いまではそれほど珍しくなくなった“コラボレーション・ベスト”だが、フィーチャリングされたアーティストの音楽性の高さ、そして何よりも、収録された楽曲のクオリティによって、このアルバムは一歩も二歩も抜きん出ていると断言したい。ARIAの『FEAT.“Mr.&Ms.”―BEST!―』。童子−T、CHOZEN LEE from FIRE BALL、K DUB SHINEといったシーン――ヒップホップ、レゲエ、R&B――を代表するアーティストたちとARIAが「血が通ったコミュニケーション」(ARIA)を通して生み出された楽曲には、確かな必然性と豊かな音楽性が濃密に描きこまれているのだ。
「ジャンルはそれぞれ違うんですけど、みなさん、自分の色を極めていらっしゃる人たちばかり。クリエイティヴな感性もすごいし、人間的にも思いやりがあったり、礼儀がきちんとしていたり――一緒に曲を作らせてもらうことで、私自身もすごく変わったと思います」
さまざまなジャンルを追求するアーティストとの交流は、ARIAの音楽性を大きく広げることにつながったという。
「〈Slow Jam〉(メロウ&スウィートなR&Bバラード)は“この曲、童子−Tさんに参加してもらったら、ビシッと締まるんちゃう?”というところでお願いしたし、〈JKP〉(“じゃんけんぽん”というサビのフレーズが印象的なミディアム・チューン)は
SHINGO☆西成クンと電話で“最近こんなことがあって”“あるある!”みたいな話をしてるうちにテーマが決まって。作り方はいろいろなんだけど、その人の制作方法を見せてもらうことはすごく勉強になったし、私自身の幅も広がったと思います。たとえば〈REMEMBER THIS feat. Mr.OZ & EL LATINO〉(繊細なリズム・アレンジと骨太のヴァイブスが一つになったR&Bチューン)みたいなビートは、コントラバスみたいなMr. OZさんのフロウとちょっと高めのEL LATINOさんの声がないと成り立たなかったと思うんですよね」
言うまでもないが、このアルバムの質の高さは、クリエイターとしてのARIAのセンスによって担保されている。“歌うだけ”のフィーチャリングではなく、楽曲制作からレコーディングのディレクションに至るまで、ここには彼女の音楽的資質がしっかりと反映されているのだ。
「“なんでフィーチャリングばっかりやってるの?”みたいに言われないためには、まず、自分がアーティストとしてしっかり立ってることが絶対に必要なので。たくさんのコラボレーションを通して、“どんなトラックでも大丈夫”っていう自信が付いたのは良かったかも」
さらにCRAZY KEN(横山剣/クレイジーケンバンド)を招いた新曲「YOU'RE THE BEST!feat. 横山 剣(CRAZY KEN BAND)」も収録。充実した内容の本作はきっと、ARIAのアーティスト性の高さを広くアピールすることになるだろう。
「ずっと応援してくれている人、まったくARIAのことを知らない人にも楽しんでもらえるアルバムになったと思います。“もう(フィーチャリングは)やり尽くしたんじゃないの?”って言われることもあるけど、私のなかではまだまだやりたい人がたくさんいる。そのためには自分のスキルをもっと上げていかないとって思ってます」
取材・文/森 朋之(2009年1月)