リード・シングル「Boom Boom Pow」が10週以上にわたって全米チャートの首位をキープするなど、ニュー・アルバム『The E.N.D.』のリリースに向けて最高のスタートをきったブラック・アイド・ピーズ(BEP)。ファーギーやウィル・アイ・アムのソロ活動を経た今回の新作では、流行のエレクトロ・ミュージックのエッセンスを全面に打ち出している。
「前作の『モンキー・ビジネス』や私のソロ・アルバム『プリンセス・ファーギー:The Dutchess』はもちろん特別な作品だけど、その成功が今回の制作に影響を及ぼしているかというと、そんなこともないの。BEPは過去のことはあまり気にしないのよ。私たちは常に未来を見てる。とくに今回は自分たちの音楽を次のレベルに持っていこうと努力したわ。その結果、エレクトロ・ミュージックという新しいツールをBEPのファクトリーのなかに融合することに成功したの」 (ファーギー)
『The E.N.D.』のフューチャリスティックな音像は、BEPの新しいヴィジュアル・イメージにも大きな影響を及ぼしている。いまやファッション・アイコンとなったファーギーのスタイリングに注目しているファンも少なくないだろう。
「今回はヴィジュアル面でも大きな変化があるわ。強いて言うなら、映画『マッドマックス』の世界観に近いかな? いま私の髪はブルネットだし、ウィルはドレッドを全部切ったの。タブーも髪を切ったわ。アップルは毎日のように新しいデザインの髪型にしてるしね。自分たちが新しいと感じることを表現するためには、賭けに出ることも怖れないわ」 (ファーギー)
アルバムはアップリフティングなパーティ・トラックで占められているが、バラク・オバマ大統領の誕生にインスパイアされた「Now Generation」など、ポジティヴなメッセージ・ソングも散見できる。
「〈Now Generation〉は若者たちのエネルギーを祝福する曲なんだ。この“ナウ世代”がいなかったら、きっとオバマはいまホワイトハウスにいなかっただろうね。彼らはすごいんだよ。アメリカだけじゃない、ヨーロッパ、韓国、ブラジル、アルゼンチン、中国、そして日本。みんなが小さなコンピュータでつながってるんだ。この世代は世界のあらゆるところにいるんだよ」 (ウィル・アイ・アム)
常に未来を見据えて新しい音に果敢に挑みながらも、ヒップホップやダンス・ミュージックの根源的な“Fun”を決して忘れないBEP。そんなグループの真摯なアティテュードは、“The Energy Never Dies”(エナジーは死なない)を意味するアルバム・タイトルからも垣間見ることができる。
「俺はファーギーが考えついたアルバム・タイトルをすごく気に入ってる。『The E.N.D.』は“The Evolution Never Dies”(進化は決して死なない)って意味にもなるからね。この新作を通じて、俺たちが大好きなアンダーグラウンドの音楽をメインストリームに押し上げることができたらいいな。それが音楽シーンにとってポジティヴに働けば最高。俺たちがやろうとしているのは、すごく野心的なことなんだ」 (ウィル・アイ・アム)
取材・文/高橋芳朗(2009年3月)