名門インパルス・レーベルの歴史と伝統に敬意を表した移籍第一弾アルバムが完成!

ニコラ・コンテ   2011/05/27掲載
はてなブックマークに追加
 ミュージシャン、DJ、プロデューサーというマルチな視点で新世代のヨーロッパ・ジャズ・シーンをリードするニコラ・コンテが、ジャズの名門インパルス・レーベルへの移籍第一弾となる新作『ラヴ&レヴォリューション』を発表した。気心の知れたミュージシャンたちとの、リラックスした中にも緊張感あふれる演奏が楽しめるのはもちろん、過去10年にわたる自身の創作活動を総括するかのような、濃密な内容にも興味をそそられる。


――伝統あるジャズ・レーベル、インパルスへの移籍第一弾となる新作のコンセプトは?
ニコラ・コンテ(以下同)「新作はもともと、インパルスから発表されたあらゆる種類の音楽にインスパイアされたアルバムとして作ったものだったんだ。前のアルバムよりもオープンな雰囲気を持たせるために、自分の音楽の範囲を拡張して、ソウルなどの(ジャズ以外の)要素も盛り込んだけれど、そうした動きは60代後半のインパルスでも盛んだった。もちろん、インパルス以外のアーティストでも、自分にとって重要な人たちに捧げる曲も入れたよ。たとえばマックス・ローチアビー・リンカーンに捧げた〈フリーダム・デイ〉や〈ブラック・スピリッツ〉、マル・ウォルドロンに捧げた〈テンプル・オブ・ファー・イースト〉、60年代のジャズはアフロの影響も受けていたということで、ジャッキー・マクリーンの音楽を取り入れた〈ガーナ〉なんかがそうだね。あと、インパルス絡みで言えば、ある時期の作品はサイケデリックなサウンドやフラワー・パワーの影響を強く受けていたから、新作でもサイケデリックな要素を意識したし、僕の大好きなギタリストのひとりであるガボール・ザボを思わせるサウンドも取り入れたんだ。もちろん、僕はコルトレーンファラオ・サンダースアーチー・シェップといった人たちにも影響を受けている。音楽の“行間を読んで”もらえれば、曲のアレンジやサウンド作りにそういった要素を盛り込んであるのがわかると思うよ」
――「バントゥ」では、ひさしぶりに打ち込みのリズムを取り入れていますね。
「前作には、DJとしての僕の側面が欠けていたという意識があったから、スピリチュアルなサウンドを保ちながらエレクトロニック・ミュージックの世界でも実験しようと思ったんだ。じつを言うと、ほかにもサンプリングを使った曲があって、それは残念ながら、元ネタの使用許可が下りなくてアルバムに入れられなかったけれど、インパルスというのは、つねにその時代のサウンドを取り入れてきたレーベルでもあるから、打ち込みのドラム・パターンや60〜70年代の珍しいジャズ・レコードから取ったサンプルと、生演奏の楽器やヴォーカルを組み合わせる実験も重要だと思っているし、僕もそれをサイド・プロジェクトか何かで続けていくつもりなんだ」


――インドのシタールやアラブのウードといった、非ヨーロッパ世界の民族楽器も取り入れていますね。
「僕自身、そういった音楽も大好きだし、60〜70年代のインパルスについて言えば、民族音楽の要素を取り入れる実験が盛んに行なわれていたということも重要なんだ。今後はこの方向性ももっと探っていくつもりだよ。もちろん、表面的なサウンドだけじゃなく、こうした音楽のスピリチュアルな面にも目を向けているのは、音楽を聴いてもらえばわかると思う」
――当時の実験的なジャズには、アヴァンギャルドなものも少なくありませんでしたが、あなたの音楽はあくまでも、グルーヴィかつソウルフルな親しみやすいものですよね。
「アヴァンギャルドかグルーヴィ&ソウルフルかというのは、同じものの違う側面だと思う。ただ、僕の役目は音楽のメッセージをより多くの人たちに伝えることだと思っているから、売れ線に走ったりおバカな(笑)ことをやったりせずに、親しみやすいものでありながら、深い部分への注意も促せるような音楽作りを心がけているんだ」
取材・文/坂本 信(2011年5月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 角野隼斗 イメージ・キャラクターを務める「ベスト・クラシック100極」のコンピレーション・アルバムを選曲・監修[インタビュー] 色々な十字架 話題の“90年代ヴィジュアル系リヴァイヴァル”バンド 待望のセカンド・アルバムをリリース
[インタビュー] アシックスジャパンによるショートドラマ 主題歌は注目のSSW、友成空[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤
[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ
[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも
[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”
[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015