SHURE SE846
オープン価格 / 99,800円前後■形式: カナル型 ■ドライバ: バランスドアーマチュア型 x 4 ■再生周波数: 215Hz〜20kHz ■感度: 114dB ■インピーダンス: 9Ω ■ケーブル長: 162 / 114cm(着脱式) ■プラグ: ミニ※お問い合わせ: 完実電気(株)
www.kanjitsu.com 音のチューニングも楽しめる4ドライバー搭載フラッグシップ
ノズル内のフィルターを交換するこ
とで好みの音にチューニングできる。
右がノズル交換用の工具。
マイクロフォンだけでなく、いまやイヤフォン、ヘッドフォンシーンをも牽引する存在となったシュア。その動向に注目が集まる中、イヤフォンのフラッグシップモデルが登場した。ドライバーはバランスドアーマチュア型が、なんと4基。すべてこのモデルのために新開発されたもので、低域から高域まで、幅広くカヴァーしようとする狙いだ。特筆すべきは、低域用の2基のドライバーの前方に設けられたローパスフィルターだ。これは複雑なパターンで溝が掘られた10枚の微小なステンレスプレートで構成され、ここを通り抜けることで低域が自然に減衰するのである。開発担当者によると「本物のサブウーファーのような量感のある低域を目指した」という。また、これだけの部品を使用していながらボディはコンパクト。また、ラウンドフォルムで耳へのフィット感は高い。また、シェルはクリスタルクリアと名付けられたほぼスケルトン仕様。あたかも、内部に秘められたシュアのノウハウが覗き込めるかのようだ。
ケーブルはMMCX端子を採用した着脱
式。断線しても簡単に交換できるうえ、
サードパーティのMMCX端子ケーブル
に交換して音の変化も楽しめる。
さらに、もうひとつ音楽に触れる楽しみを広げてくれるフィーチャーがある。それはノズル部分のパーツをユーザーが交換できる、ノズルインサートという機構だ。長さ約15mm、直径約2mmの筒状の部品が3種類付属。サウンドの傾向から「ブライト」「バランス」「ウォーム」としており、その名の通り「バランス」を中心に、高域にフォーカスした「ブライト」、低域に厚みを持たせた「ウォーム」となっている。これはノズルインサートの内部に設けた綿のような素材の取り付け位置や、目の粗さで調整しているのだという。
長さ(162/114cm)の着脱式
ケーブル、キャリングケースなど
付属品は多彩。
さて、奇しくも6月19日、同日に発売となった2作品を聴いてみよう。
高田 漣の
『アンサンブル』と、
伊藤ゴロープロデュースの
『ゲッツ / ジルベルト + 50』である。前者はシンガーソングライターでマルチ弦楽器奏者の約6年振りの新作。後者はボサ・ノヴァの金字塔、
『ゲッツ / ジルベルト』のレコーディング50周年を記念し、日本人ミュージシャンを中心として制作されたトリビュート盤だ。
細野晴臣や
坂本龍一、
原田知世といった参加メンバーが両作品に共通していることも興味深い。『アンサンブル』をノズルインサート「バランス」で聴くと、何ともいえぬまったりと密度の高い音空間が広がる。ヴォーカルやギター、ベースがほどよく混ざってとろりとした味わい。まさに各ドライバーのアンサンブルである。そのテイストは『ゲッツ / ジルベルト + 50』でも同様だ。耳を突き刺すような不自然な解像感は皆無。音楽が持つ暖かな体温のようなものを感じさせる。低域には弾力や立体感も生まれている。また、ノズルインサートを「ブライト」に取り替えるとギターの高域に、輝きがプラスされるようだ。小さなパーツゆえ、交換には慎重にならざるを得ないが、それを補って余りある面白さがある。