映像配信サービス「dTV」に新ジャンル「ライブ」が誕生、ひと味違うライブ体験ができるその魅力

2021/09/22掲載
はてなブックマークに追加
 豊富なコンテンツでユーザーにさまざまな体験を提供している、日本最大級の映像配信サービス「dTV」。2021年5月には、音楽の楽しみ方をさらに広げる新ジャンル「ライブ」がスタートしました。リアルタイムで届けられる人気アーティストのオンラインライブだけでなく、膨大な映像アーカイブや独自の情報番組など、関連コンテンツも見やすく統合。それらを自在に組み合わせることで、従来とはひと味違うライブ体験ができると好評です。ジャンルの立ち上げを手がけたNTTドコモ コンテンツビジネス部の山下智正さんに、その楽しみ方と今後の方向性について伺いました。
――サービス開始から約3ヵ月。手応えはいかがですか?
「おかげさまで大変ご好評をいただいています。昨年のコロナ禍以降、いわゆる巣ごもり需要もあって、dTVの視聴者自体かなり増えているんですね。その一方で、リアルなライブにはまだなかなか足を運びづらいという状況が続いている。音楽好きの方々が抱えているそういったニーズ、渇望のようなものに、ある程度はお応えできたんじゃないかなと。実際、ライブ配信のコメント欄を見ていると“今日は参加できて本当によかった”“dTVありがとう!”的な感想が続々と流れてきたりして……。そういうリアルタイムの反応を見ると、本当に嬉しくなって。こちらがお礼を言いたくなります(笑)」
――dTVでは従来もさまざまなアーティストのライブ、イベントなどの生配信を積極的に行なってこられました。今回なぜ「ライブ」というジャンルを独立させたのでしょうか?
「背景として大きかったのはやはり昨年以降、オンラインライブの需要が急速に高まったことですね。もちろんライブの本質は、実際その場に参加することにある。ただコロナ禍でそれができない中、多くのアーティストさんや主催者、音楽関係者の方々が別のやり方を模索されています。実際、有観客・無観客を問わず有料でライブ配信を行なうケースも増えてきていて。お客さんの側にも、チケットを購入して楽しむ文化が根付いてきました」
――最近では「感染拡大を防ぎながらアーティストを応援するために、むしろしっかり課金してほしい」という意見も強いですね。ひいてはそれが、日本のライブ文化を支えることにも繋がると。
「まさに。その認識は今や、音楽を愛する多くの方々に共有されていますよね。個人的には昨年6月25日、サザンオールスターズが横浜アリーナで開催したライブ〈サザンオールスターズ 特別ライブ2020「Keep Smilin'〜皆さん、ありがとうございます!!〜」〉が大きかった。パソコンやスマホを通した無観客の配信ライブでしたが、すばらしい内容で。つらい日々が続く中、あのライブに勇気をもらった人は多かったと思います。もちろん私自身も感動しましたし、“配信ライブってアリだよね”という価値観が、アーティスト・サイドにもリスナー・サイドにも一気に広がりました」
――サザンオールスターズの無観客配信ライブは、8つのプラットフォームで同時配信されています。
「はい。ドコモでは5G開始に向けて2019年1月から“新体感ライブ CONNECT”(2020年1月までは“新体感ライブ”)というマルチアングル動画配信のサービスを提供していまして、私は立ち上げからずっと関わっていたんです。サザンオールスターズのライブも、その枠組みで配信させていただきました。ただ、その後のオンラインライブの盛り上がりを見ていますと、やはりdTV内のジャンルとして新たに独立させた方が、総合的にはメリットが大きいだろうと」
――具体的にはどういった点が挙げられますか?
「まず一つは、ユーザーさんの使い勝手向上ですね。ライブ関連のコンテンツが統合されていたほうが単純に見やすいし、アクセシビリティもよくなる。加えて有料課金システムの実装や、見逃し配信への対応、コメント投稿の機能など、アーティストさんにもより幅広い機能をご提案できます。さらに私たちプラットフォーム側にとっては、新規のライブと既存の音楽コンテンツを組み合わせて、まったく新しいユーザー体験を作りだす可能性が広がります。そこで“新体感ライブ CONNECT”で培ったノウハウを最大限に活用しつつ、“ライブ”というジャンルを立ち上げさせていただきました」
――文字どおり「新体感ライブ CONNECT」の発展的解消という側面もあるわけですね。立ち上げの目玉コンテンツとして、5月29日にはロック・バンドGLAYの「THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK LIFETIME MUSIC」を配信。また6月19日には「宮脇咲良 HKT48 卒業コンサート 〜Bouquet〜」を独占で配信しました。反響はいかがでしたか?
宮脇咲良
宮脇咲良「宮脇咲良 HKT48 卒業コンサート 〜Bouquet〜」より©Mercury
HKT48
HKT48 「宮脇咲良 HKT48 卒業コンサート 〜Bouquet〜」より©Mercury
「どちらも非常によかったです。とりわけ宮脇咲良さんの卒業コンサートでは、独占配信でいろいろ新しい試みにもチャレンジできました。その一つが見逃し配信で、リアルタイムとは別バージョンを提供したこと。本編映像では普通にステージ全体を捉えていますが、見逃し配信時にはカメラが宮脇さんだけを追った映像も楽しめるようにしています」
――チケットを購入したファンは、2通りの楽しみ方ができると。
「さらにもう一つ。dTVアプリに有料ライブを統合したことで、ライブ前〜本番〜ライブ後をシームレスに楽しんでいただけるようになった。dTVならではの魅力として、これも大きいと思います」
――どういうことでしょう?
