吉松隆 2010/01/26掲載(Last Update:10/01/27 22:36)
日本を代表する作曲家、
吉松隆が監修を務めるユニークなコンサートが、3月14日(日)15:00より東京オペラシティコンサートホールにて開催されます。
“新・音楽の未来遺産〜New Classic Remix〜 Vol.1 Rock&Bugaku”と題された当公演は、普通のクラシック・コンサートではありません!
プログラムの中でも注目すべきは、
キース・エマーソンの「タルカス」のオーケストラ版。かのプログレの名作をゴージャスなサウンドで堪能できるまたとないチャンスです。また、
ドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」をピアノとオーケストラ用に吉松が編曲した作品も披露。これら2曲は世界初演です。
そして、プログレの影響を存分に受けながらクラシックの作曲に身を投じている吉松が作曲した「アトム・ハーツ・クラブ組曲」も演奏されます。カルテット版は
サイトで試聴できるので、ぜひ聴いてみてください。
演奏は
藤岡幸夫指揮による
東京フィルハーモニー交響楽団。現在注目度上昇中の若手ピアニスト、
中野翔太も出演します。
クラシック・リスナーでなくても楽しめること間違いなしのコンサート。「なんだかよくわからないけど面白そう…」という気持ちで足を運んでみてはいかがでしょう?
以下に、吉松隆がこのコンサートに寄せたメッセージをご紹介いたします。
■“新・音楽の未来遺産〜New Classic Remix〜 Vol.1 Rock&Bugaku”に寄せて
文/吉松 隆
このシリーズの裏テーマは「JA道クラシック」。「日本製(JA)」であると共に、お堅いクラシック・ファンからは「邪道」だと後ろ指さされるようなことも敢えてやってしまおうという意味が密かに込められている。
方向性としては2つ。ひとつは、私たちの国の作曲家たちが生み落とした名作と、新しい生まれたてほやほやの作品、つまり日本製の「新しいクラシック音楽(New Classic)」を提示すること。
そしてもうひとつは、本来オーケストラで書かれたものではない名曲(クラシック以外のジャンルも含む)を、「編曲・オーケストレイション」ではなくオーケストラ用に「リミックス(再構成)」し、新しいレパートリーを作ること。
この2つの「JA道」を極める第1回は、東西のビート音楽「ロックと舞楽」をテーマに4曲を取り上げる。
ゲーテやシェークスピアの作品がいかに不滅の傑作であろうと、私たちが「面白そう」と言って手を伸ばすのは、同じ国同じ時代に生きる作家たちの「新しい作品」。それは文学でも映画でも美術でも音楽でも同じはず。
ところが、この「常識」が通用しない唯一のジャンルが「クラシック音楽」。100年も200年も前に書かれたヨーロッパの音楽を繰り返し聴くだけという状況が続いている。これでは100年先の未来はない。
いや、だからといって「現代の音楽を聴きなさい」などというつもりは全くない。ただ、「なんだか知らないけれど面白そう」と思って新しい音楽が演奏されるコンサートに行く。そういう(むかしは当たり前だったはずの)楽しみを、100年の歴史を持つ東京フィルという第一級のオーケストラと一緒に、日本のクラシック音楽界に提供したい。それがこのシリーズに込めたささやかな願いである。「そんなのは邪道だ!」と憤慨しながら楽しんでいただきたい。