古楽界を牽引してきた巨匠、
ニコラウス・アーノンクール(Nikolaus Harnoncourt)が手兵ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスを率いて只今来日中! 今年81歳を迎えるマエストロは、「今回の日本公演は、私の最後の世界ツアーの、最後の公演となる」と公言しているだけあり、大きな注目を集めています。
そんな中、10月25日に都内で記者会見が開催されました。ニコラウス・アーノンクールのほか、夫人のアリス・アーノンクール、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの楽団代表ミラン・トゥルコヴィチ、アーノルト・シェーンベルク合唱団の芸術監督エルヴィン・オルトナーが出席。今回の日本公演のプログラムについてや、若者へのメッセージ、古楽への熱い思いなどが語られた貴重な会見になりました。
今回の日本公演のために、アーノンクールは3つのプログラムを用意しています。1つは
J.S.バッハの『ミサ曲ロ短調』、2つ目は
ハイドンのオラトリオ『天地創造』、そして3つ目は
モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」&セレナード第9番「ポストホルン」です。
これらのプログラムについて、アーノンクールは以下のように語っています。
「いずれも私の普段のレパートリーにはなく、滅多に演奏することのない作品です。『ミサ曲ロ短調』は器楽と声のための最大の作品を披露したいと思って選びました。また、『ハフナー』と『ポストホルン』のテーマは“別れ”ということで、日本の皆さん、そして人生へのお別れの気持ちで選びました」 アーノンクールがコンツェントゥス・ムジクスを創設してから約60年。はじめてのコンサートが行なわれたのは1957年でした。これまでの歩みと古楽界を振り返ってどう思いますか? との質問には、
「私がコンツェントゥス・ムジクスを創設した当初は、“古い音楽”=“聴いていてつまらない音楽”といった状況でした。でも私は、こうした古い音楽の中にあるパッション(情熱)を伝えたいと思って始めたのです。決して学術的な探究心からではなく、今の人に楽しんでもらいたいという一心でここまで歩んできました」 ラン・ランや
グスターボ・ドゥダメルなど、若い演奏家たちとの交流や共演にも積極的なアーノンクール。その顔ぶれは、アーノンクールの音楽性からはちょっと意外な気もしますが……。
「ラン・ランと共演した際、オーケストラとのリハーサルの前に、“3時間合わせをしないか?”と誘ったのは私の方です。ラン・ランは驚いていましたよ。2人でみっちり合わせたおかげで、とてもうまくいきました。ドゥダメルとは音楽的な接触というよりも、人間的な交流です。ベネズエラの活動は素晴らしい。横目に見て通り過ぎるのではなく、自分も何か関わらなければと強く感じています」 今回の来日では、子どもたちのための公開リハーサルも実現。はじめてモーツァルトを聴く、はじめてピリオド楽器の音色に触れる子どもたちにメッセージを、との問いには、
「はじめてモーツァルトを聴く子どもがいるかどうかは分かりませんが、自分の感受性をフル回転して臨んでほしい。音楽に詳しい友人と一緒に行くのもよいかもしれない。日本語がわからない私が、どんなに素晴らしいスピーチでも一言も理解できないのと同じように、モーツァルトにも言語があります。その言語を理解できる人が、事前に子どもたちにあらゆる情報を教えておく必要があるでしょう」 アーノンクールの言葉は、ありきたりな社交辞令や美辞麗句とは無縁。聞く人に考えるきっかけを与える“ひっかかり”のある言葉の数々が心に刻まれた会見でした。コンサートのチケットは残席がわずかながら、まだ間に合う模様。ぜひ最後の機会をお聴き逃しなく!
■ニコラウス・アーノンクール指揮 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
来日公演スケジュール
10月26日(火) 19時開演 東京・サントリーホール
J.S.バッハ:ミサ曲ロ短調
10月29日(金) 19時開演 東京・サントリーホール
ハイドン:天地創造
10月30日(土) 18時開演 東京・サントリーホール
ハイドン:天地創造
11月2日(火) 19時 東京オペラシティ コンサートホール
モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」&セレナード第9番「ポストホルン」
11月3日(水・祝) 18時 東京オペラシティ コンサートホール
モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」&セレナード第9番「ポストホルン」
問:カジモト・イープラス [Tel]0570-06-9960
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