆる“ローカル・アイドル”としては驚異的な速度でその存在感を増しているLinQ。このグループはいったい、どのようにして出来上がったのか、どのようにして、短期間でここまでの存在感を見せるグループに育て上げることが出来たのか。今回、楽曲製作を担当するeichi氏、振り付けとダンス・レッスンを担当するSO氏、運営を担当する小野純史氏、そして統括プロデューサーとMCレッスンを担当するTOMY氏に、本拠地である福岡天神でお話を伺った。






 まず、LinQと言えば、「ハジメマシテ」「きもち」「カロリーなんて」「チャイムが終われば」「さくら果実」などなど、クラブ・ミュージック、ダンス・ミュージックのエッセンスがちりばめられながらも、アイドル・ポップスとしての爽やかさを持つ楽曲群が特徴だ。その製作を担うeichi氏は、中島美嘉を発掘したプロデューサーとして知られるが、実はグループ・アイドルへの楽曲提供も経験している。
 eichi 「いわゆるアイドルに曲を提供したのは、まず、“Bi-Bus Music Club”の初期シングル<ねぇ…会いたい>ですね。僕は楽曲提供、アレンジはSHiNTAがしています(注:SHiNTA氏とは、eichi氏が信頼を寄せる福岡在住若手作家&アレンジャーで、eichi氏とのタッグでLinQの楽曲製作も行っている。代表曲<ハジメマシテ>もSHiNTA氏の作)。その次に、“フルーツ”というグループを手がけました。そのときは崎谷健次郎さん、DJ UTOさん、mcA.T.さんと遊んだ、という感じですね」
 “Bi-Bus Music Club”は、学研のアイドル誌『BOMB』が運営したサイト『Bibus』での投票によって選抜されたグループで、2007年10月結成。“フルーツ”は、日本テレビ系の深夜番組『歌スタ!!』から生まれた4人組アイドル・グループで、2008年に結成。元メンバーの竹内美宥は現在、AKB48のTEAM4に所属している。こうしたアイドル・グループへの関わりと比較して、そして、中島美嘉と比較しても、一番力を入れて関わっているのはLinQだ、とeichi氏は言い切る。
 eichi 「中島美嘉は、僕のことを“生みの親”と呼んでくれているみたいです。でも、そんなに肩の力を入れてないんですよね。僕がたまたま出会って、僕らが道を作ってあげたら勝手に歩いていつのまにか大きくなっていった、っていう感じです。肩の力を入れてやってるのは、むしろLinQのほうなんですよ。プロのスタッフが何人も、こんなにベッタリ関わってていいんですかね(笑)」



レッスン風景。振り付けを担当するSO氏のアドバイスに真剣に耳を傾けるメンバーたち。

 キャリアがありながら、LinQに力を入れて関わっているのは、振り付けとダンス・レッスンを担当するSO氏も同様だ。IMPERIAL JB'Sの一員としてプロ・ダンサーのキャリアを開始、現在はBE BOP CREWのリーダーとしても活動する彼は、20代後半から自身のスタジオでダンス指導も行なっている。今回の福岡取材では、LinQのダンス・レッスンの様子も拝見させてもらったのだが、SO氏が音楽を止め、メンバーに喝を入れる場面に遭遇した。厳しい言葉の中にも愛情が見える、まさしく力の入った指導であった。このことについて触れると、SO氏は自身の経験を語ってくれた。
 SO 「4人時代のDA PUMPの振り付けとツアー・ダンサーをしていたんです。福岡から東京まで通いでね(笑)。自分が関わっていた頃の彼らは、それぞれに忙しい中、めちゃくちゃ一生懸命に練習してくるんですよ。どんなに複雑な振り付けも、次の日までには仕上げてくる。他にも、モーニング娘。さんやTRFさんの練習も見てます。レベルの高い現場を見ているから、“ぬるいなこの子たち!”と思ってしまって(笑)。福岡には他にもいろんなグループがあるけど、この子たち(LinQメンバー)は、時間がないから他のグループを見ていない。それなのに、危機感を持てなくて、褒められて安心していると思うと、イラッとするかな」



