1960年代後半にデトロイトでデビューし2枚のアルバムをリリースするものの、アメリカでは日の目を見ぬまま音楽シーンから姿を消したものの、その歌声、音楽性の高さ、歌詞の痛烈さが海を渡り、革命を志す南アフリカの若者の間で支持され、同国で国民的な人気を誇ったシンガー、
ロドリゲス 。その後再び表舞台から姿を消し、伝説の存在となっていた彼のドキュメンタリー映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』(公開中)でいま再び脚光を浴びるロドリゲスが、4月7日にニューヨーク“ビーコン・シアター”でライヴを行ないました。
総収容人数が3,000人近くになるビーコン・シアター。当日は“奇跡の歌声”を実際に聴いてみようと人々が押しかけ、チケットはもちろんソールドアウト。会場外ではチケットを400ドルを超すの高値で売るダフ屋が現れるほどのプレミアム・ショーとなりました。
ロドリゲスは、ステージライトの光をよけるためなのか、目深に帽子を深々とかぶり、長髪にサングラスをかけ、全身黒ずくめでステージに登場。ギター1本を手に登場するやいなや、待ち構えていた聴衆は総立ちに。
温かい声援で会場に迎えられたロドリゲスは、バックバンド(サックス、トランペット、ギター2、ドラム)をしたがえ、静かに演奏をスタート。映画本編で印象的に流れたサントラ収録曲はイントロだけで会場からは「ウォー」と声援が。今となっては“代表曲”を持つほどになった彼は、「アイ・ワンダー」、「アイ・シンク・オブ・ユー」、「イナー・シティ・ブルース」等で会場を魅了。また
ボブ・ディラン の「ライク・ア・ローリング・ストーン」などのカヴァーも7曲披露し、ファンへの嬉しいサプライズとなりました。
カヴァーも含め21曲、約90分のステージを終えるとバンドともにステージに何度か登場し、総立ちのオーディエンスの惜しみない拍手を浴びながらも最後は「安全運転で帰ってくださいね。皆さまに幸あれ」と彼らしく締めくくり、舞台を背に。
このSOLD OUT SHOWでの成功を皮切りに、ロドリゲスは世界最大規模の音楽フェスティバルにも出演する。4月14日と21日にはUSのコーチェラ、6月26にはUKのグラストンベリーへの出演がすでに決定。また、10月10日の世界最大規模のホール:ラジオシティ・ミュージックホールで行なわれるライヴも、売り出しと同時に完売しています。
2012年7月、たった3館での限定公開から1年も経たずして、世界の名だたる音楽フェスやホールに登場するようになるとは本人含めて誰も想像しなかったこの現象は、まさにロドリゲスの歌声が起こした“奇跡”と言えるでしょう。
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写真(c)MAYUMI NASHIDA