SHURE SE215 Special Edition
SHURE SE215 Special Edition
オープン価格 10,000円前後■形式: カナル型 ■ドライバ: ダイナミック型 ■再生周波数: 21Hz〜17.5kHz ■インピーダンス: 20Ω ■感度: 107dB ■ケーブル長: 1.16m ■プラグ: ミニ ■付属品: ソフトフォームイヤーピース(S / M / L) / ソフトフレックスイヤーピース(S / M / L) / キャリングケース※お問い合わせ: 完実電気(株)
www.kanjitsu.com 鮮やかなブルーと躍動感あふれる低音をまとった特別仕様
ダイナミック型ドライバーを搭載したシュアのエントリーモデル「SE215」。1万円前後で憧れのブランドの製品が購入できることも手伝ってか、その人気は衰えることを知らない。そして、このたび登場した「SE215 Special Edition」は、その名の通り特別仕様を施したモデルだ。変更が加えられたのは、主に3つのポイント。ひとつは音質だ。端的に言ってしまえば、低域により厚みや躍動感を持たせているのである。これはSE215のユーザーを調査したところ、ロックやポップスを聴く頻度が想定よりも高かったことを踏まえてのものだとか。ドライバーから後方に放たれる空気の流れを、フィルターを用いてチューニングした。
上級モデルと同様、ケーブルは着脱式となっている。
ふたつ目はカラーリング。ハウジング部はトランスルーセント(半透明)ブルーで、ポップすぎず上品な風合いで耳元を飾ってくれる。ケーブル部はダークグレー。そして変更点の最後はそのケーブルにある。長さがベースモデルよりも46cm短く、116cmとしたこと。これは上位モデルのSE535のSpecial Editionでも取り入れられた考え方で、欧米人に比べて背丈の低いアジア人の体型に合わせて設計されている。
上異なる素材の2種類のイヤーピースが
各3サイズ(S / M / L)付属。
キャリングケースも同梱する。
では、この特別仕様モデルで、僕にとって特別なアーティストの作品を聴いてみる。カエターノ・ヴェローゾ。70歳にして常に先鋭的であり続ける芸術家としての佇まいに畏敬の念を抱かずにはいられない。そんな彼の新譜『アブラサッソ(Abracaco)』は、前々作、前作から続くシンプルなバンドサウンドが楽しめる。タイトルトラックで聴けたのは、ドラムスの安定した鳴りと奥行きである。歌とエレキギター、ベース、ドラムスという構成だが、音数の少なさや物足りなさはまったく感じさせない。それどころか、さまざまな声色を使い分けるカエターノの生々しい歌声が引き立ってくるのだ。低域はベースモデルと比較すると確かに存在感が高まっている。しかし、鈍さやこもりが一切ないところに、イヤフォンづくりの上手さを感じさせる。
先月号の特集を飾ったフランチェスコ・トリスターノの『ロング・ウォーク』も聴いてみよう。トリスターノが弾くのは、ヤマハのハイエンドピアノCFX。彼が「世界最高峰のピアノ」と激賞する、ダイナミックで濃密な音色が奏でられる。そんな特有の味わいをこのイヤフォンで堪能できた。高域は刺激的にならず、あくまでもマイルドかつ滑らかなトーン。涼しげなルックスだが、耳の奥をそっと温めてくれるかのようなサウンドである。