平原綾香   2009/08/11掲載
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【平原綾香 Special Interview】 Single「ミオ・アモーレ」Interview
 今年の5月にシングル「新世界」をリリースし、“クラシック・プロジェクト”をスタートさせた平原綾香。そんな彼女が、9月2日に予定されているアルバムに先駆けて、8月26日にシングル「ミオ・アモーレ」を発表! 本作は、カルディッロ作のナポリ民謡「カタリ・カタリ」とプッチーニの歌劇「『トゥーランドット』より〈誰も寝てはならぬ〉」という2つの楽曲をモチーフにし、平原自身が詞を書いた渾身のラブ・ソング。そしてカップリングには、スメタナの「Moldau」が収録。アルバムの中から2曲の先行リリースとなる本作について話を訊いた。


「詞を書いていた一週間くらいは、濃密な時間でした」


――前のシングルはドヴォルザークの「新世界より」をモチーフにした曲でした。今回の「ミオ・アモーレ」は、カルディッロの「カタリ・カタリ」と、プッチーニの歌劇『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」と、2曲を組み合わせた曲ですね。まずは、『トゥーランドット』の物語について、どのように感じましたか?
 「トゥーランドットはお姫様の名前で。姫は“氷の心”と言われていて、求婚されても男性に3つの謎かけをして、それに答えられなかったら処刑してしまうんですよね。それで、カラフという王子が現れて、お姫様もどんどんそのカラフに惹かれていって。でも、姫は自分の立ち場を守ろうとするんですよ。女性なら結婚するときも迷いがあるだろうし、いまの女性もそういう気持ちを持ってるんじゃないかなと思いましたね。男性とは違って、名前も変わって嫁ぐわけですから。私もお姫様の気持ちに共感しながら歌詞を書いていました」
――物語自体は、何で観たんですか?
 「このオペラは、DVDで観ました。それで研究してたんですけど、もうボロ泣きでした。オペラでこんなに泣けるとは思わなかったです。姫はかたくなに拒むんですけど、いろいろなことがあって最後は姫の氷のような心が溶けていって……。すごくドラマティックなお話なんですよ」
――そのドラマティックさは「ミオ・アモーレ」という曲にも反映されてますね。“愛を伝えたい”という気持ちに、ラブ・ソング特有の大きな力を感じます。今回、詞を考える時間は長かったですか?
 「一週間くらいかな。その一週間は濃密な時間でしたね。〈新世界〉のときほどではなかったですけど、それでも時間はかかった方です」
――以前の取材した時に、「ラブ・ソングを書くのは苦手」って言ってなかったですか?
 「言ってましたね(笑)。最初は抵抗があったんですけど、今ではラブ・ソングしか書けないというか、好きになりましたね。ラブ・ソングって“あなたしかいないの”というストレートなイメージしか持ってなかったんですけど、このオペラを観て“好き、好き”というだけでなく、自然な流れで惹かれあっていくラブ・ソングってあるんだと思い始めて。それから好きになりました」
――メロディで2つの楽曲を合わせたのは、どういった意図で?
 「プロデューサーの新田和長さんが提案して現実化したものなんですけど、“実際はどうなるのかな”とイメージが湧かなかったんです。でも、実際に合わせてみると、メッセージが伝わるスピード感があると思いました。カタリとトゥーランドットって女性の名前がタイトルのものが一緒になったのも偶然でしたけど、必然なのかなとも思いました」
――サビの前の声が重なるところは、盛り上がる前のいいアクセントになってますね。
 「多重録音で、15人の私が歌ってます。ファルセットと、地声と、上げぎみのファルセットと……。こういうのも初めてでしたね。結婚式で歌うなら、主役以外の人たちが祝福しているようなイメージもありますね」
――そして、最後のフレーズはクライマックスで、すごい歌い上げてますね。ライヴでも大きな見せ場になりそうな。
 「そうですね。ライヴでは頑張らないと(笑)。原曲の場合も、一番最後でテノール歌手の方が必死な顔で歌うんですよね。“ビンチェ〜ロ〜♪”って。“(声が)よく出た!”とかいって、お客さんも曲が終わってないのに拍手しちゃうような感じ(笑)」
――アレンジはどうでした?
 「プロデューサーが弦の一つ一つまでこだわって作ったし、私も歌にこだわって作ったし。今までは細かいところを気にしちゃって歌うという感じでしたけど、この曲は勢いがすごく大切ですよね。レコーディングでもマイクが“ビビビ”ってなるくらい歌いましたね。“声、大きいね”って言われたんですけど、今までそんなことなかったんですよ。“もうちょっと大きい声で歌って”って言われることはありましたけど。今までは“ワッ”と歌っちゃいけないと思ってたんです。だからこそ、〈Jupiter〉のような曲が歌えたわけなんですけどね」
――タイトルも曲の勢いをそのままにストレートですね。
 「“私の愛する人”ということで“ミオ・アモーレ”。プッチーニとカルディッロという人の出身地がイタリアなので、イタリア語にしようと」





