漫才コンビに在籍していることすら忘却の彼方へと飛んでいってしまった、ムーディ勝山(勝山慎司)の持ちネタ「右から来たものを左へ受け流すの歌」
/ 「2日前から後頭部に違和感がある男の歌」
/ 「上から落ちてくるものをただただ見ている男の歌」
……などのおかげか、“ムード歌謡”なる言葉が一般常識として若者の間にも広まっているような気がする現代日本。
しかしながら、言葉としては知っていても、実際ムード歌謡は如何なるものなのか?という疑問に対しては明確に答えられないのが現状。アダルト世代へ追いつけ追い越せ!とばかりに、ふつふつと沸いて出た「ムード歌謡とは?」という知的欲求を満たすべく、CDJournal.com的考察をまとめてみました。
「ムード」という言葉から思いつく事柄といえば、艶やか、きらびやか、夜の街、ネオンの明かり、そして腰も震えるファルセット・ヴォイス。5月にリリースされたV.A.
『魅惑のムード歌謡大全集』をはじめ、
『ムード歌謡名曲集』 /
『夜のムード歌謡 決定盤』 /
『オリジナル歌手によるムード歌謡全曲集』など近年登場したムード歌謡コンピを見てもお分かりのように、余韻とタメを駆使して“大人の恋愛模様”をたっぷりと歌い上げる歌謡曲を指す模様。
「コモエスタ赤坂」「夜霧よ今夜もありがとう」「長崎は今日も雨だった」「別れても好きな人」「城ヶ崎ブルース」……歌の舞台を特定させることで、さらにリアルな情景描写を実現、しっとりしっぽりのラヴ・ゲームが展開されてしまう訳なんです。
トレンチコートに身を包み、かつての女(“ひと”と読む)を思いながら夜の街を闊歩する……。ひとり小料理屋を営みつつ、ふとした拍子に見つけた白髪に年齢を感じる……。旅先の繁華街、ふらりと入った酒場で見とれた人が誰かに似ている……。日本古来の歌謡曲に、ラテン/ジャズといった舶来ものの要素が加わることで、さらにメロウな舌ざわりを演出するムード歌謡。出会い、別れ、再会、燃え上がる2人、誰しもの脳内に果てしなく広がる(メロ)ドラマティックな妄想を叶える夢の歌世界がそこには広がっているのでありました……。
昭和時代に爆発的なヒットを飛ばしたムード歌謡も今は昔。過去の名曲をなぞる暮らしへ響き渡った“チャラチャッチャッチャラッチャー〜”の節回し。演歌がレアグルーヴならば、さしずめムード歌謡は甘茶ソウル!? めくるめく夜の四十万で流れ出す、濃厚にして密着度高めのサウンドに咽び泣くのもまた楽し!です!
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