〈第68回カンヌ国際映画祭〉の「ある視点」部門にて、日本人初の監督賞に輝いた
黒沢 清監督作『岸辺の旅』(10月1日公開、出演:
深津絵里 /
浅野忠信)。その音楽について、『あまちゃん』でもコンビを組んだ
江藤直子と共に担当した
大友良英が製作秘話を語りました。
黒沢監督との仕事については、「監督によって違いますが、黒沢さんの場合は細かいディテールを言うよりは、大きく“この映画にとって音楽がどういう意味があるのか”というところから話を持ってくる感じで、“この辺にこういう音楽が必要です”と言って作ったものがそのまま付いていることがすごく少ないです。あまり細かく作らないということと、オーケストラ単体でもちゃんと音楽として成立したものを付けるというイメージだったので、黒沢監督の意図を汲んでどれだけ従来の劇伴とは違うものを作れるのかというところに注意しましたが、でも実は手間は江藤さんの方がはるかにかかっています」とコメント。
今回、『岸辺の旅』では江藤直子と共にオーケストラで音楽を手がけており、「ああいう映画にオーケストラを付けられるというのが大発見です。通常、日本映画でこういう風には付けませんから。予算のこともありますが、この内容なら小編成ないしはピアノで合いますから。何にも言われなかったら俺もそういう方向で付けちゃったような気がします。でもオーケストラ前提で考えると、あっそうか!と。黒沢監督は“例えば小津映画とかでも、別に家族のなんてことないシーンにオーケストラが付いてますよね。そういうのをやりたいんです”と言っていて、そうか!そうだよな、確かに昔の映画ってそうだったと! ここ20〜30年の日本の劇伴の付け方に自分もとらわれていました。なにも映画のサイズの中に音楽までおさまる必要なんてないんです。オーケストラがあの映画に付いたらどうなるのか、俺もやってみたくなりました」など、新たな発見があったことも明らかに。
また、「本当に苦労されたのは江藤直子さんで、江藤さんの今までの音楽的キャリアの全てをつぎ込んで臨んだんじゃないかな。なにしろ予算との闘いという制約の中で最大限の効果をあげねばと必死でしたから。最初に黒沢監督さんに“マーラー……”って言われたときには即“無理だと思いますよ”って言いました! 編成的に予算をはるかに超えてますから。でもマーラー的なものの持つ、あるオーケストラの豊かさは実現したかった。ちゃんと本物にしなくてはと。その部分で江藤さんの功績、大きかったです」と、江藤へ賞賛の言葉をおくっています。
10月1日(木)より、テアトル新宿ほか全国ロードショー
(C)2015「岸辺の旅」製作委員会 / COMME DES CINEMAS