PC Audio ExtraPCオーディオエクストラ〜パソコンから始める新しい音楽の楽しみ方
ディスクに吹き付けて拭き取るだけで音が良くなる!CDの音質を改善して
PCオーディオを楽しむ文/小原由夫
CD/DVD/BD用音質改善液
ナノテック・システムズ Nano Clean Z
¥3,990
CDをリッピングする機会が
圧倒的に多い PCを用いてCDをリッピングしてNAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ/ハードディスクにLANインターフェイス、OSなどが組み込まれ、PCで管理できる機器)に取り込み、日常的にはフィジカルなディスクを操作せずに音楽を楽しんでいる人が多くなってきた。斯く言う筆者もその一人で、一昨年にリンのMAJIK DSを導入して以来、愛聴盤やかつてよく聴いた懐かしいCDアルバムをせっせとリッピングしている。高音質の音楽配信サイトにアクセスし、気になる音源をダウンロードすることもあるが、やはり手持ちの音源をデジタルファイル化する頻度が圧倒的に多い。
オーディオ用に使っている当方のPCは、今春新調したWindows7-Professional搭載のノート型だ。ほかの用途(ネット検索やメール送受信など)には一切使用しないPCオーディオ専用である。というのも、バックグラウンドでアプリケーションが動作していたり、複数の処理を同時進行させていると、CPUのパワーがダウンし、確実に音が悪くなるからだ。また、振動や騒音を防ぐため、内蔵記憶装置はHDDではなくSSDで、ディスクドライブなども装備していないものを選んだ。HDDは回転メカを持っているので確実に振動源となって音質をスポイルする。SSDは固体メモリーなので振動は皆無。ディスクドライブを非装備としたのも同様の理由からで、節目に応じて最新かつ最良のドライブを外付けで準備したほうがスマートという判断からだ。
最近は、フリーウェアの再生ソフト(プレーヤーソフト)を数種類駆使して音の違いを楽しんでいる。前述したようにPCのコンディションをシェイプアップして先鋭化していくと、同じコンテンツでも再生ソフトの違いによって微妙な音の変化が感じられ、実におもしろいのである。プラグインも変えたりしながら、この楽曲にはこの再生ソフトが合う、こちらにはこのほうが雰囲気が出ていい、といった具合にハマッているのだ。
音場感が広々として、明らかに音質は向上した そんな風にPC周りに気を使っていくと、次に気になるのはリッピングするCDのコンディションだ。目に見える傷やゴミの付着はもちろんだが、指紋の油分やマイクロダストなど、判別しにくい汚れもある。なおかつ、レーベル面に使われたプリントや顔料の影響で、静電気を帯びていたり、帯磁(磁気を帯びてしまう)していることもある。個人的には、リッピングする前に念のためCDの記録面をチェックしているが、肉眼ではわかりにくい汚れもあるし、ましてや静電気や帯磁はわかりようがない。古いCDをリッピングする場合などは余計気になる。
筆者は、ナノテック・システムズのCD/DVDファイナライザー「Nespa Pro」を愛用しているが、この度同社がリリースしたディスク・クリーニングとコーティング液のセット「Nano Clean Z」を試す機会を得、これはリッピング時に十二分に活用しなければと感じたのでご報告したい。
クリーニング液「N-1」は、独自の電解水とIPA(イソプロピルアルコール)を高純度水と組み合わせたもので、製造過程で付着したディスクの極薄膜を除去し、ピックアップからのレーザー光線をスムーズに内側に導き入れるのを助けるという。コーティング液「N-2」は、有機導電体と銀の超微粒子が電解水と高純度水に分散されている。それがディスク表面に付くことで、光学的な透過性を改善するとともに、有機導電体が表面の凹凸を埋め、レーザー光の導入と取り出しを助ける。と同時に、ディスクに帯電した静電気を除去し、さらなる帯電を防ぎ、ゴミの付着を抑えることで、ピックアップの負担を軽減する結果、音質の向上につながる。
Nano Clean Zは2種類の音質改善液と拭き取り用不織布のセット。
使い方は至って簡単だ。N-1、N-2ともスプレー式なので、ノズルを押してディスクの信号面の3〜6箇所に噴射し、付属の拭き取り用不織布「ナノテック・ワイピングクロスNW-1」で小さな円を描くように塗布していく。意識としては、N-1は拭き取るように、N-2は磨くように伸ばすといい。ちなみにNW-1は、アクリル系の極細繊維を分割し、和紙製造技術を応用して長繊維のまま不織布化したもの。つまり、ほつれにくい。繊維の太さは約3〜10マイクロメートル。一般の不織布の1/4以下の太さで、断面が丸くないため、吸水率が高いという。
スプレー式の音質改善液をディスクに吹き付け、付属の不織布で拭き取る。
さっそく、ちょっと古いディスクや細かなスリ傷が付いたCD(CDポーチなどの出し入れで意外と傷付いている)を処理してリッピングしてみた。いい音で録れている。ただ、オリジナルと比べてどの程度よくなっているのかがわかりにくい。
そこで、一旦処理したCDを無水アルコールで拭き取り、それを試聴した後、再びN-1、N-2で処理して比較試聴してみた。すると、音場感がより広々としているのがわかる。また、トランジェント感が高まり、微かな音のニュアンスが一段とハッキリするような傾向も感じられた。N-1、N-2での処置後は、明らかに音質は向上している。
クリーニング/コーティングを施したからといって、リッピングの処理スピードが早くなるとか、目に見えてエラー訂正が減るということはない。しかし、微視的には信号の読み取り精度は高まっているはずだ。
一方で、最近増加傾向にある“宅録”なる、いわゆるアマチュア音楽家の自家録音のデータをCD-Rに焼く際などにも、本品は重宝に使えることだろう。
CDを半永久的だと思ったら大間違い。ポリカーボネートと信号面の貼り合わせが悪くて湿気が侵入したり、スリ傷などからマイクロダストが混入するなどして、二度と聴けなくなってしまった事例はたくさんある。リッピング時に限らず、本品のようなアイテムを使って日頃からケアしておくに越したことはないのである。