“冬の匂いから蘇る記憶”をテーマにした、Salley、極上のウィンター・ソングが完成!

Salley(うらら / 上口浩平)   2014/11/07掲載
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 オーガニックなギター・サウンド、素朴な手触りと瑞々しいポップ・センスを備えたメロディ、切なくも愛らしい歌詞の世界が溶け合うポップ・ソングによって、昨年のデビュー以来、確実に注目を集めているSalley。ニュー・シングル「冬が来る」は、洗練されたサウンドメイクと“冬の匂いから蘇る記憶”をテーマにした歌がひとつになったウィンター・ソング。「自分たちがいいと思うことを怖がらずに出していきたい」(上口浩平)という彼らにとっても、大きな意味を持つ作品になったようだ。
通常盤 CD VICL-36952 / 初回限定盤 CD + DVD VIZL-710
――ニュー・シングル「冬が来る」、Salleyの個性が存分に発揮された楽曲だと思います。まず、シックな手触りのサウンドが印象的でした。
上口 「音的なところで言うと……デビューのタイミングでは、ゴージャスというか、レンジが広いサウンドを意識してたところがあるんですよね。今回のシングルはそういう感じとはちょっと違っていて、ミックスする段階からちょっと抑える感じだったんです」
――確かに派手なサウンドではないですよね。しっかり抑制が効いてるというか
上口 「背伸びするんじゃなくて、自分たちが“良い音だな”と思えるものを作ろうと思ってたんですよね。これは1stアルバム(『フューシャ』)のタイミングのときも言ってたんですけど、“自分たちがやりたいこと、これはいいなと思えるものを怖がらず出していかないとダメだよね”っていう話をしていて。〈冬が来る〉を作ったのはだいぶ前なんですけど、衣装やPVを含めて、現時点で自分たちがやりたいことをしっかり形にするというアプローチなんですよ」
うらら 「デビューしてからは、それまでやったことがないことがいっぱいあったんですよね。ずっとバタバタしていたし、そのうちに上口くんと話すよりもスタッフと話すことが増えてきて……。で、ちょうどアルバムをリリースするときに“これじゃイカン!”と思ったんですよね。初心に返るというか、ふたりでしっかり話しながら進めていこうって」
――それは音楽活動全体において?
うらら 「そうです。ライヴのMCとか衣装もそうだし」
上口 「デビューしてからは周りの人たちのサポートのおかげでやってこれたと思うし、プロフェッショナルな方々と関わることで、すごく刺激も受けたんですよ。ただ、誤解を恐れずに言うと、いままでの活動を振りかえってみたときに“もっと自分たちが入っていける余地があったな”と感じたんですよね」
うらら 「そこで決意を新たにしたというか。その第一歩が、アルバムをリリースした後のワンマン・ライヴだったんですよね。セットリストやMCを含めて、ここ(上口、うらら)で話しながら進めさせてもらったんですけど、初日が終わったときにスタッフのみなさんから“良かった”と言ってもらえて。そのときに“やっぱり、これで間違ってないんだ”と思えたんですよ。〈冬が来る〉はそういうことがあった後のシングルだから……」
――Salleyにとっても大きなポイントになるかもしれないですね。最初から“冬”をテーマにした制作された楽曲なんですか?
