最近では新作にボーナスDVDが付くのは当たり前になってきましたが、海外では“DualDisc”なるモノが続々と登場。DualDiscとはいったい・・・・・・? CDJournal.com的考察をまとめてみました。
■DualDiscとは?
最近ではかなり一般的な認知も進んでいると思われるDualDisc。簡単に言ってしまえばこのディスクは「片面がCD、もう一方の面がDVD」という構造の両面ディスクで、音と映像が1枚のディスクで楽しめるという利点を持っています。DVDはCDよりも多くの情報を記録することができるため、DVDサイドにはCDサイドの5.1chサラウンド・ミックスや、ビデオクリップなどの映像が収録されることが多くなっています。
■いつ頃誕生したのか?
このDualDiscの誕生は2004年8月。米国の大手レコード会社5社(EMI Music、Sony BMG Music Entertainment、Universal Music Group、Warner Music Group、5.1 Entertainment Group/Silverline Records)によって発表され、10月から本格的なリリースが始まりました。第1弾リリースのタイトルには、シンプル・プラン『スティル・ノット・ゲッティング・エニイ』のような新作から、AC/DC『バック・イン・ブラック』などの定番アイテムまで60タイトルがラインアップ。ユーザーからの評価も上々だった模様です。
■日本の現状は?
そんなに便利なら日本でも普及しているのだろうな、と思われるでしょうが、実は国内盤ではほとんど販売されていません。DualDiscの中にはCDとDVDを背中合わせに貼り付けただけ、という印象を拭えない、粗雑な商品があったりするのです。リリースが進むにつれ出来栄えは改善されているとはいえ、製品に高い完成度を求める日本人の気質には馴染み難いものがあるでしょう。したがって、それに代わるアイテムとして日本では近年、CD+DVDという形の作品が多くリリースされています。そのボーナスDVDの映像は、DualDiscと同内容のものがほとんどです。ただ、残念ながらDualDiscには収録されている、5.1chサラウンド・ミックスはカットされているのが現状です。
■DualDiscのCD面はCDではない?
冒頭で「片面がCD〜」と述べましたが、厳密に言うとDualDiscのCD面はCD=Compact Discではありません。DVDと貼り付けた上、プレイヤーでの再生を考えた結果、CD面の厚さが若干薄いなど、CDの規準に準拠していないのです。
そのため、DualDiscのパッケージには「The audio side of this disc does not confirm to CD specifications and therefore not all DVD and CD players will play the audio side of the disc」(意訳:このディスクのオーディオ面は、CDの仕様としては認められていません。したがって、すべてのDVD/CDプレイヤーで再生できるわけではありません。)という表記があり、CDには必ずついているCompact Discのロゴも付いてません。これにより、DualDiscの製造元ではCD面を「非DVD面」「音楽専用面」「オーディオ面」などと呼ぶことで、CDとの差別化を図っています。
これも日本で普及しない大きな要因であり、大手電器メーカーの多くが「再生できない場合がある」として注意を呼びかけています。実際にデータの読み取り不良や曲のスキップができないなどの事例が報告されている模様です。なお、DVD面はDVDとして認められています。また、再生に関連する事例では、トレイ式のCD/DVDプレイヤーでは(問題はあるものの)再生できるのに対し、カーステレオなどのスロットローディング式のプレイヤーではディスクに厚みがあるため、再生ができないことになります。
■海外での状況は?
DualDiscが普及しているのは、極端に言えば北米地域だけです。欧州でのリリースもちらほらと確認されてはいるものの、まだまだ日本と同様にCD+DVDという形態が一般的。恐らく日本と同様の理由からだと思われます。
■DualDiscの是非
ここまで問題点を列記したような形になってしまいましたが、CDとDVDが1枚で楽しめるということ自体に関しては、非常に便利であると認める方も多いのではないでしょうか。CD+DVDという形態は、パッケージの不定形化や生産コストによる販売価格の上昇が避けられない状況です。それゆえ、米国ではDualDiscでリリースされている人気アーティストの作品が、日本ではCDのみ、というケースもあります。DualDiscはCD+DVDに比べれば安価に設定されており、その点ではユーザーに優しいと言えるでしょう。また、オーディオ面での不具合を改良した「DVD Plus」なるディスクが別方面で開発され、市販も開始されるなど、「CDとDVDの両面ディスク」は今後も活況を呈しそうです。日本での状況がどうなるのか、注目しましょう。
■おまけ?
さて、DualDiscの誕生は2004年と先述しましたが、実は2000年に「片面がCD、もう一方の面がDVD」という作品がリリースされているのです。それは、英国のメタル/エクトリーム・ミュージックのレーベルとして有名な、Earacheのコンピレーション『Immortalised DVD』。Earacheは“DVD Plus release”と謳っており、時代を先取りしていた可能性も!
実物を見たことがある者によると、いかにも“貼り付けてみました〜”というイメージで、お世辞にも時代の先端を行く代物には思えなかったとか。どうやら現在でも入手可能のようですので、興味のある方は実際に手にしてみては(ただしDVDはPAL)? また、コレよりも古いリリースを知っている!という方はご一報を。
DualDiscの公式HP
http://www.dualdisc.com/※ 記事は掲載日時点での情報をもとに書かれています。掲載後に生じた動向、および判明した事柄等は反映しておりません。ご了承ください。