ショパンの故郷ポーランドの首都ワルシャワで、5年に1度開催されるショパン国際ピアノ・コンクール。第16回となる2010年は大接戦の結果、ロシアのユリアンナ・アヴデーエワが、女性としては45年ぶりとなる優勝を勝ち取り、大きな話題を呼びました。
そんなショパン・コンクールの入賞者たちが一堂に会する豪華なガラ・コンサートが日本各地で行なわれています。1月16日からスタートした仙台、福岡、大阪、東京、名古屋、札幌を巡るツアーを前に、14日に都内で記者会見が開催されました。
記者会見に出席したのは、今回のガラ・コンサートに出演するコンクール入賞者5人。日本ツアーへの意気込みと、ショパンへの思いを熱く語ってくれました。それぞれのコメントをご紹介していきましょう。
第1位に輝いたユリアンナ・アヴデーエワは、次のように語っています。
「昨年は一人で日本に来ましたが、今回はコンクールを一緒に闘った仲間たちと共に来ることができたことを誇りに思います。
ショパンの音楽は、これが正しくて、これが間違っているということがない。明確なストラクチャーの中に自由な精神が息づいている。1,000回演奏したら、1,000回とも違うカラーで演奏できるものだと私は考えています」 第2位はロシア/リトアニア出身のルーカス・ゲニューシャス。ポロネーズ賞も合わせて受賞しました。
「日本に来るのは初めてですが、かつて祖母が日本で仕事をしていた関係で、家族からよく話を聞いていました。今回、やっと来ることができて嬉しく思います。
ショパンに対する思いですか? 私の尊敬するピアニスト、グリゴリー・ソコロフ氏はインタビューで作曲家について質問されると、“私はただ弾くだけ”と答えるそうですが、私もまったく同じ答えをさせていただきましょう。ただ、ユリアンナの言った“ショパンの音楽の中にある自由”については賛成です。
今回はショパン・コンクールのコンサートですから当然ショパンを弾きますが(笑)、いつかヒンデミットやメトネルも日本の皆さんの前で弾きたいです!」 同じく第2位を受賞したのは、オーストリアのインゴルフ・ヴンダー。
「コンクールは、音楽的なことだけではなく、人とのめぐり合いを与えてくれる機会でもあります。日本の方々は、ピアノやショパンに対して熱い気持ちを持っていると聞いているので楽しみにしています。
ショパンに関して、私はユリアンナとはちょっと違う考えを持っています。というのも、“これは絶対にやらない方がいい”という弾き方が、私の中には明確にあるのです。それはショパン演奏の伝統と言えるものかもしれません。口ではうまく説明できないので、ぜひ私の演奏をお聴きいただき、皆さんの耳でそのポイントを確かめていただけたらと思います」 第3位とマズルカ賞を受賞したロシアのダニール・トリフォノフは1991年生まれ。今回の受賞者の中では最年少になります。
「日本の皆さんがショパン・コンクールを応援してくれていたことを、ワルシャワでも感じていました。今回、友人でもあり、ライバルでもある4人と日本をツアーできることを楽しみにしています。このコンクールを今後にどう活かしていくかは自分次第だと思っています。
ショパンについては、ホロヴィッツが語った言葉をご紹介させてください。“ショパンの感受性をもってモーツァルトを弾きなさい。モーツァルトの簡潔さをもってショパンを弾きなさい”」 第5位のフランソワ・デュモン(フランス)は、浜松国際ピアノ・コンクール以来、2度目の来日になるそうです。
「聴く耳をもった日本の皆さんの前で演奏できることを嬉しく思います。
ショパンの音楽は歌曲のように書かれたもの。その音楽の中にある“自由さ”とは、ピアノを使って語りかけるような気持ちが生み出すものなのでは、と思います」 ユリアンナが最初に語った“ショパンの音楽にある自由さ”について、お互いの意見を語り合った記者会見。ガラ・コンサートでも同様に、5人の個性がそれぞれの音楽を奏でてくれることでしょう。
左からダニール・トリフォノフ、ルーカス・ゲニューシャス、ユリアンナ・アヴデーエワ、インゴルフ・ヴンダー、フランソワ・デュモン