ジャズ、ボサ・ノヴァ、ファンク、歌謡曲など、さまざまな音楽的要素を取り入れたハイブリッドなサウンドと、独創的な歌詞の世界で人気を集めるモダーン今夜。そんな彼らが約2年ぶりとなる4thアルバム『天気の存在する理由』を発表。メンバー脱退を経て、バンドとして新たな一歩を踏み出した、モダーン今夜の現状と今後についてヴォーカリスト、永山マキに話を訊いた。 グルーヴィなリズムの上でメロディが踊るように鳴り響き、まるで飛び出す絵本のように、カラフルに彩られた10篇の物語を立体的に浮かび上がらせる──。モダーン今夜のニュー・アルバム『天気の存在する理由』は、聴き手の心のど真ん中を爽快に射抜くポップで力強い“うたごころ”がダイレクトに伝わる会心の一枚に仕上がった。11人から7人へと、バンドの編成自体はコンパクトになったものの多彩な音楽的要素を柔軟に取り入れた振り幅の広いサウンドは今作でも健在だ。
「メンバーが抜けたことで、パワー・ダウンしたように受け取られてしまうのが嫌だったんです。もちろん今の編成になったからこそ、出来ることもたくさんあるはずだし。今回のアルバムでは、バンドの変わらない部分と変わった部分を両方出せればいいなと思ったんです」(永山マキ/以下同)
2006年10月に発表したソロ・アルバム
『銀の子馬』で、パーソナルな世界観を徹底的に追求したことで、バンドに対する意識も以前とはまったく違うものになったのだという。
「ソロ・アルバムを作ることによって、バンドで歌うことの楽しさに改めて気づかされたところがあって。掛け算できることの素晴らしさというか。メンバーが意見を持ち寄ることで、曲のイメージが一気に広がったり。それって、やっぱりバンドならではの魅力だと思うんです」
キーボードのタムと永山が中心になって手掛けていたという楽曲のアレンジに関しても、今作ではメンバー各自のアイディアが随所に反映されることとなった。
「編成がコンパクトになったことで、意思の疎通を取りやすくなったところはありますね。だから今回のアルバムはみんなで話し合いながら作り上げていったようなところがあって。そういった意味では、全体的にすごく“バンド感”が増したような気がします」
大人になるにつれ複雑になっていく人間関係の難しさを俯瞰的に描いた「オトナ」、プレッシャーを抱えながら生きざるをえない現代人の心情と、常に活躍することが義務付けられている戦隊モノ・ヒーローの葛藤を巧みに重ね合わせた「RED」、森羅万象の連なりを簡素な言葉でリリカルに紡ぎあげた「天気の存在する理由」など、永山の手による独創的な歌詞の世界も、さらに味わい深さを増している。
「バンドの色を反映させたいなと思って、今回、何曲かでタムくんと一緒に歌詞のアイディアを練っていったんです。自分以外の視点が加わることで、結果的に、すごくストーリー性に富んだ歌詞を書くことができたんじゃないかって。できれば歌詞カードもじっくり読んでほしいですね」
バンドとして新たな一歩を踏み出したモダーン今夜。取材用資料の表紙に書かれた〈この世界の全てに、きっと理由がある〉という力強いコピーからも明確なように、彼らは今作で迎えた、さまざまな変化を決して偶然ではなく、必然的なものとしてとらえている。
「11人から7人に編成が変わって、それって寂しいっちゃ寂しいことなんだけど、実は当たり前のことだと思うんです。生きていれば、それぞれ考え方も変わってくるし、こうやって7人が同じ方を向いて歩いていること自体、奇跡的なことだと思うから。もちろん、これまでの活動があってこその、今だと思うんで、バンドを離れてしまったメンバーにもリスペクトの思いを持ちつつ、これからも、今までどおり前に進んでいけたらいいなと思います」
取材・文/望月 哲(2008年1月)