まずは以下の写真をご覧あれ。この凛々しき6名の動物さんたちが
ズーラシアンブラス! この姿で実際に楽器を奏で、しかもとてつもなくレベルの高い演奏力を誇るという金管五重奏団です。彼らの
公式HPにはチャーミングなストーリーが描かれており、そのユニークな世界観に思わず引き込まれてしまいます。そんな動物さんたちの活動を詳しく探るべく、バンドの指揮者にして頭脳明晰なリーダーでもあるオカピ(世界三大珍獣の一つ。あとの二つはジャイアントパンダとコビトカバ)にインタビューしました。子どもを持つCDJ読者は必読!!
―― まずはズーラシアンブラスのプロフィールから教えてください。
オカピ 「2000年に結成された金管五重奏団です。よこはま動物園ズーラシアのマスコットキャラクターとしての園内演奏のほか、“音楽の絵本”と題したホールコンサートを展開したり、新作を含めこれまでに5枚のCDを出しています。希少動物で構成されている理由は、よこはま動物園ズーラシアは絶滅危惧種の保存を目的の一つとしているため。子どもたちに僕らの名前を覚えてもらうことは重要ですからね」
―― だから“スマトラトラ”“インドライオン”“ホッキョクグマ”など、あえて正式名称で呼ばれているわけですか。それにしても、なぜクラシックをメインとする金管五重奏を?
オカピ 「小さな子どもたちにクラシックを聴いてもらいたくて。クラシックのコンサートは“未就学児お断り”っていうのがごく当たり前なんです。そんな子たちに、動物が演奏する生のクラシックに触れてもらう。それも子ども向け音楽じゃなくて、本物のクラシックにワーッと子どもたちが寄ってくるような世界観を作りたい、と。もっとも、デビューは“弦(つる)うさぎ”の方が先ですけど」
―― 弦うさぎ?
オカピ 「うさぎの4姉妹による弦楽四重奏団です。僕らと一緒にコンサートをやってます。ほかに“ことふえパピヨン”というフルートとハープの蝶々の2人組もいますよ」
―― ウーン、前代未聞のグループ編成! でもこの動物さんたち、万人に好まれる笑顔や愛らしい表情はしてませんね。というよりむしろ……。
オカピ 「ちょっとコワイ(笑)。でも音楽ってニコニコしてる曲ばかりじゃないし、特にクラシックで笑ってばかりだと不自然。だから表情はなるべくつけずにやってます」
―― お話を聞いてると、メルヘンチックな夢の世界というよりも、リアルな音楽性を重視している印象を受けます。
オカピ 「もちろん! アーティストとして本物の音楽を伝えることが前提なので、お遊戯とか非日常的な世界とは違います。たとえばヒーローショーなどの子ども向けの催しって“子どもが楽しんでる姿を、親が目を細めて見ている”という構図が典型的。でも僕らは逆に“子どもでもわかる世界を、親がキラキラ目を輝かせて見ている”というシーンを作りたい。子どもって、自分が嬉しい時に親がどう反応してるか確認するでしょ? その時の親の感動は子に伝わるものなんです」
―― なるほど。音楽をきっかけに親子コミュニケーションを豊かにすることが、目的の一つというわけですね。では最後に新作
『くらしっく すいっちょん』について一言。
オカピ 「すいっちょんはスイッチオンで、クラシックを聴こう!って意味。ベートーヴェンの『運命』を金管五重奏でやったのは世界初の試みかもしれません。でもオーケストラと比べてショボイとは思われたくなかったので、アレンジには細心の神経を払って、ちゃんとクラシックに聴こえるように仕上がってます。ちなみにCDのクレジットを見ればわかりますが、プレーヤーの動物たちは日本の一線級の演奏者ばかりなんですよ」
パッと見からは想像できない熱き理念をたぎらせるズーラシアンブラス。バックアップする作家陣には、
中川英二郎・喜弘の両氏をはじめ、
三澤慶氏、高橋広樹氏(ともに全日本吹奏楽コンクール課題曲作曲者)ら錚々たるメンバーが揃い、初期には東洋人初のウィーン・フィル団員となったチューバ奏者・杉山康人氏も在籍したとか。希少動物が奏でるユーモラスかつ真摯な音楽に、あなたも耳を傾けてみては?
取材協力:(株)スーパーキッズ、三澤慶