新しい音楽リスニングスタイルのためのキーデバイス
USB-DACを使いこなそう
パソコンでオーディオを楽しむことは珍しくなくなってきたが、こうしたPCオーディオの動きは音楽の聴き方に多様な変化をもたらしている。
まずCDという物理的な制約がなくなったことで、CDを超える品質を持ったハイレゾ音源を購入することができるようになった。こうした音源は以前ならばスタジオ関係者しか聴くことができなかったものだ。最近では単に機材が進歩しただけではなく、提供する側の意識も変わってきたことでこうしたスタジオ品質のハイレゾ音源が広く配信されるようになってきた。
一方で、そうしたハイレゾ音源とは別の流れも起こってきている。いま話題のDSD音源である。従来のハイレゾ音源はCDで採用されていた記録方式を拡張したものだが、DSDは根本的に異なっていてアナログに近いようなデジタル記録方式が採用されている。これは元はSA-CDのための記録方式であったが、最近ではPCオーディオに向いた音源として脚光を浴びてきている。以前はDSD音源の対応機種も少なく高価であったが、最近では手頃な価格の機種も珍しくない。またパソコンだけではなく、iPadに代表されるタブレット端末でもオーディオを楽しむことができるようになった。手軽なタブレットで高音質のシステムを組むことができるのである。
こうした新しい音楽の楽しみ方を実践するためには、それぞれ対応したオーディオ機材が必要である。以降の記事でそれらを解説していく。
iPadなどのiOSデバイスから高品位なデジタル信号を取り出す
HRT iStreamer
38,325円■対応サンプリング周波数 / ビットレート: 48kHz / 16bit(最大) ■入力端子: デジタル x 1(iPhone / iPod / iPad用) ■出力端子: アナログ x 1(RCA) ■外形寸法: 129.6W x 22.3H x 58.5Dmm※お問い合わせ: サエクコマース(株)
www.saec-com.co.jp 昨年はiPadに代表されるタブレット端末が話題になったが、このiPadを使用しても手軽でかつ高音質に音楽を楽しむことができる。普通iPadではヘッドフォンで音楽を楽しむが、別に外付けのアンプやドックスピーカーを追加することでより高音質なシステムに発展可能なのだ。しかしLightningコネクター装備以前のiPadをはじめとするiOSデバイスでは、ドックアダプターなどを介してアナログの出力をアンプやドックスピーカーにつなげていたが、この方式ではiPadの内蔵音源に左右されてしまうため音質はあまり期待できない。そこでiPadから直接デジタル出力を取り出してより高音質で再生する方式を採用しているのがこのiStreamerである。
iOSデバイス用に特化した設計のため、
入力端子はUSB1系統のみとシンプル。
コンパクトで場所を取らないため、デスクトップで高音質なオーディオを楽しみたいという目的に向いている。色も落ち着いた白でiPadとはよく合う。ケーブルも長いものが用意されているので、手でiPadを操作しながらでも音楽を楽しめるだろう。
ただし単体ではアンプ機能はついていないので、別にヘッドフォンアンプなどを用意する必要がある。スピーカーならばアンプが内蔵されたアクティブスピーカーと合わせるとよいだろう。
音のクオリティも高く、一つひとつの音が明瞭ではっきりと聴こえる。iPadからこんなにたくさんの細かな音が出てくることに驚くことだろう。
USBメモリーサイズのコンパクトなヘッドフォンアンプ内蔵型
USBメモリー感覚でノートパソコンなどに装着して手軽に使える。
audioquest Dragonfly
27,500円■最大サンプリング周波数 / ビットレート: 96kHz / 24bit ■入力端子: デジタル x 1(USB) ■出力端子: アナログ x 1(ミニピン) ■外形寸法: 19W x 60H x 12Dmm ■重量: 23g※お問い合わせ: (株)ディーアンドエムホールディングス
dm-importaudio.jp 最近の音楽配信の発展により音楽関係者がスタジオで聴くような高品質のハイレゾ音源を家庭でも楽しむことができるようになった。しかしこれにはハイレゾ音源の再生に対応したデジタルコンバーター機材(以降DAC)が必要である。また最近ではスピーカーよりもヘッドフォンリスニングが増えてきているということもあり、最近のオーディオの一つの流れとなっているのはハイレゾ音源に対応したDACとヘッドフォンアンプを組み合わせた、ヘッドフォンアンプ内蔵型のUSB-DACである。
なかでもこのオーディオクエストのDragonflyはUSBメモリーのようなコンパクトなパッケージで、かつハイレゾまで対応した音質の良さが特徴だ。小型ながらもアシンクロナス転送という音質を重視した高度な機能を採用しているところもポイントである。また内蔵されたアナログのボリュームがPC側でのボリューム操作に連動するため音質が劣化することも少ない。
サンプリング周波数が代わると本体のLED色が変わるのが面白いが、これは単なるデザイン以上に意味がある。PCオーディオの初心者は96kHzを再生していると思っていても設定間違いで44kHzのままで再生されていることがよくあるので、こうした機能を有効に活用してセッティング間違いを知ることができる。
このようにDragonflyは小さいながらも本格派の実力を備えている。ノートパソコンでは特に重宝することだろう。
SA-CDに使われている高音質なDSD信号を直接再生可能
CHORD Qute HD
142,800円■最大サンプリング周波数 / ビットレート: [USB]192kHz / 32bit [BNC]384kHz / 32bit ■入力端子: デジタル x 3(USB / 光 / BNC) ■出力端子: アナログ x 2(RCA) ■外形寸法: 160W x 70H x 40Dmm ■重量: 520g※お問い合わせ: (株)タイムロード
www.timelord.co.jp 昨年のPCオーディオ分野でのもっとも大きな話題のひとつがDSD再生である。DSD再生は従来の高品質音源とは根本的に異なる方式だ。DSD自体はSA-CDに使われていた方式だが、それがパソコン上で扱えるようになったことで大きく開花したといえる。
特にDSDネイティブ再生と呼ばれるDSD信号を直接再生できる再生方式が昨年の話題の中心であった。直接再生できることでDSDの魅力を最大限に引き出すことができるが、従来はかなり高価な機材でなければ対応していなかった。それが普及価格帯の機材でも対応可能になったのが昨年である。
デジタル入力は3系統を装備。
USB入力は192kHz / 32bitに対応する。
なかでもコードのQute HDは手頃な価格でDSDネイティブ再生を楽しめるとともに、ハイクラス機の高性能をも取り込んでいるコストパフォーマンスの高さが魅力である。ハイエンドメーカーのコードとしては価格が安い製品というだけではなく、上級機で使われる独自のカスタム回路を採用することで音に妥協のない設計がなされている。高剛性のアルミ切削のシャーシはコンパクトながら質感も高い。上面のユニークなのぞき窓に照明がなされているのもデザインのアクセントになっているが、これは入力に応じて発色を変えることでDSDのネイティブ再生が正しくなされているかを知ることができる意味もある。
DSDネイティブ再生はDoPという標準方式を採用しているので、WindowsやMacで広く使うことができる。ただしDoPに対応した音楽再生ソフトが必要なので注意してほしい。