特集 クラシカル・クロスオーヴァー 〜クラシックを基調にした、気軽に楽しめる音楽の最新作〜

2008/08/06掲載
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 “クラシック音楽を身近なものに”という働きかけから生まれ、今では一つのジャンルとしても成り立っている“クラシカル・クロスオーヴァー”。第一線で活躍するアーティストから新世代まで、さまざまな役者が揃いさまざまな楽しみ方ができるこのシーンを改めて振り返りつつ、最新の注目作を紹介しよう。
 



 8月3日に東京の池上本門寺で、“クラシカル・クロスオーバー・フェス”(http://www.capital-village.co.jp/concert/ccof.html)というイベントが開催された。その日はイベントの1日目として、AUN(和太鼓)、カノン with セレブ弦楽四重奏団(vo、弦楽四重奏)、クラスタシア(vn、vc)、セレブ弦楽四重奏団(弦楽四重奏)、スネーク(vn、vc)、ポンすけ(p、ds)、Rainbow Septet(弦楽四重奏、p、b、ds)といったアーティストたちが出演。さらに8月30日にも、上松美香(アルパ)、カノン(vo)、solamimi(弦楽四重奏)、FUTABA(p)、minimums(マリンバ、perc)といった顔ぶれで2日目が開催される。“クラシカル・クロスオーヴァー”という言葉が日本で聞かれるようになってから数年が経ち、日本では葉加瀬太郎加古隆といったベテランたちが牽引してきたシーンではあるが、このようなイベントが行なわれるようになったのは、ある意味彼らの築いてきたことが次世代のアーティストにも広がっている結果ともいえる。

 もともと90年代に英米で起こったこのジャンルが日本で広まったのは、2000年リリースの『feel』や『イマージュ』といったコンピレーション盤のブームが大きな要因となっている。そのアルバムは後にシリーズ化され、『イマージュ』に関しては今ではイベントとしても定着。格式のあるクラシックを基調としつつも気軽に聴けるという点と、“癒し”という時流に合ったテーマがヒットの最大の要因となった。サラ・ブライトマンヘイリーキャサリン・ジェンキンスボンドといった英米のアーティストの楽曲を中心に選曲された2006年の『クラシカル・クロスオーバー・ベスト』もこのシーンを振り返るには押えておきたい一枚だ。



 そして時は流れていくうちに、今では“癒し”に限らず、さまざまな楽しみ方ができるようになった。その一例として挙げられるのが、先のフェスにも出演する連弾の女性ユニット、FUTABAだ。彼女たちの特長は親しみやすいオリジナル曲や耳なじみのあるカヴァー曲を一台、ないし二台のピアノを使い、時にはダンスで魅せたりと、アクロバティックな連弾で聴き手を楽しませるところだ。2月にリリースされたアルバム『FUTABA piano songs』は「桜色舞うころ」「卒業写真」「ハナミズキ」といったポップスの名曲から「ジブリ・メドレー」なども収録されている。ピアノのシーンの中で、今一番ポピュラリティのあるユニットとして注目したい。






 “のだめカンタービレ”など影響で注目を浴びていたピアノだけでなく、今のクラシカル・クロスオーヴァーのシーンで注目したいのは、多種多様なアーティストが顔を揃えているヴァイオリニストやチェリストの演奏者たちだ。

 中島美嘉浜崎あゆみらのストリングス・アレンジなども手掛けていることで有名なヴァイオリニストのNAOTOは、7月にシングル「expectation」を発表。この曲はフジテレビ系列「新報道プレミアA」のテーマ・ソングとして作られた曲。また、チェリストの柏木広樹も2年ぶりとなるアルバム『pictures』を7月に発表。こちらには鬼怒無月クリヤマコト功刀丈弘らさまざまなアーティストが参加し、話題となっている。



 そして9月10日には葉加瀬太郎の新作『Classical Tuning』も登場。本作はロンドンを拠点として“今、自身が考えるクラシック”というテーマで作られた作品だ。ちなみに、昨年リリースされた『SONGS』は、布袋寅泰武部聡志鳥山雄司羽毛田丈史柏木広樹野崎良太、啼鵬というプロデューサーたちとコラボレートしたアルバム。布袋寅泰プロデュースによる「情熱大陸2007」はまさに夢の共演と言っていいだろう。

 他にもアルパ奏者・上松美香のアルバム『Cavatina』(7月リリース)、ヴァイオリン奏者の宮本笑里『tears』(9月3日リリース)など……注目作が多い時期でもある。まだまだ面白くなってくるシーンではあるが、単純に一つの音楽としてじっくり聴いても奥深く楽しめるもの。夏休みにはゆっくりと流れる時間の中で、心地よいクラシカルな音楽を聴くのも有意義かもしれません。
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