【作品紹介】
親子が一緒に楽しめる工夫満載
新生『交響詩 ジャングル大帝』
文/山尾敦史
作曲者自身による“2009年版オリジナル”
交響詩 ジャングル大帝 〜白いライオンの物語〜
《2009年改訂版》
CO・COZX-411〜2(HQCD+DVD)
※HQCD:2chステレオ/ナレーション入り
DVD:2chステレオ・5.1chサラウンド切替
ナレーションon・off可/静止画付き
1965年から翌年にかけてテレビ放映されたアニメ『ジャングル大帝』。当時の少年少女たちにとっては、未知のアフリカという世界に対するイメージを決定づけた“社会科の先生”だったようにも思える。その音楽を担当したのが作曲家の冨田勲。この音楽はさらに大きな展開を見せ、1966年にはオーケストラとナレーションのための『交響詩 ジャングル大帝』としてレコード化された。もしかするとこのレコードで『ジャングル大帝』や、オーケストラ・サウンドの魅力に目覚めたという人もいるのではないだろうか。
その交響詩ヴァージョンが、リスナーの周囲から音が聞こえてくる5.1chサラウンドというオーディオ環境を得て、ますます楽しい作品になった。しかも単に“音がよくなった”ということにとどまらず、どこからどの音が聞こえたらおもしろいか(または効果的か)、といったことも含め、冨田自身がスコアをすべて書き直したという“2009年版オリジナル”である。
楽しく、深いストーリー
物語は、壮大なジャングルの王である白いライオンのパンジャ、そして息子であるかわいいレオが主人公。パンジャは動物狩りにやって来た人間たちと勇敢に戦うが、捕らわれてしまった妻のエライザを助けるため、自らが犠牲に。しかしエライザはアフリカからの運搬船に乗せられ、動物園へと売られることになってしまう。船上で生まれたパンジャの子であるレオは、エライザから偉大な父のことを聞き、嵐の夜に船から脱出して力強くアフリカへと泳ぎ出す。
勇気が湧いてくるようなストーリーの中で、普遍的な愛情や夢、生きる目標、さらには人間と動物との共存までも教えてくれる作品であり、パンジャやレオはアトムにも通じる“手塚イズム”のシンボルであると言えるだろう。また、ジャングルの仲間たちや、船上でレオの誕生をダンスで祝うネズミたち、海の上で幼いレオを励ます魚など脇役たちの存在も楽しい。
ナレーションには綾戸智恵!
『交響詩 ジャングル大帝』は、オーケストラと男声合唱によるアフリカの壮大なイメージをはじめ、ホルンで表現されるパンジャの威厳、ヴァイオリンとチェロによるエライザの母性愛、パンジャと同じくホルンで奏でられるレオの勇気など、すべてが音楽で表現されていく。さらにはハンターたちとの戦いや静かな星空の様子(チェレスタが星のきらめきを演奏)も表現され、ネズミや魚たちのかわいらしい活躍も音楽で。
加えて今回は“紙芝居のように楽しんでほしい”という冨田自身の強い要望から、ジャズ・シンガーの
綾戸智恵がおなじみの関西弁でナレーションを担当している。
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「パンジャの死」のシーン。本作品のブックレットは、LP制作当時に手塚治虫が書き下ろしたイラストと、ストーリー紹介、各楽器の解説と楽譜まで掲載された大充実の内容。「エライザの話」のシーン。“エライザを表わすのはチェロの音色で奏でられるこのモティーフ”というように、登場する動物ごとに各楽器が“配役”されている。「ゆかいな魚たち」のシーン。トロンボーンの音色が魚たちを表わす。トロンボーンに付けられたミュートの種類が解説され、オーケストラ楽器の勉強にもなる。※画像はすべて『交響詩 ジャングル大帝 〜白いライオンの物語〜《2009年改訂版》』ブックレットの抜粋です。