ゆら帝・坂本のリミックスも収録。さらなるクリエイティヴィティが発揮されたStoned Green Applesの2ndミニ・アルバム

2009/04/23掲載
はてなブックマークに追加
ゆら帝・坂本のリミックスも収録。さらなるクリエイティヴィティが発揮されたStoned Green Applesの2ndミニ・アルバム
 ギター&ヴォーカルのAyaと、ドラム&ヴォーカルのCassによるレディース・デュオStoned Green Apples。2008年4月にリリースしたデビュー・ミニ・アルバム『A red strange fruit was crushed with a little plosive sound, then it left me a green one. i bite it once in a while when it rains.』で天真爛漫なハードコア・サウンドを披露し、各方面で話題を呼んだ彼女たちが約1年ぶりとなる新作『Will You Marry Me?』を発表する。坂本慎太郎(ゆらゆら帝国)によるリミックスを含む今作について、ふたりに話を訊いた。
 
 AyaとCassによるレディース・デュオStoned Green Apples(以下、SGA)の新作『Will You Marry Me?』には、彼女たちなりの楽しみ方の過程だったというデビュー以来の活動の成果が充ち満ちている。
 「最初のレコーディングのときはいろんなことを参考にしたり、具体的にこんな風にという準備をしたんですけれど、今回のレコーディングに関してはもっと自然にやって、自然にこうなったって感じがしますよね。とりあえずある曲を今のテンションでやってみたら、こういう曲になった」(Aya)
 「最初はあんまり作りこまないで、というのがあったのでシンプルな感じを目指してやったところもあったし。今回のアルバムは、そこまでレコーディングのときに意識していなかった。もともとあったアイディアをふたりでスタジオに持ち寄るという作り方は変わっていない気がします。まとまるのはここ(クルーエル・レコードのスタジオ)なんじゃないかな」(Cass)





 「よくわからない部分を作りたかった。曇っている空みたいなものが入っていると詞とよく合うんじゃないかと思って」(Cass)「この曲に関してはパワフルだけれど丸みのある音は出ているような気がする」(Aya)と、録音されたピース・ミュージック(※ゆらゆら帝国らが録音を行なっている東京郊外のレコーディング・スタジオ)のアンビエンスを活かしたかったと語るカオティックでイマジネイティヴな「CAI」、クルーエル・レコードのコンピレーション『The Future is Yours』に収録されていたエイコンfeat.スヌープ・ドッグのカヴァーのニュー・ミックス「I Wanna Fuck You(2009 Mix)」、原曲のサイケデリアをあっけらかんと暴きだす、ゾンビーズのカヴァー「ふたりのシーズン」、アメリカの学園映画をイメージしたという「Lipstick」など、サウンドの広がりとともに、さらに伸び伸びとクリエイティヴィティが発揮されている。そしてふたりが敬愛し、オファーのアイディアを出したゆらゆら帝国によるリミックス「Sugar K(Yura Yura Teikoku Remix)」は、かねてからガール・ポップに潜むマッドなテイストを愛してきた坂本慎太郎による、このところのディスコ・モードが全開になった、実にらしい仕上がりだ。
 「ドラムとギターだけだから、このコードで、と合わせる必要がないじゃないですか。だからより立体的に作れる。ライヴをするのも曲になるし、レコーディングするのも曲になるんですけれど、レコーディングは思っていることを文章に書くみたいな、“あ、こういうことを考えていたんだ”みたいなことが分かる感じがする」(Aya)
 ニューヨーク、ブルックリン界隈のローファイ/シューゲイズ・リバイバルの流れ、DFAがリミックスするインディ・バンドのアシッド感、レフト・フィールドなディスコ/ハウスの新たなフェーズ……SGAのサウンドとたたずまいはそうした、さまざまなリンクを想起させるけれど、クリエイターたちにとってのアイディアの触媒装置としてのガーリー感とはいささか異なるような気がする。「〈Girl's Don't Marry〉はインディペンデントを目指す女性へのSGAからの表明ですか?」という質問を笑って否定するが、ガレージーなサウンドに〈Girls〉〈Don't〉〈Marry〉という単語連呼する、そのカンペキな音のフォルムをふたりは、たしかに皮膚感覚として持っているのだろう。『Will You Marry Me?』には結果として、ダイナミックなガレージネスが、なんらかの枠組みにもたれかかったりすることのない音と存在感として、ごくナチュラルに浮かび上がってくる。


取材・文/駒井憲嗣(2009年4月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015