PC Audio ExtraPCオーディオエクストラ〜パソコンから始める新しい音楽の楽しみ方
電源を強化して高音質化を図ったコンパクトな音楽専用静音パソコン
オリオスペック canarino 1
試聴・文/大塚康一
Photo:Shigeru Uchiyama
「canarino 1」 ¥139,800
●CPU:Intel Atom Z530 1.6GHz●メモリー:1GB●ストレージ:40GB(SSD)●端子:LAN×1、mini USB×2(フロント)、USB 2.0×4、HDMI×1(DVI変換ケーブル付属)、RJ-45×1、Mini SDスロット●外形寸法/重量:115W×27H×101D/370g(本体)、110W×62H×200D/1.2kg(電源部)
●問い合わせ:オリオスペック http://www.oliospec.com/
中高域の歪感がなく、
低音もしっかりしてくる たとえパソコンを核に据えたPCオーディオであっても、音質を追求するのであれば、オーディオとしての定石を踏まえることは重要だ。その基本は、やはり電源である。完全ファンレス化の静音パソコン(既報の高級リッピングサーバーhashも同種)などを扱うショップとして著名なオリオスペックが本格的なオーディオパソコンを手掛けるにあたり、そこに注目したのは見識といえるだろう。
リアパネルに4系統のUSB 2.0とHDMI(DVI変換ケーブル付属)、RJ-45端子を装備する。
音質を重視した3点支持の金属製インシュレーターが付属(ゴム脚も付属)。
本体の幅はCDとほぼ同じ11.5cmとコンパクト。
オリオスペックの音楽用静音パソコン「canarino(カナリーノ)1」は、もともと同店で販売されていたCompuLab社製の超小型高性能PC「Fit-PC2」にオーディオデザイン社の「DCA-12V」をカスタマイズした安定化電源を組み合わせたシステムである。OSは未搭載だがオプションにてWindows7のプリインストールサービス(+12,800円予定)も用意されている。このスイッチング電源はディスクリート構成で低ノイズ&低インピーダンスのハイクオリティなものだが、出力電圧はDC12Vなのに出力電流は1アンペアしかない。通常のパソコンでは無理にしても、低消費電力型のFit-PC2は問題なく動作する。同店によれば、標準のACアダプターと比べ、DCA-12Vを繋いだときの音の違いは歴然という。なお、付属の電源ケーブルも特注で、音質を考慮したため短く、シールドなどもしっかりしているものと見受けられる。canarino 1の本体は非常にコンパクトなので、横に並べて設置してもまったくスペースを取らない。ゴム足の他に3点支持のインシュレーターが付属しているのも、音質に配慮した点だ。操作にはディスプレイを繋ぐ必要があるが、それを含めてデスクトップでも違和感なく設置できる。小さいながらIntel Atom Z530/1.6GHzプロセッサーと1GBメモリーを搭載。40GBのSSD(カスタムオーダーでより大容量にすることも可能)を内蔵し、DVI/HDMI、合計6つのUSB、ミニSD、LAN、オーディオ出力など充分な端子類を備えている。CDからリッピングする際はUSB端子に外部ドライブを接続し、SSDに保存すればよいわけだ。ちなみに回転メカのないSSDは、静音面でも音質面でも、ハードディスクより有利といえる。
今回の試聴は、本機のUSB端子から出力したデジタル音声をラトックシステムのDACを介して本誌試聴室のリファレンスアンプに接続した。再生にはWASAPI排他モードで動作する最も高音質なソフトというPlayPcmWinを使ったが、将来的にはWindows対応の推奨ソフトをプリインストールする可能性もあるそうだ。また、お手軽に済ますなら標準のWMPでもOKだ。実際の音質は非常に滑らかで、中高域の歪感がまったくといっていいほどない。低音もしっかりしており、ちょうどCDのレンジが伸びた感じになる。Windows7とWASAPIを活用し、USB出力のメリットを最大限活かして音楽を高音質で楽しむ人のためのシステム……そうしたキャッチフレーズが、決して誇張ではないことに気付かされた。