「後戻りができない人生を、
自分はどのように流れていけばいいのか……」


――カップリング曲「Moldau」は、スメタナの曲『わが祖国』より「モルダウ」をモチーフにしてますが、サウンドはピアノ主体ですね。淋しげな曲ですけど、すごく美しい世界観です。
 「最初、デモで録って、ピアノ一本がいいねってことになったんです。ピアノで水が流れるようなイメージにしたいねって」
――こちらの歌詞はどうでした?
 「〈Moldau〉の歌詞は書きやすかったです。作曲したスメタナは流れていく川に、何を思って書いたのかって考えて……。まずは、“耳を澄ませば”っていう言葉が出てきたんです。作者のことをもっと調べていったら、スメタナは晩年、耳が聴こえなかったんです。だから、手のぬくもりみたいなものを表現できないかなって。あと、川って、人生とか時の流れによく譬えられてますけど、自分で歌詞を書いていて改めて共感して。そのなかで、自分はどのように流れていけばいいのかってことも考えて」
――今回、9/2リリースのアルバムのためにたくさんの詞を書いてますが、慣れました?
 「慣れたかな(笑)。でも、大変なことを乗り越えると、不思議と次も出来るって感じますよね。実際、〈ミオ・アモーレ〉は大変だったけど、〈Moldau〉はすぐ書けたし。次のアルバムのためにかなり歌詞を書いてるんですけど、収録曲で、〈Jupiter〉と〈ノクターン〉以外は私が歌詞を書いてるんです。ここまでたくさんの歌詞を短期間で書くことって、今までなかったんですよ。でも、頑張って書いたので、アルバムはいいものになると思います!」
――アルバムは“乞うご期待”ということですね。この取材の時点では、まだすべての曲を聴いてませんが、何か超大作の予感がします!
※8/25にアルバム『my Classics!』のInterviewを掲載します。




取材・文/清水 隆(2009年7月)
撮影/関 暁
ヘアメイク/Hiromi
撮影協力/THE LEGIAN TOKYO
http://www.legian.jp/



アルバム『my Classics!』楽曲解説


 9月2日にリリースされる平原綾香のアルバム『my Classics!』は、「Jupiter」や「ノクターン」など彼女の代表曲とともに、新たに制作された楽曲も収録。さまざまなクラシックの名曲がフィーチャーされた作品の数々を、ここで解説していきます。


※9月2日発売(MUCD-1216 税込3,045円)


※ 各トラックの試聴と楽曲コメントを毎週3曲ずつ更新!
/カッコ内はモチーフにされたオリジナル曲
01
pavane 〜亡き王女のためのパヴァーヌ
  9月1日UP!
(モーリス・ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ)
ラヴェルの代表作の一つ、「亡き王女のためのパヴァーヌ」をモチーフにしたナンバー。原曲の持つ繊細な美しさ、狂おしいまでの切なさをしっかり感じさせながら、2009年のポップスとしても十分な魅力を持った名曲。(森 朋之)
02
ミオ・アモーレ
 
(サルヴァト―レ・カルディッロ/カタリ・カタリ)
(ジャコモ・プッチーニ/歌劇『トゥーランドット』より 「誰も寝てはならぬ」)
歌劇『トゥーランドット』とイタリアのナポリ民謡「カタリ・カタリ」を組み合わせたメロディに乗って、永久に続く真実の愛を高らかに歌う楽曲。“愛を伝えたい”という気持ちが、強く、そして深く伝わる一曲。(清水 隆)
03
カンパニュラの恋
 
