ジャマイカ人の父と日本人の母の間に生まれたWillie(ウィリー)と、日本人のNoriからなる2人組ユニット、
Vijandeux(ビジャンドゥ)。2人の地元・千葉県柏市で2006年に結成して以来、彼らの奏でるポジティブなサウンドはすでにたくさんの人を魅了してきたが、さらに多くの人を笑顔にする時がやってきた。来たる5月27日、1stシングル
「ビューティフル・ネーム」でメジャー・デビューすることが決定! ジャパンの“J”とジャマイカの“J”を意味する“J-POP”をテーマに音楽を生み出す彼らに、今作についての話題を含むデビュー直前インタビューを敢行した。
5月27日にメジャー・デビューを果たすVijandeux。聞き慣れないこのユニット名は“Vision”と“deux(フランス語で“2”の意)”を用いた造語で、そこにはWillieとNoriが繋いでいく“未来のビジョン”とWillieの中にある“2つのカルチャー”の意味が込められているという。そんな彼らが記念すべきデビュー曲に選んだのは、1979年にリリースされた
ゴダイゴの名曲「ビューティフル・ネーム」。その理由は
「この曲の“Every child has a beautiful name”というピースフルなメッセージにVijandeuxとして表現しようとしている世界観に共通するものがあったから」(Willie)。そこに2人の音楽的ルーツを落とし込んだ結果、レゲエ・アレンジが心地いいだけでなく、新たに加筆されたオリジナル・パートが楽曲にエッジを利かせた、新生「ビューティフル・ネーム」が誕生した。
「実際の作業としては、2人でセッションしているうちにできたって感じなんですよ。“たしかこんな感じだったよね?”って言いながら。完成後にオリジナルを聴いたら、譜割りからして全然違ったんですけど(笑)。でも、コレはコレでいいじゃんってことになって、今に至るんです」(Nori)
「なので、僕らが新たに加えたパートも、セッションの中で感覚的に生まれたっていうか。レゲエのラバダブ・スタイルも、もともとある曲にまったく違うメロディを入れ込むっていうことがよくあるので。今回もそのノリで“もうちょっと曲の中にバウンスを入れて、そこに自分たちの自己紹介という意味も込めてアコギをハメてみようよ”って。そうなったらもう、細かい打合せとかはナシで、とりあえずやってみるだけです」(Willie)
「ただ、付け足した部分はほんの一瞬のところなので、歌詞には気合を入れました。短いところだからこそ、聴く人に刺さるメッセージにしたかったんです」(Nori)
聴く人に刺さるメッセージ──Vijandeuxの魅力は、まさにそこだろう。というのも、話がカップリング曲「Voice in the Sun」に及んだ際、彼らはこの曲の誕生秘話を次のように語ったのだ。
「僕らはいつも曲に対していろいろディープなことを考えるんですよ。〈Voice in the Sun〉もまず、“最近あったかくなるのが早くなってきたよね”ってところから始まって、それって温暖化の影響かなとか、渋谷とかにいる若者ももうゴミのポイ捨てはヤバイと思ってるんじゃないかとか、そういうスケールのデカい話になって……。けど、地球をどうするかっていうことを本気で考えてもすぐにどうにかすることなんてできないから、曲の中では結局、今の自分にできることは何かっていうことを考えて、まず自分の大切な人を守りたいっていうことを書いてますけど。この内容に落ち着くまで、いろんなことをめちゃくちゃ考えてるんですよね」(Willie)
「それってきっと、考え過ぎなんだと思います(苦笑)」(Nori)と自嘲するが、そうでないことは「Voice in the Sun」を聴けば瞭然。彼らが時間をかけて話し合い、イメージを膨らませた最大限のものから厳選するからこそ、その言葉に勇気づけられるリスナーは多いはずだ。そして彼らもまた、自分たちの音楽の理想型を「より多くの人たちの役に立つ存在でありたい」と語る。こうした想いの循環のもと、2人の未来は無限大に広がっていくことだろう。
取材・文/片貝久美子(2009年4月)