現在は福岡市天神にあるベスト電器福岡本店11F“ベストホール”にて土日を中心に公演を開催中。

 プロの現場から、出来たばかりのアイドル・グループを指導する立場へ。人によっては、投げ出したくなる状況の変化かもしれない。それでも根気強く指導を続けるSO氏に、LinQに関わる楽しさを聞くと、彼は満面の笑顔を見せてくれた。
 SO 「この子達が、いい子達だからですね。僕は、この子達のファンなんです。この子達なりにはハードな生活をしていると思うんですよ。日ごろは学校や普段の生活があって、そこにプラスしてレッスンを毎日やっている。心の中では、褒めてやりたい! 褒めるとつけあがるから、言わないですけど(笑)。それに、ファンの方が振りつけを真似してくれると、すごくうれしい。振り付け冥利につきるというか……。女の子がこんなことしたらキュンとくるなと思って振り付けしている。手を挙げてターンした時におへそ見えたらイイぞ、スカートがひらっとしたらかわいいぞ、とか。自分の好きな子達に、好きな振り付けをさせて、それを近くで眺めてる……アイドルオタク的なところが、僕にもかなりあります(笑)」
 キャリアのある作曲家とダンス講師を擁するLinQ、しかし、その運営のフロントマンである小野氏は、特に芸能関係のキャリアがあるわけではない。だがしかし、ここまでの展開は、小野氏のバイタリティがなければありえなかっただろう。そして、バイタリティとスピード感に溢れる小野氏と、eichi氏やSO氏というクリエイターを引き合わせたのが、統括プロデューサー兼MC指導を担当するTOMY氏だ。彼はLinQの運営と製作において非常に重要な人物であり、同時にクラブ・ミュージック史の生き証人とでも言うべき経験を積んでいる。
 小野 「出身は兵庫で、福岡に来て3年目です。あるグループのスタッフとして偶然誘ってもらって、アイドルに関わりだしたのはそれからです。TOMYさんとは5、6年前からの知り合いで、自分でアイドル・グループを作ろうというときに、TOMYさんに協力してもらったんです。自分はキャリアもないですし、今の状況を偶然だ、ラッキーだ、と言われることもあるけど、予定通りだと思ってます。ただ、ものすごいスピードで進んでるのは確か。急坂を下る自転車みたいなもんで、“コケるわけにはいかん!”って必死ですよ。でもね、メンバーを集めて、デビュー公演までの1ヵ月で10曲覚えさせるなんて、みんな最初は無理だって言ったんですよ。笑われましたよ。それをどうにかやったから、LinQが形になった。早すぎるなんて言ってないで、次から次に仕掛けていかないと」
 SO 「TOMYさんがDJをされてたこともあって、クラブ繋がりで知り合いだったんです。そのTOMYさんから、ちょっとアイドルやってくれないかって召集されたら、eichiさんがいた。僕はeichiさんの別プロジェクト“Trick8f”(トリックエイト)の振り付けもやっているんで、こりゃ仕事がしやすいな、全然OKですって返事したんです」
 TOMY 「僕はDJだし、たくさんの音楽を聴いている自負はある。いろんな奴を見てきた、という自負もある。もともとはバンドをやっていたんだけど、音楽関係の仕事に就いて、1979年にアメリカに行ったんです。そんな中で、シュガーヒル・ギャングのスタジオに行ったら、謎の音楽をレコーディングしてる。“なんだこりゃ?”と思った。それがラップ黎明期だったんですわ。日本に帰ってきて、すぐに英語でラップをレコーディングしました。キャリアなら一番長いかもしれない。でもね、前に出すぎないでやってます。いろんなスタッフの意見がぶつかることもある。それぞれから意見を聞いて、自分から言えば丸く収まる。そもそも、eichiもSOも自分の知り合いで、いろいろ話せる仲なんですよ」
 運営・制作陣の調整役、統括としての立場と同時に、ラジオDJの経験も長いTOMY氏は、LinQメンバーのMCも指導している。また、日々ダンスや歌唱レッスンに明け暮れ、小野氏のスピード感に必死についていこうとするメンバー達を、TOMY氏はさまざまな形でサポートしているようだ。
 TOMY 「メンバーに“これこれこう言いなさい”と指示することは簡単じゃないですか。でも、それではすぐに返せないし、常に台本が必要になる。長い目で見たら、自分の頭で考えられるようにならないと。いつも、物の見方、というものを考えなさいと言っている。押し付けられたキャラクターを演じていたら、普通の子はつぶれてしまいますよ。個性を育てたい。だから、ある程度好き勝手にやらせてる。たまにホームランを打てるというよりも、常に二塁打を打てるように育てたい。LinQのゆるさは俺が育てているんです(笑)」






