MAKE SOME HAPPEN なにか起こしたい――A-THUGの“夢”

A-THUG   2018/11/13掲載
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 SEEDASTICKYらを擁するヒップホップ・ユニット、SCARSのリーダーであり、近年は、KNZZFEBBJ-SCHEMEによって結成されたDOGGIESとのクルー、DMF(DAWG MAFIA FAMILY)としても活動するラッパー、A-THUGが新曲のみを収録したEP『PLUG』をリリースする。各地で繋がった人々と溶け合いながら、“目線は上 夢叶えるまで 痛みを耐える”(BLOOD BROTHER)と歌う彼は、真っ直ぐに前を見据えて「RUNNIN'」し続ける。
――『PLUG』は期待を裏切らない作品でした。ご自身は気に入ってますか?
 「ありがとうございます。細かいことは置いといて自信作ですね」
――全6曲中、3曲をDJ KENNさんがプロデュースしています。
 「DJ KENNと出会ったのは、SEEDAの『CONCRETE GREEN』企画が最初かな。日本人なのにシカゴのストリートで有名で、スタジオがある種のスポットになっていたり、黒人のインターンを舎弟みたいに連れて、ミックスとか教えてた。ど真ん中でタフにやってるヤバいヤツ。DJ KENNとリンクしたら面白いぞって、DOGGIESのみんなを連れてシカゴに行って、できた曲がDMFの〈Dear summer〉ですね」
――「Dear summer」のすぐあとに「DEVILS LINE」のMVが先行して公開されましたよね。これはトラップとロックのドープさが共存していて、広がりのある面白い曲ですね。
 「この曲のプロデューサーはATSUKIくん。KID NATHANから誘われて、彼の周りの熱いヤバいヤツらと作った曲ですね。メタリカのTシャツとか着ちゃうようなファッションもそうですけど、デンゼル・カリーみたいな、最新って感じで刺激がありました」
――ドープなフェイムはもうたくさん持っているから、外に出ようとしてる感じでしょうか?
 「っていうか、いろいろやっていきたいんですね。MAKE SOME HAPPEN、なにか起こしたい。ポップになることは意識したいし、単純にSNSのフォロワー数も増やしたい。日本のヒップホップ、がんばってるけど、もっともっと伸びたらうれしい。俺らの音楽、ほかのアーティストでもいいけど、インパクトのある曲がラジオとかテレビで流れたり選ばれたり、ヘビロテしてくれ!……って感じですね。自分の作品にもKID NATHANたちを誘いたいし、これからDMFでもEPを出すし。KNZZもアルバムが決まってて、そのための曲ができてるんです。シカゴで、GLORY BOYZ ENTERTAINMENT(GBE)のラッパー、GINO MARLEYや、CORNER BOY Pとかドープなアーティストと曲を作ったんで、どんどんドロップしていきます。あとは日常生活でトラブルを起こさないように、決めたことをこなしていく。次の春くらいまで予定は詰まってる、I GOT PLAN BABY!」
――めちゃくちゃヤバいの、待ってます。これは個人的な感想ですが、このEPは前・後編みたいなシステムで、前半の3曲は参加していない曲にもどこかFEBBさんの存在を感じて。後半にはA-THUGさんの決意があるように聴こえました。
 「それ、全然間違った聴き方じゃなくて、同じアルバムでもみんな捉え方が違うし、その人の世界観で聴いてほしいです」
――リスナーがストーリーを想像したり、自由に想いを寄せてしまう魅力があって、そのマジックこそがヒップホップなのかなとも考えさせられました。
 「嬉しいですね。俺は本や映画とか好きで、別に狙ってるわけじゃないけど、そういうマインドが植え付けられてるかもしれない。本なら文字を追っていても頭の中には何かしら映像が生まれる。そういうこととか、感動することが大事で、自分もできたらいいなって思いますね。しゃべっていて絶対ない話し方、“そんなはずないサ”みたいな物言いを音楽にする面白さ、日本人なら忌野清志郎みたいな。タイマーズとか“大麻吸うぜえ”みたいに、そのままのこととか言ってるでしょ(笑)」
――確かに(笑)。ここでJ SCHEMEさんに訊きたいんですけど、「DOGGIES GANG」が個人的な大ヒット曲なんですが、あの“野菜を食べる”が最初に飛び出したとき、どんな気持ちでした?