「じつはdTVのコンテンツには、音楽系アーカイブがたくさんあるんですね。HKT48関連でいうと、既存のミュージック・ビデオもありますし。それ以外にも宮脇さんがメンバーだったIZ*ONEの1stツアー・ドキュメンタリーなどもあります。ライブ前はミュージック・ビデオや過去のライブ映像などでワクワクしてもらい、当日はオンラインで思いきり盛り上がる。そして終了後には別バージョンの見逃し配信をじっくり楽しんで、感動の余韻に浸っていただく。今回〈宮脇咲良 HKT48 卒業コンサート 〜Bouquet〜〉をご覧になった方の行動を分析してみると、そういう新たなユーザー・ジャーニーが生まれていたことが確認できました。リアルにはない、オンラインライブならではの楽しさについて、NTTドコモは“新体感ライブ CONNECT”時代からかなり研究を重ねています。この部分は今後、もっと強く打ち出していきたい」
――支払い方法では通常のドコモのキャリア決済に加えて、クレジットカード決済にも対応していますね。
「はい。有料ライブはdTVと契約していない方でも、個別決済で視聴可能です。チケット購入に際しては、ためていた“dポイント”を使っていただくこともできます。じつは今回、新ジャンルの立ち上げを記念して、有料ライブをご購入された方でdTVに入会されたユーザーにdポイントを777ポイントプレゼントするキャンペーンも実施しました」
――あるアーティストに興味はあるけれど、実際にライブ会場に足を運ぶのはちょっと大変。そう感じた経験は多くの人が持っていると思います。参加へのハードルを下げるという意味で、dポイントが使えるのは大きいですね。
「そうなんです。たとえばチケット5,000円は敷居が高かったとしても、仮にその方が3,000ポイントをお持ちなら、判断も変わってきますよね。2,000円なら観てみたいという人は、けっこう多いと思います。実際、ユーザーさんからのフィードバックや行動分析データを見ても、その傾向ははっきり見てとれる。当然、アーティストさんにとっては新たなファン獲得に繋がりますし、同時にライブ市場全体の底上げにもなるんじゃないかなと」
――オンラインビジネスならではの貢献と言えそうです。
「NTTドコモの本業は通信キャリアですので。物理的な距離の制約を解消するというのは、やはりビジネスの根幹なんですね。新しいジャンル“ライブ”の立ち上げは、直接的にはコロナ禍以降の状況がきっかけになっています。でもその前から東京在住の方と地方在住の方では、アクセスできるライブの本数に圧倒的な偏りがあった。オンラインライブは、こういうチャンスの格差を是正するツールにもなりうる。世代間のギャップもそうです。今後、dポイントを家族間で利用できる仕組みも考えていきたい。たとえばお父さんのポイントで、娘さんが好きなグループのオンラインライブを購入し、それきっかけで家族でファンになるとか……。じつはこれ、わが家の話なんですが(笑)」
――おお、すばらしい!
「以前“新体感ライブ CONNECT”でTWICEのスペシャル・ライブを配信したのをきっかけに、娘がハマりしまして(笑)。それ以来、わが家ではずっと彼女たちの映像が流れています。そうやって新たな音楽体験の動線が広がっていくのは、すごく嬉しいですね」
――では最後に、サービスにおける今後の課題を教えてください。
「何と言ってもまずは、オンラインライブの充実ですね。一斉配信・独占配信を問わず、音楽好きの方々に満足していただけるコンテンツを少しでも多く提供していくこと。無料で楽しめるオリジナル情報番組も含め、そこは地道に積み上げていきたいです。そのうえで“臨場感”と“インタラクティブ性”という2つのキーワードを追求していきたい」
――なるほど。
「生配信のライブを観ながら参加者同士がコメント欄で自由にやりとりをして、気付けばチームのような一体感が生まれている。そういうインタラクティブなコミュニティが瞬時に生まれるのも、オンラインの面白さだと思うんですね。大会場のライブでよく“アリーナのみんな!”“イエーイ!”“スタンドのみんな!”“イエーイ!”みたいなコール&レスポンスがありますよね」
――はい。定番のやりとりですね。
「遠くない未来、“オンラインのみんな!”という呼びかけが加わったらすごく面白いと思うんです。そのためには遅延の少ないインフラをしっかり構築する地道な作業も不可欠です。そうやってソフト、ハード両面を充実させたうえで“ライブを観るならやっぱりdTVだよね”という立ち位置を狙っていきたいと考えています」
取材・文/大谷隆之
Information
アーティストの原点に迫るオリジナルライブ番組「Roots」を2021年8月27日(金)からdTVで順次配信。第1弾となる8月の配信は今年メジャーデビュー10周年を迎えるきゃりーぱみゅぱみゅ、9月24日(金)配信の第2弾には今年ソロデビュー25周年を迎える西川貴教が出演します。

dTV official site
ライブジャンルページ
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 角野隼斗 イメージ・キャラクターを務める「ベスト・クラシック100極」のコンピレーション・アルバムを選曲・監修[インタビュー] 色々な十字架 話題の“90年代ヴィジュアル系リヴァイヴァル”バンド 待望のセカンド・アルバムをリリース
[インタビュー] アシックスジャパンによるショートドラマ 主題歌は注目のSSW、友成空[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤
[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ
[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも
[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”
[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015