ヴィヴィアン・ガールズとの対バン・ツアーで、再び日本にやって来た
ブラック・リップス。今回も各地で、トイレット・ペーパーが飛び交い、天に向かって唾を吐きまくる、やんちゃなパフォーマンスとともに最高のガレージ・パンクを聴かせてくれた。地元アトランタでは
ディアハンターや
マストドンとつるんでいたりもする彼らは、単なるパーティ・バンドではなく、音楽的にもメンタリティ的にも、ひとクセもふたクセも持った人たちなのだが、そんな特異なキャラを、以下の会話から感じ取ってもらえると嬉しいです。
――あなたたちはどんな音楽を聴いて育ったのですか?
ジャレッド・スウィリー(b、vo)「僕の場合は、おじいちゃんが牧師だったんで、ゴスペルを聴いてたな」
――ゴスペル!?
ジャレッド「実は同じ種類のエネルギーを持った音楽じゃないかと思ってるんだ。尊敬する
ジェリー・リー・ルイスや
ジョニー・キャッシュも、もともとはゴスペルを歌っていたしね。まあ、僕自身は特に神を信じてるわけじゃないんだけど(笑)」
――地元であるジョージア州という地域がブラック・リップスの音楽性に影響してると思いますか?
コール「イエス! ロックンロールだけじゃなく、ブルース、ゴスペル、カントリー、たくさんの音楽が生まれたところだからね」
――現在アトランタにはどんなシーンがあるのでしょう?
ジャレッド「町自体は大きいんだけど、音楽シーンに関しては小さな村みたいな感じだから、ぜんぜん違う音を出してるバンドでも同じ場所で演奏するし、だからマストドンみたいなメタル・バンドとかとも仲がいいんだよ」
――そういえば、あなた方も出演していると噂のDVD『Burn to Shine』(※註)のアトランタ編が待てど暮らせど出ないんですが、なにか事情を知ってます?
コール「あ、それ、もうすぐ出るって」
ジャレッド「ついこないだ、ようやくリリースされることになったって話を聞いたところだよ。実際、4年前だよなあ、あれ撮ったの(苦笑)」
コール「ゆっくりしすぎ(笑)。とにかく、あのシリーズの最高傑作だと思うよ。なのに、世に出るまで、こんなに時間かかっちゃったのは残念だよ」
(C)Zach Wolfe
ジャレッド「俺たち、マークを2回ほど殺しかけたよ(笑)」
――ええっ?
ジョー「みんなで日本食レストランに行って、レバ刺しを食ったんだ。そしたら全員、具合悪くなっちゃったんだけど、マークは一番ヒドくて病院行き」
コール「その次は、チキンウィングをあげたら、辛すぎたらしくて下痢しちゃって」
ジョー「アブナーイ、デスネー(なぜか日本語)」
――(汗)。でも、そうやって完成した今作も、とても曲がよくて、単なる勢いだけのガレージ・バンドではないとあらためて実感しました。
ジョー「メンバー全員、ものすごくいろんな種類の音楽を聴いてるんだ。そういうところからアイディア、インスピレーションを得ているから、それが味になってるんじゃないかな」
ジャレッド「バンドに4人のソングライター、4人のシンガーがいるのも強みだね」
――じゃあ最後に、今後の活動ヴィジョンを聞かせてください。
ジョー「今の音楽シーンには、ロックンロールが足りない。最近はインディのバンドがチャートに進出するようになってきたけど、まだまだロックンロールが必要だと思う。だから、もっともっとロックンロールを盛り上げたいね」
※註…『Burn to Shine』は、
FUZAGIのドラマー、ブレンダン・キャンティーが監修するDVDシリーズ。シリーズごとに一つの都市に焦点を当て、その土地にまつわるバンドのライヴ映像を収めている。
取材・文/鈴木喜之(2011年7月)