J SCHEME 「神だな……トラップ・ゴッドが降りてきたなって思いましたね。DMF〈PACKAGE〉の“パケジ!パケジ!パケジ!”も鳥肌が立ちました」
 「恥ずかしい(笑)。どれもドラッグしばりなんで。DOGGIESに何曲も誘ってもらって、自分もソロで動いているよりDMFをベースのファミリーとした方がいろいろなことが起こるかなって。いろんなコラボをやっていこうと思っているんです。……向こうのラップとかNetflixはムショとドラッグばっかで、でもそれも現実じゃないですか。Netflix面白いけどやりすぎだよね」
――Netflixやりすぎですか(笑)。シカゴを楽しんでいたことは「ROB U」でもよくわかりました。
 「音楽を一緒にやっていけるヤツはシカゴにいるかなって。いやいや、DJ MUNARIリッチ・ザ・キッドもいるからI LIKE NY TOO! シカゴではずっとDJ KENNのスタジオで音楽作ってました。楽しかったし、その時間自体が貴重でしたね。シカゴのヤバいヤツら、チーフ・キーフたちも集まる場所なんで。日本で“真似したい”とか“こうなりたい”って思うことはあんまりないんだけど、あっちでセッションすると自分が吸収したいことだらけ。NYのレッドブル・ミュージック・フェスティバルにDJ KENNが出演した時、1曲だけ俺もパフォーマンスさせてもらったんですけど、あの時もLIL WOPや、ZILLAKAMIが来ていて、どんどん刺激が飛び込んできて俺もどんどん変わっていく、止まらなかった」
――具体的にどんな刺激なんでしょうか?
 「今回のタイトル、“PLUG”って言葉もそういう現場で身につけたもので、ハスラーとかプッシャーとかの売人に卸す売人のこと。そういうスラングや、たとえば“スクースクー”ってアドリブはめっちゃ急いで車走らせてる時のタイヤのきしむ音のことだったり。ファッション的にわからないまま使ってる人も多いけど、俺は理解したり本当のことを知りたい。そういうのをいっぱいみんなが教えてくれる」
――なるほど。ジャケットのスニーカーはA-THUGさんのコレクションですか?
 「全部俺の靴ですね。JIRO KONAMIっていう写真家に撮ってもらいました。VOGUE MAGAZINEやNEWYORK TIMESで撮ってる日本人ですね。12月にはJIRO KONAMIと、BlackEyePatchとSCARSでコラボします。これから曲を作るんですけど、STICKYとSEEDAがたぶん参加するかな。ほかのみんなも集まるといいですね。コラボ大切ですよ。ロックとハウスでもいいし、演歌とレゲエでもいいし」
――相手を自由に選べるなら、どなたとコラボしたいですか?
 「うーん……E-girlsを後ろで踊らせる? フックも歌ってもらって。ドープなことをポップにやりたいですね。DJみそしるとMCごはんみたいなラップなのに、見た目めちゃケバいのとかプロデュースしたいかも(笑)」
――それ、ドープというよりアングラな気がします(笑)。A-THUGさんが最初に触れたストリートのカルチャーはスケートボードだそうですね。
 「小学校くらいかな? スケートボードをお兄ちゃんからおさがりでもらって、ずっとハマってました。街に出たら遊園地状態で、警備員から逃げたり、怒られるにしても今よりもっとラフでしたね。お兄ちゃんの友達とつるんでて、自分が中学生の頃にはクラブ、R?hallとか連れて行ってもらったり。川崎の大師公園っていうところでスケートしてたんだけど、そこにはダンサーもいて、境界線がないというか。スケート・ビデオにウータン・クランの曲が使われてたり、みんなガキだったし完全に繋がってた。STILL DIGGIN'に行って、カルチャーを追っかけて枝くわえているヤツがいたり、そういう系(笑)。ノトーリアス・B.I.G.レディ・トゥ・ダイ』とかスヌープ・ドッグドギースタイル』、トゥーパックだったら『オール・アイズ・オン・ミー』とかの時代。もっと古いのだと、ブランド・ヌビアンとかア・トライブ(・コールド・クエスト)も、ダンサーの先輩と一緒になって普通に聴いてましたね」
――ダンサーとしてニューヨークへ行かれたんですよね。
 「最初は有名なスクールに行くつもりだったけど、結局行かなくて。映画『キッズ』の舞台になったワシントン・スクエア・パークって場所があるんですけど、20年くらい前だとジャマイカ人の売人が“YO! SMOKE!”って客の取り合いしてるようなとこで、そこで友達ができて、ストリートのカルチャーをもっともっとどんどん好きになった。プロジェクト・ビルディングに住んでる友達に誘われて家に行くと、非常階段にBLOODSのサインが描かれていたから“あぁそのまんまのところに来たんだな”って思いました。ハスラーとかディーラーの友達ができて、スケートやダンスからもどんどん遠くなって。ドレッド・ロックも切って、入れ墨を入れだしたりして。BLOODSのガキと仲良かったから、ドミニカの旗が飾ってある暗い部屋で、『カリートの道』とか『スカーフェイス』、映画を1日中リピートしてた」
――認められないと入り込めないエリアですね。
 「そうですね、でも友達が連れて行ってくれるから。知らないヤツでも、英語へったくそだって笑われてもいいから、行く。それでいいんじゃない? 日本だっておんなじだよ。向こうのヤツもエントランスとかにたむろして街の状況をウォッチしてるんですよ。もちろんひったくりとか強盗にもあったから、いいことばっかじゃないんですけどね」
――初めてラップしたのはニューヨーク?
