輸入CDに貼られている“Parental Advisory”と書かれたステッカー。HIPHOPやラウド系の音源でよく見かけますが、そもそもコレ、一体誰が貼っているのでしょうか?その実態について、また放送規制についてCDJournal.com的考察をまとめてみました。
最近ではiTMSでもアイコンとして表示される“Parental Advisory”と書かれた黒いステッカー(写真)。ヒップホップ系の音源で見かければむしろ“サグ”な雰囲気をかもしだし、「親(保護者)に警告」というよりも、オススメ!にしか見受けられない、もはや親は注意してくれなくなってしまった“大きなお友達”も多いことでしょう。
このステッカー、1985年にペアレンツ・ミュージック・リソース・センターという市民団体の圧力により導入された検閲制度で、レコーディング・インダストリー・アソシエーション・オブ・アメリカ(RIAA) という音楽業界内の団体が、アメリカ国内で販売される“不適切な歌詞”が使われていると判断された音楽CDに警告として貼られるもの。
ステッカーが貼られてしまった音楽CDは、大型スーパー・チェーンであるウォルマートのCD売り場をはじめとした特定のCDショップでは販売されなくなるとのこと。ウォルマートでは銃や弾丸も買える(映画
『ボウリング・フォー・コロンバイン』)のに警告ステッカー付きの
エミネムの新作は買うことが出来ない……? という不思議な現実はさておき、暴力的な言葉(いわゆるF-WORD)や性的描写、あるいは薬物などを扱ったとされる曲を、保護者が「子供に与えて良いかどうか」の判断をするべき、と忠告しているのです。(※iTMSではアップル社独自のガイドラインを設け、適用しているようです)
一方、日本国内ではどうなっているのでしょうか?音楽CDには、“Parental Advisory”に準じるような警告ステッカーや、映画の閲覧制限のような明確な規制措置が存在しません。現状では“レコ倫”またはレコード会社やテレビやラジオといった放送局による、“現場での判断”による自主規制が行われています。これらはあくまでも自主的なもので、規制対象になるような表現がある際は、はっきりと歌っていても歌詞として歌詞カードに掲載しなかったり、放送の自粛やCDの回収/発売中止などの措置が取られるようです。
放送禁止の楽曲が多く、かつてはアルバムの入手が困難だった音源といえば
岡林信康『わたしを断罪せよ』や、
頭脳警察『頭脳警察1』などが知られています。また意外なところでは
おニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」(
『ミニ・ベスト』他収録)は放送自粛などの措置が取られる場合が多いとか。2002年には
ZEEBRA、
K-DUB SHINEの古巣
キングギドラの再結成時のシングル
「UNSTOPPABLE」の回収騒ぎが話題となりました。この時、問題とされた楽曲のように、日本では一度問題となってしまうと“お蔵入り”してしまう場合もあるようです。
現在、アメリカでは“EXPLICIT”と呼ばれる本来の楽曲から、規制対象となる言葉を排除した“ラジオ・エディット”や“クリーン・ヴァージョン”をアーティスト自らが公共での放送用に制作することで、規制を免れます。音楽自体の優劣、表現や言葉に真にアーティストが込めた想いや意味を無視して、自由な表現を妨げる場合もありうる検閲という行為は両手を挙げて歓迎できるものではありません。しかしその一方で、ルールが不透明な自主規制によって“お蔵入り”する場合もある日本の仕組みと比べてみれば、“EXPLICIT”ヴァージョンで、アーティストが規制の枠にとらわれることなく自由に表現できることを皮肉にも“保護”しているという側面もあるのかもしれませんね。
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