うらら 「いや、違うんですよ。すごく覚えてるんですけど、上口くんからデモをもらって、“まずは歌ってみよう”ってことになったときに、(うららのヴォーカルに対して)“そういう感じじゃないんだけどね……”って言われて(笑)。もっと派手な感じだったらしんですよね、最初のイメージは」
上口 「うららが〈冬が来る〉っていうタイトルを付けてきたことに、まず驚いたんですよ。自分としては、もうちょっと熱い感じの温度感で作った曲だったので、すごくギャップがあって」
――確かにサウンドには高揚感がありますからね。
うらら 「私は何の迷いもなく“冬の歌だな”と思ったんですけどね。何だろう? 気が合わなかったのかな(笑)?」
――上口さんが作曲、うららさんが作詞を担当するというスタイルのおもしろさですよね、それは。
うらら 「そうですね。上口くんからデモを受け取って、私が歌詞を書くっていう。そこはもう、いい意味でお互いのセンスをぶつけ合う感じなんですよね。“こんなイメージにしよう”とか、曲のコンセプトについての話もほとんどしないし」
上口 「〈冬が来る〉も“そう来たか!”っていう感じでした(笑)。結果的に良い曲になったと思いますけどね」
――冬の始まりの空気が伝わってくるような歌詞もすごく印象的でした。
うらら 「(秋から冬になる)季節の変わり目の雰囲気をすごく覚えてるんですよね。朝、家を出たときの匂いだったり、“あ、冬が来るな”っていう感じだったり……。匂いって、すごく記憶に結びついてるじゃないですか。いまは東京にいますけど、冬の匂いがすると、実家(大阪)にいたときのことを思い出すんですよ。それを切ない歌にできないかなと思って」
――うららさん自身のノスタルジーも反映されてるんですね。
うらら 「毎日、昔を思い出して悔んだり悲しんでるわけではなくて(笑)、ちゃんといまを生きてるんですけどね(笑)。ただ、ふとしたきっかけでバーッとフラッシュバックすることがあるので。でも、私は“青春病”かもしれないです。中学生、高校生の頃のことを思い出して、キュンとしたがるというか」
上口 「それが青春病なんだ(笑)」
――「終わりがあるなんて知らないまま」「どこまでも走った」というフレーズは、まさに青春そのものだし。
うらら 「そう、そこは青春っぽさを思い切り出そうと思って、わざとそういう言葉にしたんですよ」
――きっと、正しい青春時代を送ったんでしょうね。
うらら 「あ、そうかもしれないです。体育祭とか文化祭のときも、超はりきってましたから。“みんな、やろうぜ!”みたいな」
上口 「ハハハハハ」
うらら 「私、どう思われてたんだろう? “あいつ、張り切っててめんどくせえな”って思われてたかも」
――ちなみに上口さんはどんな青春だったんですか?
上口 「え、僕ですか? 中学のときはリーダーっぽいというか、応援団の団長とかやってたんですよ。でも、高校になってバンドを始めてから、学校の行事が面倒になって」
うらら 「中学生のときの上口くんを見てみたいですね。張り切ってるところがぜんぜん想像できない(笑)」
――カップリングの「冬が咲く」はかなりロマンティックなラヴ・ソング。
うらら 「最初はまったく違う歌詞が乗ってたんですけど、今回のシングルを“冬シングル”にしようということになって、クリスマスも近いし、思い切りラヴ・ソングにしてみようと。補作詞の方(jam)に入ってもらってるんですけど、自分では振り切れない部分を補ってもらったんですよね。“ここはもっと感情を出してもいいんじゃない?”みたいな話をしながら進めていったんですけど――女子の気持ちを想像しながら(笑)――ここまでラヴ・ソングらしいラヴ・ソングはなかったと思いますね。最初、歌うのがちょっと恥ずかしいくらいだったので」
上口 「補作詞の方が入るのって、どうなんだろうな?って思ってたんですけど、出来上がった歌詞を見ると“あ、ぜんぜんアリだな”って。スッと耳に入ってくる歌詞が多いし、それはアレンジにも影響してるんですよ。“ここはうららが目の前で歌ってる感じがするから、ハモリは入れないほうがいい”とか」
うらら 「あと、“女の子がカラオケで歌えるような曲”っていうイメージもあって。上口くんの作る曲は難しいというか、メロディが細かく動いたりするので、カラオケなんかでは歌いづらいと思うんですよ。でも、〈冬が咲く〉は(一般の人にも)気持ちよく歌ってもらえるんじゃないかなって。“彼氏の前で歌うために、練習しよう”って思ってもらえたら嬉しいです(笑)」
上口 「うん、作ったときも“J−POPっぽいな”と思ったので」
――ふたりの感性がさらに濃く反映されたシングルになりましたね。いまも制作は続いてるんですか?
うらら 「はい。曲作りに関してはぜんぜんブレてないと思うし、そこがしっかりしていれば大丈夫かなって。芯がブレないように、新しいことにもどんどん挑戦していきたいと思います」
取材・文 / 森 朋之(2014年10月)
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