 「日本にいたころから自然にやってた感じ。たとえばクラック、ブロックって同じ韻ですよね。そういうワードとか、ずっと聴いていたラップのリリックがいっぱい脳みそに詰まってきちゃって、なんか吐き出したみたいな。夜中にいきなりハッとしてグラフィティ描きに行ったりするような感じ。俺もうまくないけど絵描いて、タギングとかしてイワしたいな(笑)。“ボールは恋人”って『キャプテン翼』が言ってるように、オリンピックで金メダルをとるならそのスポーツを恋人にしないと一番になれない。俺はこの“IN AND OUT”を恋人にしたいんだけど、別の彼女もいる(笑)。音楽活動ももっとグラインドで行きたいし、別の彼女を忘れちゃうくらいもっと圧倒的に夢中になるもの、ムキになれるものがほしい。どっちがやりたいのか俺もわかんなくなっちゃうから(笑)」
――A-THUGさんの“夢”ってなんでしょう?
 「小さい目標を立てて、約束を守って、夢中になって、小さな結果を残すことが大きな夢につながるんじゃないかな。予定は延びちゃったけど、ちゃんとこのEPをリリースするのもそのひとつ。グラフィティ・ライターは発達障害かよってくらいステッカーに同じサイン描き続けるでしょ、そういうのが好き(笑)。照れたりしないで、もっと素直に表現した方がいいと思う。自分の中からこみあげてくる想い、WONDER。人の目を盗んで何かするとか、心を傷つけるのも嫌だし。カッコつけたことばっかじゃなく、そういうことも表現したい。“自分だけの想い”はそれぞれみんなあるから、人に合わせることって実は苦痛だし。どの想いにも間違いはないけど、ぶつかりあったら戦争になる。だからちょっとずつ歩み寄って、それぞれ小さな目標を叶えて。今の俺がそんな感じで、それが夢。個人的にいろいろあったとしても、仲間同士で足のひっぱりあいとかしてほしくないし、絶対だめ」
――分かりました! 先ほどから気になっていたんですが、首の新しい入れ墨について教えてもらえますか?
 「これはエジプトのホルス神の左目。このマークなんだろうって調べたときに知ったんですけど、左右の目で違う物語なんです。親父の仇をとるための戦いで失った“左目”がエジプト中を旅して知識を得てから月の神様のところで、癒しと再生をしてもらって本人のところに戻ったらしくて。知識と再生、そして癒しのシンボルです」
――現在のA-THUGさんにピッタリなモチーフですね。最後にもし、オールタイム・フェイバリットがあれば教えてください。たとえば自分のお葬式でかけたい曲とか。
 「DMF、DJ KENN、SCARS」
取材・文 / 服部真由子(2018年10月)
Live Schedule
AbemaMix

2018年11月15日(木)
東京 表参道 AbemaStudio OMOTESANDO
MC: D.D.S

[出演]
19:00〜 DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!
20:30〜 DJ CHARI
21:45〜 A-THUG(LIVE)
22:00〜 DJ IZOH
23:30〜 DJ REN
bit.ly/2PGCzhh

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