幼少期から“天才ドラマー”として注目され、Char、シンディ・ローパー、フォール・アウト・ボーイなど数多くの国内外の有名ミュージシャンと共演。レッド・ツェッペリンのロバート・プラント、ディープ・パープルのイアン・ペイス、クイーンのロジャー・テイラー、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミス、フー・ファイターズのデイヴ・グロールらに称賛されるなど、世界的な注目を集めているYOYOKA。2022年9月からはアメリカに移住し、現地のミュージシャンとセッションを行なう一方、オリジナル楽曲を制作するなど音楽家としての幅を広げ続けている。
今年10月に15歳になる彼女に、アメリカ移住後の活動、そして東京発の新進気鋭の音響ブランド「Layfic Tone®」とのエンドースメント契約について聞いた。また、Layfic ToneではYOYOKAモデルのヘッドフォンの企画が進んでいるという。
――YOYOKAさんは2022年9月にアメリカに移住。オークランドでOakland School For The Artsに通い、現在はロサンゼルスに拠点を置いていますが、アメリカに移ってからの1年数ヵ月を振り返ってYOYOKAさんが得たものとは?
「すごくたくさんありますね。まずは素晴らしいアーティストのライヴをいっぱい観ました。スティングやイーグルスなどのビッグ・ネームもそうだし、小さなジャズ・バーでも有名なミュージシャンが演奏しているんですよ。たとえばトゥールのダニー・ケアリー、ジャーニーのスティーヴ・スミスだったり。そういう人たちの演奏を間近で見たり、直接話す機会があるのはすごく大きいです。プレイヤーとしては老舗ライヴハウスのウィスキー・ア・ゴーゴーで毎月叩いていて、そこでもいろんなミュージシャンと演奏しているし、たくさんの出会いがありますね」
――同世代のミュージシャンとの交流もあるんですか?
「少しずつ増えていますね。日本にいたときから同じくらいの世代のミュージシャンとバンドを作ってみたかったんですけど、なかなかメンバーが見つからなくて。アメリカに来てからも探していて、ちょっとずつ出会いも増えているんですよ。トム・モレロ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)の息子のローマン・モレロがギターをやっているんですけど、彼と友だちで。毎週金曜日にトムの家に行って、一緒に演奏しています。あとはプロデューサーのドクター・ルークの娘さんが私のライヴによく来てくれて。彼女も歌とギターをやっていて、“バンドやろうよ”と話しているんです」
――すごい。アメリカに行かないと知り合えなかった人たちですよね。
「そうですね。アメリカに行ってから、全く想像していなかったことが毎日のように起きているんです。そのなかには良いこともそうじゃないこともあるんだけど、想像の斜め上の出来事ばかりです」
――アメリカに行ってからジャズやフュージョンにも興味を持つようになったそうですね。
「それまではポップとロックが中心だったんですけど、オークランドはジャズやファンクが盛んで、通っていた学校でもジャズをやったり。ロサンゼルスに移ってからはジャズ・フュージョン系のバンド(Ken Okada Group)に参加したり、たしかにジャズに触れることが増えていますね。ドラムの技術や叩き方の幅も広がったと思うし、今はいろんなジャンルが混ざっている感じです」
――リスナーとしても幅が広がった?
「ふだん聴くのはロックではなくて、ポップとファンクが多いですね。いいなと思えば聴くという感じだし、ポップとファンクの境目もよくわからないんですけど(笑)。アース・ウインド&ファイアーやジャミロクワイも大好きです。ヘヴィ・メタルとパンク以外は結構いろいろ聴きます」
――パンクはドラマーとして興味が持ちづらいのかも。
「演奏の質が違うというのかな。リンダ・リンダズのメンバーとは友だちで、仲がいいんですけどね(笑)」
――4月には渡米後初のYOYOKA名義のオリジナル曲「Hello Sunshine」がリリースされました。作曲のスキルも上がっているのでは?
「曲作りは日本にいた頃からやっていたんですけど、学校でもコードのことを学ぶ授業があったり、知識は増えていると思いますね。あとはLogic Pro(作曲、録音、編集、ミキシング機能を備えたデジタルツール)でデモを作るようになって。制作中の自分名義のオリジナル・アルバムを、まずはしっかり作り上げたいなと思ってます。いろんなミュージシャンやプロデューサーと何曲も並行して作ってるんですが、お願いした期限までに戻ってこないこともあったり(笑)。曲によってジャンルが違っていて、私がやりたいことを形にする場合もあるし、相手のジャンルに合わせることもあって。すごく楽しいし、得られるものもたくさんありますね」
――ドラマーとしての活動はもちろん、音楽家として幅を広げたいという気持ちも?
