全世界に衝撃が走った
オアシス(Oasis)脱退からほぼ2年、ついに
ノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)が沈黙を破り、かねてより噂されていたソロ・デビューの全貌を、7月6日 / 西ロンドン:エレクトリック・シネマで開かれた緊急記者会見で明らかに。待望の1stソロ・アルバムのタイトルは『NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS』。本国イギリスでの発売は10月17日であることを全世界のロック・ファンに向けて自ら告知。日本でもこの秋、ソニー・ミュージックジャパン インターナショナルから発売となります。
100人以上の記者団、多数のカメラ・クルーの前に姿を現したノエルは、スマートな革ジャン、短めに刈り込んだ髪も含め、実に精悍で颯爽とした佇まい。開口一番「じゃあ、戦闘開始!」のジョークを飛ばし、「ハイ・フライング・バーズってのは、スチュワーデスのことなんだ」などなど、ユーモアたっぷりの軽妙な語り口で、約30分間の質疑応答を行ないました。
ソロ・アルバムは、なんと2作がすでに完成しているとのことで、まず、今年10月17日(英国発売予定日 / 日本でもこの秋発売)、自らのレーベル「Sour Mash」からドロップされるのが、10曲入り『Noel Gallagher's High Flying Birds』。ロンドン、そしてLAで制作されたこのアルバムは、オアシス作品でもおなじみのデイヴ・サーディとの共同プロデュース。
ノエルは「ファンにはオアシスのなごりを聞き取ってもらえると思う」と評しつつ、「あまり“ギター・ヒーロー”な内容じゃない。ギター・ソロは2曲にしか入っていないし、しかもそのうち1つはほかの人間が弾いてる」。オアシスの前作セッション中にデモを作った楽曲も含まれているとのことですが、「君たちがこのアルバムで最初に聴くことになる曲は、これまで俺がやってきたことの、どれとも似ていない」との発言も。
この作品の発売翌週にはツアーもスタートし、10月23日:アイルランド/ダブリンを皮切りに、マンチェスター、ロンドン、グラスゴー、エジンバラなどでの比較的小規模な会場でのライヴが予定されており、その後も2011年内に世界の主要都市を廻る予定。「ツアーで、オアシスの曲はプレイするのか?」との問いには、「(ソロ)アルバム10曲は46分20秒くらいなわけで、そんな短いライヴに、高いチケット代はチャージできない。だから、俺はオアシスの曲はプレイするつもりだ。俺が書いた曲だし、誇りに思っているからね」と語っています!
続いて、ソロ第2弾として、ジ・アモルファス・アンドロジナス(=フューチャー・サウンド・オブ・ロンドン)とのコラボ作(タイトル未定)が来夏発表される見込み。アモルファス〜とは、オアシス「Falling Down」のリミックス(Monstrous Psychedelic Bubble Mix)以来の付き合いで、「めちゃめちゃぶっ飛んだ内容」とのこと。作品に参加したプレイヤーもアモルファス〜人脈が中心で、こちらは『〜High Flying Birds』とは異なる、実験的かつ多彩な内容になりそう。
ソロ作と同じくらい会見の焦点になったのが、脱退の引き金になった2009年、パリでのコンサート楽屋事件。「俺たちの関係は、みんなが思ってるほどひどくない」と断った上で、プリティ・グリーンの広告をオアシスのツアー・プログラムに掲載しようという
リアムの案にノエルが反対、大口論になり、両者の関係が悪化。英Vフェスティヴァルのオアシス出演がキャンセルになったのはリアムの二日酔いのせいであり、その件で非難されたのは、ノエルが英マスコミを操っているせいだとリアムが逆恨みし鬱憤をためていき、パリのフェスの楽屋で爆発、喧嘩になった……と顛末を説明。
なお、この記者会見の後、リアムは「SHITBAG(クソったれ)」とツィートしており、彼には彼なりの言い分がある様子……。しかし、「不必要に乱暴だった」楽屋でのリアムの言葉や態度、そして楽屋にいたほかのメンバーのことなかれ主義な対応にも失望したノエルは「もうたくさんだ」と感じ、ツアー中の脱退を表明することに。
終始リラックスした会見だったとはいえ、この時ばかりは表情も心持ち固く、「でも後悔してる。あの時残っていたコンサートは2本だけだったから、俺が戻ってあのライヴをやっていたら、ツアー後に話し合いを持てたかもしれない。そうすれば、バンドは解散せずに済んだかも」との発言には、オアシスへの未練を感じさせます。
このソロ・プロジェクトにノエルが取り組み始めたのは、オアシスがブリット・アウォードにおける「過去30年間の最優秀アルバム賞」を受賞した、2010年2月。そこから、実に18ヵ月を費やした2枚のアルバムを引っさげ、英モダン・ロック界随一のソングライターが帰還を果たす日は間もなく。「この作品で、何かを証明しようと思ったか?」との問いについては、「ノー。尊大に響くかもしれないけど、自分自身に証明してみせるだけなんだよ。この俺が、誰に対して証明する必要がある? ここに集まってくれた人たちを見くびるつもりはないけど、作品が出て、ジャーナリストにこきおろされたとしても、今のネット時代においては、そんなの意味はないんだよ。誰もがジャーナリストで、誰もが批評家で、誰もがアルバムをレヴューしている、そんな時代なんだし、つまるところ、人々にその作品がどう受け止められるか、そこだからね。で、俺は、これは皆に気に入ってもらえる、そう思ってる」と語っています。
(Photo By Hayley Madden)