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吉田大八×山下敦弘、映画『サイド・バイ・サイド』イベントをレポート

2013/01/15 16:14掲載
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吉田大八×山下敦弘、映画『サイド・バイ・サイド』イベントをレポート
 キアヌ・リーブスが製作総指揮をつとめ、映画のデジタル化を巡る問題をハリウッドの著名映画監督やスタッフに訊き、シネマの未来を探るドキュメンタリー映画『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』が現在公開中。これを記念し1月11日(金)、東京・渋谷「アップリンク・ファクトリー」にて、吉田大八監督、山下敦弘監督を迎えてのトーク・イベントが行なわれました。

 昨年大ヒットを記録した『桐島、部活やめるってよ』では、「ALEXA」そして「RED」というデジタル・カメラで撮影をしながら“8ミリ・カメラにこだわる映画部”を描いた吉田監督。一方、山下監督は『マイ・バック・ページ』そして最新作の『苦役列車』を16ミリでのフィルム撮影で挑んでいます。吉田監督は『桐島』の中で、神木隆之介演じる映画部の主人公が、ビデオよりもフィルムが良いことを力説するシーンについて、「あれは、神木くんもなぜフィルムが良いか分からないんです。何かこだわりを拠りどころにしないと自分を保てないところがある人物として考えている。でも、僕はそれをビデオで撮ってますからね」と笑い、「僕としてはフィルムとデジタルどっちでもいいと思ってるんです」と明かしました。

 それに対し、山下監督は「カメラよりも映写の面でデジタル化の影響は大きい」と上映面での急激なデジタル化にとまどいながらも、「『苦役列車』をフィルムとDCPでの上映とで観比べて、フィルムのほうがまろやかな感じがした。フィルムの質感で救われているところもあった」と自身の経験を語り、「カメラが小さくなって威圧感がなくなれば、役者の緊張感は変わってくるかもしれない」と演出面での変化についても解説。

 また、編集作業については「フィルムはひとつのカット割りを決めるのにすごく時間がかかったけれど、デジタルは“とりあえずやってみよう”とアイディアをいろいろ試せる」(山下)、「プリントでの編集は、ひとつの決定が重い。『サイド・バイ・サイド』で“選択肢が増えるのは最悪だ”という言葉があったけれど、ほんとうにそう思う」(吉田)と、デジタルの機動力が一長一短であることをそれぞれ述べています。

 フィルムかデジタルかは、信頼の置けるカメラマンが薦めてくれるものを選ぶというスタンスだと言う吉田監督は「はっきりと“これはカニじゃない”と分かる“カニカマ感”の強い昔のビデオ・カメラだったら、観客にずっと観ていられるのが怖かったので、できるだけカットを細かく割ろうとしたり、カメラを振り回そうと思ったこともありました」と振り返る。長く活動してきたCMの世界でも、主流は35ミリからビデオに移行しており、それでもフィルムで撮るためにプロデューサーを説得する理由として「前後のCMを出し抜きたいから。映画は一度観客を引込めばいいけれど、CMは連続しているので、ひとつフィルムが挟って絵のトーンが変わることで、見ている人に強い印象を与えることができる」。

 山下監督は「常に完璧に作りたいと思っているけれど、デジタルになればなるほど偶然を自分で作り出していかなければいけない」とフィルムでの制作が経験値としても現在の糧になっていると発言。フィルム派、デジタル派と単純に二極化して語ることのできない、両監督の映画に対する複雑かつ深い思いが語られた夜となりました。



※新宿シネマカリテ、渋谷アップリンク他、全国順次公開中
『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』
www.uplink.co.jp/sidebyside
配給・宣伝:アップリンク
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