ここ日本でも一時期話題を呼んでいたムーヴメント“Riot Grrrl(ライオット・ガール)”。Grrrlの綴りは知っていても、その内容となると???その実態について、CDJournal.com的考察をまとめてみました。
1990年代初頭、アメリカはワシントン州オリンピアを発信源に登場した“Riot Grrrl(ライオット・ガール)”ムーヴメント。パンク・シーンでの性差別/ライヴ会場での様々な暴行事件などをきっかけに、音楽/ファンジン/アートといったクリエイティヴな活動を通じて、フェミニズム思想を草の根方式で広げていった運動のこと。ちなみに、ともすれば「ガルルル」と読んでしまいそうなR3つの“Grrrl”綴りは、フェミニスト達が使っている“womyn”(“women”の意)に倣って作られた言葉であるそうな。
BIKINI KILL、BRATMOBILE、HEAVENS TO BETSY、
HUGGY BEAR、
the BUTCHIES、
SEVEN YEAR BITCH、
bis(無論、メンバーに男性が在籍しているバンドもあり)をはじめ、
ザ・スリッツや
ジョーン・ジェット(最新作
『ネイキッド』にはキャサリーン・ハンナ(元ビキニ・キル)が参加)といった先駆者としてリスペクトを受けているバンド/アーティスト、レーベルで言うならばMr.Lady Records(2003年に閉鎖?)、
KILL ROCK STARSなどの音楽を指針に、各々の方法でその意義を社会に向けて発信していく活動。ハードな音を追求するあまり、マッチョなムード一辺倒となっていたシーンを、少しずつではありますが確実に変えてきた“Riot Grrrl”。しかしながら、その受け取り方は本国アメリカと日本とでは多少異なるご様子。
一過性のブームとして実に軽〜くスルーしてしまった日本では、パンクを匂わすサウンド、激しいパフォーマンス、どことなくメッセージ色あり、女性がフロントマンをつとめている、何か頑張っている、バラエティ番組でやたら発言する、ヒステリックな大声、離婚した途端にテレビに出まくる、とにかくデカイ、本気で夫婦喧嘩をする、いきなり小説家宣言をしてしまう、ごきげんよう大賞を常に狙っている、川崎麻世を尻に敷いている……などなど、本人の自覚も無いところで“Riot Grrrl系”として勝手にジャンル付けされているケースもしばしば。Riot Grrrl=暴動!女の子!戦う!なんか激しそう!と直訳したよなシンプルすぎる思考回路のもと、世のグランジ・ブームに合わせて伝わってきたラウドなガールズ・バンド(
L7/
HOLEなど)は即Riot Grrrl行きにされていたのも懐かしい思い出。冷たい街の視線をもろともせず、ゴスロリ〜ギャル〜韓流化する女性の方々をある意味Riot Grrrlとして扱っている点も、社会的背景の無い日本ならでは、といったところでしょうか。
元ビキニ・キルのキャサリーン・ハンナが在籍する
ル・ティグラ、Excuse 17/HEAVENS TO BETSYのメンバーによって結成され“Riot Grrrl”をある意味最も有名にした
スリーター・キニー、ル・ティグラのご友人でもあるソウル・パンクことGossip、ジャネット・ワイス(スリーター・キニー)とサム・クームズ(元ヒートマイザー)による
クワージ……などなど、ルックスではなく、その精神性を受け継ぐ新たなバンドも数多く登場し、今も脈々と息づく“Riot Grrrl”。轟音/ダンス/アコースティックと、多様に進化を遂げているサウンドに込められた志を紐解けば、その味わいもさらに深いものとなるのでは。
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