(フレデリック・ショパン/夜想曲 (第20番)「遺作」)
ショパンの「夜想曲(第20番)『遺作』」の旋律のなかで、いつまでも胸のなかにある真実の愛を歌い上げる。しっかりと抑制を効かせながらも、哀切なエモーションをじんわりと響かせるヴォーカルが素晴らしい。(森 朋之)
04
ロミオとジュリエット
  9月1日UP!
(セルゲイ・プロコフィエフ/『ロメオとジュリエット』組曲より 「モンターギュー家とキャピュレット家」)
プロコフィエフの「モンターギュー家とキャピュレット家」にハード・ロック調のサウンドをフィーチャーした異色作。激しく歪んだギター、強い感情をダイレクトに伝えるヴォーカルが描き出す、鋭くも切ない世界観に圧倒される。(森 朋之)
05
シェヘラザード
 
(ニコライ・リムスキー=コルサコフ/『シェヘラザ―ド』より 「若い王子と王女」)
コルサコフの「シェヘラザード」より「若い王子と王女」をフィーチャーした楽曲。『千夜一夜物語』の世界観を背景に、深く、豊かな愛の物語がゆったりと描かれる。芳醇なロマンティシズムを感じさせるサウンドも印象的。(森 朋之)
06
Moldau
 
(ベドルジハ・スメタナ/『わが祖国』より モルダウ)
オリジナルはスメタナの『わが祖国』より「モルダウ」。ピアノ主体のアレンジで、主人公のインナーワールドを表現。無常にも過ぎていく時の流れ。その中で失ってしまったものを愛しむ主人公の感情を描き出している。(清水 隆)
07
仮面舞踏会
 
(アラム・ハチャトゥリアン/『仮面舞踏会』組曲より ワルツ)
どこかエキゾチックな雰囲気を持つアレンジメント、妖しくも美しい世界を広げていくメロディが一つになったワルツ曲。“素顔と仮面、本性と偽り”をモチーフにした歌詞も、原曲の本質をていねいに掬い上げている。(森 朋之)
08
AVE MARIA
 
(ジュリオ・カッチーニ/アヴェ・マリア)
カッチーニの「アヴェ・マリア」のメロディをフィーチャーし、神聖なムードを醸し出すアレンジが施された楽曲。歌詞には平原自身の音楽に対する情熱が込められ、言葉の一つ一つがリスナーの心に厳かに浸透する一曲。(清水 隆)
09
新世界
 
(アントニン・ドヴォルザーク/交響曲『新世界より』第2楽章)
誰もが聴きなじみのあるドヴォルザークの交響曲「新世界より」のメロディを用い、未来に向かう心の素晴らしさを力強く歌う一曲。平原自身も節目を迎え、この曲で新たな指針を示した。(清水 隆)
10
シチリアーナ
 
(オットリーノ・レスピーギ/シチリアーナ)
2007年発売の5thアルバム『そら』に収録された、レスピーギの「シチリアーナ」がモチーフとなった楽曲。深い悲哀の心象風景を綴った言葉が、ストリングス中心の重厚なサウンドとともに止とめどなく聴き手の心に迫る。(清水 隆)
11
ノクターン
  9月1日UP!
(フレデリック・ショパン/夜想曲 (第20番)「遺作」)
「カンパニュラの恋」と同じく、ショパンの「夜想曲(第20番)『遺作』」をもとにした楽曲。ピアノとストリングスを中心としたシンプルなアレンジを施すことにより、なめらかで豊かな声の魅力がたっぷりと堪能できる仕上がりに。(森 朋之)
12
Jupiter
 
(グスターヴ・ホルスト/組曲『惑星』より木星)
2004年発表された平原綾香のデビュー曲。ホルストの組曲『惑星』より「木星」のメロディをモチーフに大義の人類愛を歌う。壮大なサウンドスケープと深遠な言葉から勇気がもらえる一曲。(清水 隆)



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