 個性豊かなLinQ運営・制作陣。彼らの作り出すアイドル・グループLinQのメンバーも、12歳から25歳という多様な年齢層と、世間のあらゆるタイプの女の子を集めてきたような、個性豊かなキャラクターが印象的だ。このメンバー選考とその基準について、TOMY氏と小野氏はこのように語った。
 TOMY 「メンバーを選ぶ時に、ルックスだけなら(坂井)朝香級に可愛い子もたくさんいました。でも、可愛い子をそろえてデビューさせても面白くないでしょ。それに、すぐにデビューするから根性のありそうなのを選んだ。例えば少女時代さんみたいに、バシッとそろえる方向性とは真逆です。最初は印象が弱くても、化ける子がいますよ。(天野)なつなんかそうですね」
 小野 「最近、東京でも福岡でも、いろいろなグループを見て、ああ、みんなしっかりと選ばれて、育てられているな、というのは痛感しました。いろいろな仕掛けを作ったり、学ぶべきところがたくさんあります。ただ、LinQの魅力はそこではないだろう、と思ってます。どのグループも、なんというか危うさがないです。うちは選び方からして違いますから」



メンバーは高校生以下のメンバーからなるLinQ Qty(リンク キューティー ※写真上)、現在20歳以上のメンバーからなるLinQ Lady(リンク レディー ※写真下)の2つにグループ分けされている。

 ルックスやスキルのクオリティだけではなく、キャラクターや個性にも重点を置いたLinQのメンバー選考。このグループを育成するのは、これまでいわゆるアーティストを多く手がけてきたSO氏、eichi氏にとって、新たな挑戦になったようだ。
 SO 「今LinQのダンスについて褒めてもらってるのは、変わった目線の振り付けとか、彼女達の一生懸命さですよね。<横丁祭>で、東京女子流さんとかぱすぽ☆さんを見ましたが、基礎がしっかりした見やすいダンスじゃないですか。うちの子達は全然基礎がない子が多くて……そこは鍛えてあげたい。ただ、ジャズ・ダンスみたいに綺麗に揃えたダンスは、うちの子達にはさせたくない。例えば、手を伸ばした時に、手のひらが上になるか、下になるか、それは個性だ、と。これだけ人数が多いんで、その人の個性や特徴が出たほうがいい。揃えられるけど、やらない、っていうところまでいくのが理想です」
 eichi 「LinQは、選び方がアーティスト目線ではない、いわば“ど素人畑”です。だから面白いのかもしれないですよね。この子達は、本当にいい子たちなんで、一生懸命やる。彼女達の素朴さに、自分たちのエッセンスが入り、進化していく。“素材の味を味わえ!”という感じですね(笑)。僕は、例えばHKT48さんも意識していますよ。あちらは、14〜5歳のコたちが、すごいお金もかけて、これまでAKBさんが築いたものを受け継いでやってる。いいものが出来るに決まってるんです。いわば、空調が入ってちゃんと管理されたビニールハウス。うちはもう、水しか流れてない畑ですよ。でも、無農薬野菜ってあるじゃないですか。いっぺんには流通できない、数は少ない、だけど、ほんとに好きになったら、ずっと使ってくれる。そういうお得意さんを増やしていきたいんです」
 最後にeichi氏は「アイドルだからアイドルらしく、じゃなく、もっと裏切って、裏切り倒していきたい。まだまだ次がある、まだまだこんなもんじゃない、というのを見せていきたい」と語ってくれた。2月29日の3rdシングル「さくら果実・Sakura物語」の発売、そして4月17日に予定されているZEPP Fukuokaでの結成一周年記念のワンマン・ライヴと、2012年を疾走するLinQ。素直で個性豊かに育てられた彼女達に、さらに個性もアクも強い運営・製作陣がどんなエッセンスを振り掛けるのか。その深い味わいを楽しむのが、今から楽しみである。LinQの真価が問われるのはこれからだ。
撮影・取材・文/鈴木妄想
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