「それはすごくあります。そのために自分のアルバムを作っているところもあるし、自分の音楽性をもっともっと広げたいですね」
――YOYOKAさんはすでにオリジナルな存在だし、“こういう人になりたい”というモデルがないのでは?
「そうかもしれないです。小さい頃からマイケル・ジャクソンやプリンスを聴いていて、とくにプリンスは憧れというか、リスペクトしています。ミネアポリスのプリンスのスタジオを見学させてもらったこともあるんですけど、マルチプレイヤーだったり、自分でレコーディングからミックスまでやれるのもすごいなって。自分のアルバム制作でもミックスに関わっているので、少しずつ学んでいきたいですね」
――期待してます! YOYOKAさんは自分の考えを伝えるのがすごくうまいと思うのですが、以前からそうなんですか?
「基本的にはこういう感じですね(笑)。話すのも好きだし、アメリカに移住してからもっとポジティブになったんじゃないかな。いろんなことが起こりすぎたし、ひとつひとつ乗り越えてきたので、何とかなるだろう精神が強くなったというか。生きてれば大丈夫! という感じになりました」
――すごく力強いですね。日常生活も前向きに楽しんでますか?
「はい(笑)。周りを見回すだけでいろんな肌の人がいるし、多様性を感じられて。友だちと音楽の話をすることもあるし、普通に笑える話とか、どうでもいい話もしていて。楽しくやってます」
――ところで、6月には東京のヘッドフォン・ブランド「Layfic Tone®」とエンドースメント契約を締結しましたよね?
「そうなんです。きっかけは『The NAMM Show 2024』(2024年1月に米アナハイムで開催された楽器見本市)ですね。Layfic Toneで通訳をしている方と知り合いで、“ブースに遊びにおいでよ”と誘っていただいて。そのときに初めてLayfic Toneのヘッドフォンを使ったんですけど、すごく良かったんですよ。最初見た時、見たことない個性的な感じでおしゃれだなと思って。着けやすいとことか私は好きで、デザインもかわいくて」
――見た目かわいいとテンション上がりますよね。
「上がりますね」
――なるほど。YOYOKAさんは普段からヘッドフォンを使ってますか?
「はい。しっかり音楽を聴きたいときは、いいヘッドフォンかモニタースピーカーがいいなと思っていて。父がレコーディングやミックスをする人だったので、私は子供の頃からいいモニター環境で音楽を聴いていました。ヘッドフォンは一人で集中して聴けるし、立体感を感じられるのもいいですよね。基本的に洋楽を聴くことが多いんですけど、そうするとロー(低音域)がほしくなるんです。とくにアメリカはロー(低音)社会で、ミックスダウンやマスタリングでもものすごいローを出す。コーチェラ(アメリカの大きなフェスの一つ)に行った時も、会場の音は整理されててローがしっかり出てた。なので、まずはローがしっかり出ていて、ミドル(中音域)、ハイ(高音域)がバランスよく出ているのが個人的には聴きやすいですね」
――洋楽と邦楽のサウンドメイクやミックスバランスはかなり違いますからね。この機種はどうでしたか?
「初めからローが出てたし、その辺のバランス良くて聴きやすかった。でも、(ローの強い)洋楽を聴いた後でも邦楽も魅力的に聴けますね」
――ドラムのキックやベースラインとかも、ヘッドフォンによって聴こえ方が違いますからね。
「私はドラムよりベースを聴いちゃうんですよ。ベースラインがカッコいいと“いい曲”だと思うし、とくにファンクはベースラインが大事じゃないですか」
――Layfic Toneのヘッドフォンは今後の音楽活動で使えそうですね。
「そうですね。制作中のアルバムのミックスでも使っているんですけど、どの音域もしっかり聴こえてて。モニター・スピーカーで聴いたときとの差が全然ないんですよ。だから、ミックスもしやすくて。音がめちゃくちゃよく聞こえる。ドラムを叩くときにも数回使ってみたんですが、いい音質だったので使っていきたいですね」
取材・文/森 朋之
撮影/西田周平