[特選ヘッドフォンガイド]低音の迫力と全体のクオリティの高さを巧みに両立させている――Pioneer SE-MX9

2014/07/18掲載
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Pioneer SE-MX9
Pioneer SE-MX9
40,000円

■形式: 密閉型 ■ドライバ: 50mmダイナミック型 ■再生周波数: 6Hz〜40kHz ■インピーダンス: 32Ω ■感度: 106dB ■プラグ: φ3.5mmミニ金メッキステレオ ■ケーブル長: 1.2m ■重量: 305g ■付属品: 付属品:2.0mカールコード(伸張時3.0m) / φ6.3mm標準変換プラグ / 航空機プラグ / キャリングポーチ / ジャックキャップ2個
※お問い合わせ: パイオニア(株) pioneer.jp
低音の迫力と全体のクオリティの高さを巧みに両立させている
 物作りには、大まかにいって二つのアプローチがある。まずひとつ目は、プロが技術の粋をこらして作り上げるという手段。天才と呼ばれる人物や優れたプロジェクトチームによって、新世代の製品を作り上げようとする方法は、製品のクオリティコントロールにおいてはとても有利な手段で、かつ、コンセプトにもブレがない。もうひとつは、マーケティングによる製品コンセプトの確立だ。市場のニーズを徹底的にチェックし、どんな製品が“欲しい”かを把握。それに合わせた製品を作り上げるというもの。こちらは、製品に対するブランドポリシーが見えづらくはなるものの、多くの人に喜ばれる、市場のニーズに即した製品を生み出しやすい、というメリットがある。
カラーはブライトシルバー、インディゴブラック、
ブライトカッパーの3色をラインナップ。
 この二つのアプローチは、とかく相反するものと語られることが多い。特に、エンジニアのこだわりとマーケティングで得たニーズは、まるで水と油のごとく、お互いが交わり合わない存在であるかのように思われている。しかしながら、天才エンジニアが生み出す新たなる境地を心待ちにするファンは多いし、マーケットの要望をうまく取り込み、誰もが欲しくなる製品を作り上げるのが巧みなエンジニアチームも多々ある。その典型例といえるのが、パイオニアから新たに登場した高級ヘッドフォン「SE-MX9」だ。
 こちらの製品、新たに生み出された「Superior Club Sound」シリーズのフラッグシップヘッドフォンで、EDMなどのクラブミュージックをメインターゲットとした製品。その製作には、多くのユーザーから集めた“声”を重視し、ハンガーとハウジング部にはアルミ素材を、ヘッドバンドには屈曲性や耐久性に優れたポリアミド樹脂を、イヤーパッドにはフェイクレザー表皮と低反発ウレタンを採用。街中でも積極的に使いたくなるスマートさと、確かな存在感を巧みに両立させている。
 それでいて、音質に関してもかなりこだわっているのがSE-MX9ならではの特徴といえる。DJ用ヘッドフォンで培ってきた技術を活かしつつ、コンピュータ解析によってクオリティを向上させた50mm口径ドライバーを新開発。音質のよさと迫力の低音を巧みに両立させているという。
 実際のサウンドはというと、たしかに歪み感が少なく、ワイドレンジ。それでいて、強い押し出し感のある迫力の重低音が楽しめる。サウンドキャラクター的には、高域はざらざらしておらず、かなりピュアで、かつスムーズに伸びているため、女性ヴォーカルなどはとても美しい歌声を聴かせてくれる。いっぽうの低域は、ローエンドまでしっかり伸びきった、とてもパンチ力のあるサウンド。まるで振動板の揺れそのものを感じているかのよう。それでいて、細部の表現までしっかり伝わるきめ細かさも持ち合わせているので、何とも聴きやすい。「クラブミュージック向き」ヘッドフォンといえば、とにかく低域をブーミーにすればよいという風潮があるなか、SE-MX9はそれらと一線を画す、しっかりとクオリティも追求した上質な製品に仕上がっている。EDM系を迫力よく、かつ上質なサウンドで楽しみたい、という人にはとても魅力ある製品だ。
試聴・文 / 野村ケンジ
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