フルカワミキが昨年発表した2ndアルバム『Bondage Heart』は、バンド・サウンドを追究したカラフルなロック・チューン満載のアルバムだった。それを、クラブ・シーンで活躍するアーティストやロック・バンドなどにリミックスを依頼しパッケージングしたのが、この『Bondage Heart Remixes』だ。
「元々リミックスしてもらうのは好きなんです。特に『Bondage Heart』は、一発録りや生音を切り貼りして作った曲が多かったので、クラブ・シーンの人を中心にリミックスをお願いすることで、原曲のニュアンスが変わるし、いろんな発見もできて。それに、原曲のイメージから離れる人と離れない人もいたりする。そこでリミキサーのアーティスト性が出たりするので面白いなって。自分の中のインプットやアウトプットを増やしてくれて、刺激になりますね」
洋邦ジャンル問わずのリミキサー陣が参加した本作は、とにかく音のバリエーションもさまざま。アップルズ・イン・ステレオによる「B.B.M.」は浮遊感を増したソフトなサイケデリック・ロックへ。デイデラスが手掛けた「ジョナサン」はエキゾチックなミニマル・ブレイクに変身。クドゥによる「Luminous Wind」は
「外に向かって広がるような原曲を、陰りのあるインナー・ワールドにしてくれて、刺激を受けた」という。
iLLが手がけた「ブルーのスワロー」は、“I WISH”という言葉をひたすらループし、BPMがじわじわと上昇していくテクノ・チューンへ。DE DE MOUSEによる「B.B.W.」は、アップリフティングなピアノ・ロックへとチェンジ。ひと癖もふた癖もあるリミックス・チューンの中でも、彼女が特に印象的だったのは、Y.Sunahara(砂原良徳)によるメランコリックでダウンビートな「Long Hair」と、田中フミヤによるミニマル感たっぷりの「C.Stereo」だという。
「元々〈Long Hair〉は、土臭くてビートが3拍子だったりする曲だから、砂原さんの普段の音とは違う感じなんです。それをプロデュ−ス曲みたいに違った角度で作ってくれたのはうれしかった。あと田中フミヤさんって普段歌を乗せない人なのに、歌を乗せたミニマルなサウンドに仕上げてくれて。なおかつ8分あるんですよ。それくらいの時間が必要なのも分かったし、去年、私の中でミニマルがキテたから、聴いてドンピシャって感動しました」
踊れる曲もあれば、ディープに浸れる曲もある『Bondage Heart Remixes』。フルカワミキとリミキサーの化学反応によって生まれた、他にはないファンタジックな世界観にぜひ触れてみてほしい。
「元のアルバムって基軸はあるけど、違う感覚や違うテンションで聴けるものになっているので、もしかしたらこっちの方がハマるって人もいるかもしれないですね。ライトに耳障りも変わってたりするから、家や作業してるときにでもBGMにもなってくれると思います」
では最後に、彼女自身の最近の活動について聞いてみよう。
「次の作品に向けての環境作り中で、地道な活動をしてます(笑)。あと、時間が空いたときにDJを何度かやってて。かける曲は、ミニマルだったり、
リンドストローム、
ティム・デラックス、ボーイズ・ノイズとか。DJをやってみて、客層によって音楽の受け取り方違うんだって体感しました。現場の様子が分かったり、面白いし刺激になってます。楽曲制作の方も進行中で、実は、すごく気に入ってる曲ができているんです。でも、これから自分内モードが変わるかもしれないし、どうなるかなって(笑)。そんな感じで、しっかり生きてます(笑)」
取材・文/土屋恵介(2009年4月)
〈『Bondage Heart Remixes』リリース・パーティ〉
●5月23日(土)
●東京・六本木SuperDeluxe
●開場&開演19:00
●料金:前売り/2,000円 当日/3,000円
●ライヴ:フルカワミキ with 勝井祐二 & iLL、Jimanica×Ametsub、NYANTORA/DJ:KAGAMI、GONNO/VJ:ROKAPENIS、TSUTSUI Masato