独特の“スラッジ”感はストーナー・ロックの源流となり、モーターヘッドとMC5が正面衝突、ブルーチアーが看病したような音楽性は“グランジ”の雑食性・時代性を如実に表している……と筆者が信じるバンド、マッドハニー。バンド自体も不当評価だ! と声を荒げたいところですが、本作『Piece Of Cake』は、なかでも特に評価が低いと思われるメジャー盤。ニルヴァーナの『NEVERMIND』発売の翌年リリース。1曲目は当時日本でも猛威をふるった“デス・テクノ”(ジュリアナズ・トーキョー! と絶叫するレジデントDJ ジョン・ロビンソンでおなじみ)を人力でプレイ、最後に「Piece Of Cake(=スラングでちょろいの意味)」とヒトコト。痛快。これがグランジ・ムーヴメントだったと断言します。響きわたるファズ・ギターの疾走感と骨抜きヴォーカル。マーク・アームがカート・コバーンにならなかった理由は、すべてこの1曲目に現れていると思う、歴史的名盤。(服)