――前作から22-20sの原点に戻るような意欲が感じられましたけど、今作でそれがさらに強まったような気がします。 マーティン・トリンブル(vo、g/以下同) 「僕たち、やっと気づいたんだ。後からいろいろ考えるんじゃなくて、もっと自分たちの直感に基づいた音楽を作るべきなんだって。これまで出してきた音源は本能で作られたものじゃなかった。でも、そうやって失敗したことで、結果的に僕たちは原点に立ち戻って進化することができた。ちょっと変わった過程だと思うけどね(笑)」
――今回のアルバムはアメリカのミネアポリスでのレコーディグだそうですが、そのいきさつを教えてください。
「2010年の終わりに、僕とメンバーのひとりがミネアポリスに引っ越したんだ。全米ツアーをやった際にミネアポリスを仮の住居にしていたから、すごく自然な形での移住だったんだ。残ったメンバー2人はイギリスに帰っていたからバラバラだったんだけど、ミネアポリス組の僕らが新作を録りたいってことになって。イギリス組も海を渡って参加するのに支障もなかったんでね」
――レコーディングはどういう過程で行なわれたんですか?
「最初はとにかく書きためてた歌詞を整理する作業だったんだけど、それに曲を付け出したらすごく上手くいったから、プロデューサーのイアン(・ダヴェンポート)にすぐ連絡して。彼のいるイギリスまで飛んで行って、6日間だけのセッションで作り上げたんだ」
――今回の歌詞は告白調のすごく内省的なものが目立つ気がするんですが、これはこのバンドでのあなたの苦闘を反映したものですか。 「歌詞の大半はツアーに出てたときに書き留めたメモが中心だね。そこまで告白的なものは意識していないよ。ヴォーカルを際立たせて音をシンプルにしてるからそう聞こえるんじゃないかな。歌詞に込めたのは“取り返せないもの”に対して働きかけることかな。
スリム・ハーポの〈Got Love If You Want It〉に影響を強く受けてるからね」
――今回はすごくルーツ・ミュージックの色濃い生々しい作風ですが、それで内に入りすぎるのではなく、ロック本来のエネルギッシュなヴァイブも感じさせます。
「それこそロックンロールやブルースの醍醐味だね。僕自身、のたうち回っていたり、いかにも心が粉々ですと言わんばかりの音楽は、聴いてて不快だもの。それにそういう曲ってクリシェにも陥りがち。感情というのは言葉だけでなく、メロディやリズムもフルに使って表現するものだしね」
――そして、あなたたちのアンサンブル能力の充実ぶりも感じられます。
「まさに、それこそが非常に重要なポイントなんだ。一緒に音を合わせるときにどんなケミストリーを生んでいるか。それが僕の愛聴する音楽の決め手でもあるんだ。このことが最近の音楽において重要視されなくなっているのは嘆かわしいことだよ。“ミュージシャンシップ”という言葉が無視されたり、単なる演奏力を意味するだけの言葉に成り下がっているのは残念だね」
――自分たちが正当に評価されてこなかったことへのいらだちはありますか。
「それは何度もあるし、レコーディングやツアーのことを考えたら金銭的に頭が痛いこともあるけど、これは宿命みたいなものだから、ベターな道を探すのみだよ」
――あなたたちは2004年、イギリスにおける一種のバンドブームの時代に出てきてますが、今も生き残ってやっているバンドもだいぶ減っていますよね。最近はイギリスでもバンドが下火の傾向にありますが。
「言い古された表現だけど、“ブームじゃなく音楽を作るバンド”が生き残るんだと思う。18歳のキッズにバンド組ませたくなるような流行りも大事だし、多くの最高の音楽はそういうものから生まれてもいるけど、でも、それだけに感化されて出てきたバンドは難しいと思うね」
『ゴット・イット・イフ・ユー・ウォント・イット』「Pocketful Of Fire」試聴
取材・文/沢田太陽(2012年2月)