若き心を持ち続ける101歳のウクレレ奏者、ビル・タピアのライヴ音源がリリース

ビル・タピア   2009/10/23掲載
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 2009年7月25日から8月9日まで初来日公演を行ない、追加公演が設けられるほどの好評を博したウクレレ奏者/ヴォーカリストのビル・タピア『ヤング・アット・ハート〜ビル・タピア・ジャパン・ライブ』を10月28日にリリースする。各ステージからベスト・アクトを選んでおり、「ヤング・アット・ハート」「オール・ザ・シングス・ユー・アー」「ハパ・ハオレ・フラ・ガール」などの十八番がたっぷり収められている。収録時、タピアは101歳。エルヴィス・プレスリーらとも共演経験のある驚異のミュージシャンだ。高齢でプロ活動していることももちろんだが、音楽そのものに、聴き手の心に届く力があるのが凄い。筆者もミリオンズ・デリ横浜のステージを観たが、“味”と安直に表現しては失礼な、彼ならではの音楽があった。音から、“これが音楽なんだよ”というメッセージを感じたのである。




――昨日が最終日(8月9日/渋谷・JZ Bratでの2ステージ)だったわけですが、東京、横浜、名古屋、大阪など各地で演奏してみて、どんな感想も持っていますか?
ビル・タピア(以下、同) 「どこの会場でも聴きに来てくれた方たちから、あたたかい拍手をもらったことに感動しています。手伝ってくれたスタッフの方たちにも感謝しています」
――演奏にはハワイ音楽の要素とジャズの要素が融合していると感じました。若い頃から長くジャズ・ギタリストとして活躍されたそうですが、ウクレレの演奏においてもジャズから得たものが大きいのですか?
 「その通り。インプロヴァイズやインタープレイのあるジャズとハワイ音楽とは昼と夜のように違う。ハワイ音楽のコードは単純だけど、私の場合はいろいろなコードを混ぜて演奏している。ジャズを取り入れることで、ウクレレの演奏に幅が広がるのです。決まったコードを弾くのではなく、いろいろなバリエーションで演奏するやり方は、ジャズ・ギタリストとして活動を始めた頃からの自分のスタイルでした。1930年代にハリウッドで仕事をしていたとき、近くでナット・キング・コールが出演していたので休憩時間に見ていると、彼もピアノを同じように演奏していました」
――ウクレレのプロフェッショナルとして復帰するまで、7年間はギターを演奏することもやめていたそうですね。
 「妻が病気になり、音に対して敏感になったので、楽器はギターを2本だけ残し、音楽は一切やめました。妻が亡くなった後、ウクレレの店に入って弾いていたら、ほかのお客さんと話していた店の人がやってきて、“あなたは誰ですか?”と尋ねてきた。“ビル・タピアだ”“有名なギタリストに同じ名の人がいるけど”“それは私だよ”……というような話があり、それがきっかけで復帰したのです。ギターはフレットを押さえづらくなってきたけど、ベースも弾く。今度、日本に来る機会があったらスティール・ギターを弾きたい」
――ウクレレを背中に回して弾くような、見せる場面も多く、楽しいステージでした。とくに印象的だったのは、演奏しながら楽器に目をやることがなく、つねに客席を見ていたことです。
 「下を見て、真剣に演奏していてはショーではありません。自分がデザインしたり、選んだりした服装を見てもらい、来られている方とアイコンタクトを交わすのもショーの大事なところなのです」




――「〈ヤング・アット・ハート〉を世界でいちばん説得力をもって歌えるのはビルさんなのではないでしょうか。若さを保つ秘訣を教えてください。
 「まずは食生活です。自分は11歳から87歳まで煙草を吸っていた。ショーの仕事をしていると帰宅が夜中になることもあるし、健康的な生活とはいえなかった。ただ、母が91歳、父が95歳まで生きて、妻は母の料理の仕方を学んでいたのが大きかったと思う。肉は脂のないところを選び、ブロッコリー、カリフラワー、トマト、レタスなどの新鮮な野菜を決まった時間に食べるのです。それから疲れたからといって休んでしまうのではなく、頭を使うこと、何かを目標に動くこと。“もう年だからいいよ”というのではなく、やりたいことがあったらできる範囲でしたほうがいい。私は演奏するのが好きだからどこへでも行く。来年も日本に来たいね」
取材・文/浅羽 晃(2009年8月)
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