坂本真綾のニュー・シングル
「マジックナンバー」(11月11日発売)は、ガーリーでポップなムードに溢れたギター・ポップ・チューン。「ギアを入れ直して、これからもがんばります! と思わせてくれた」とのコメントからもわかるとおり、彼女にとっても大きな意味を持つ楽曲となったようだ。30歳の誕生日である来年3月31日には、初の武道館公演も決定。CDデビュー15周年を控えて、坂本真綾はいま、新しい季節へと突き進もうとしている。キラキラとした光とともに。
――新曲「マジックナンバー」、これはいい曲ですね! 坂本真綾(以下、同)「お、そうですか。本心で?」
――本心です(笑)。個人的にギター・ポップと呼ばれる音楽が大好きなんですが、そういう聴き方をしても、とても魅力的な楽曲だと思いました。
「嬉しいです。アウトロのギター・ソロがホントにカッコよくて。ギターが好きな人が聴いても、きっと“いいな”って思ってくれるんじゃないかなって」
――盛り上がれますし。
「私自身、次はアップ・テンポの曲がいいなって思ってたんです、なんとなく。タイアップ(アニメ『こばと。』オープニング・テーマ)で求められたのも同じ方向の曲だったので、そこは上手く重なったというか。ただ、“かわいくてポップ”っていうオーダーもあったので、いろんな方向を探りつつ」
――しかも瑞々しいイメージですよね。
「作曲はアルバム(『かぜよみ』)にも参加してくれた北川さんなんですけど、こんなにフレッシュでガーリーな曲を書いてくれたことが意外でもあり、嬉しくもあって。20代最後のシングルなんて言ってますけど、大人だからって大人ぶらなくてもいい、子供みたいな無邪気なところを持ち続けてもいいんだって思えたというか。レコーディングで歌うときも、とにかくまとめようとしないで、勢いやエネルギーだけを抽出することを意識してたんです。いっぱいいっぱいで、息が上がってるくらいの方がいいのかもしれないなって」
――歌詞にもそういう心境がはっきり出てると思います。“本当にやりたいことをやるんだ”という意思が強く感じられて。
「よく思うんですけど、大人になるってことは、“やりたいこと”と“やらなくちゃいけないこと”のどちらを優先するか? ということでもあって。そんなことを繰り返していると、“そもそも、何がやりたかったんだっけ?”って考えたりすることもあるんですよね」
――そうですね。とくに坂本さんは、幼いときからエンタテインメントに関わってるので。
「でも、ホントにやりたいことがあって、“私はこうしたいんだ”っていうのが明確であれば――それはワガママということではなくて――人を動かす、繋いでいくエネルギーになるんですよ。うまくいくコツって実は、そこに基づいて行動してるかどうか、ということだと思うんです。それはホントに難しいことなんだけど、いつも自分の体の声を聞きながら進んでいきたい。そういう思いも入ってますね」
――カップリングの「Private Sky」はバンド・スタイル(中村タイチ/g、玉田豊夢/ds、山口寛雄/b)のロック・チューン。やはり、テンションが上がる曲を求めるのかも。
「ライヴ向きの曲をやりたい、という意識はあったかもしれないですね。今年の初めにやったツアーがすごく楽しくて、早く次のライヴをやりたいっていう気持ちになってるので」
――今回のシングルにもライヴ音源(「カザミドリ」「ポケットを空にして」)が入ってますね。
「ライヴにはずっと苦手意識があって、1月のツアーも“これが楽しくなければ、もう一生やらなくていいや”って思ってたんです。でも、リハの段階からすごく手ごたえがあって……。何て言うか、“いま、私にできることはこれだ。それをしっかりやればいいじゃないか”って思えるようになったんですよね。それが完璧かどうかなんて、誰も気にしてない。自分がやれることをやればいいんだって」
――3月には武道館ライヴもあるし、また新しい展開になりそうですね。
「30歳の誕生日なんで、お祭りってことで(笑)。そんなんでいいんだろうか?とも思うんだけど、私も楽しもうと思ってます。すごく贅沢なことですからね、ホントに」
取材・文/森 朋之(2009年10月)