自然の流れに身を任せながら“ミュージック・ジャーニー”を楽しみたい──Broken Social Sceneのブレンダン・カニングが初のソロ・アルバムを発表!

ブレンダン・カニング   2008/09/05掲載
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 今年3月に行なわれた来日ツアーでは、グルーヴ感とセンスに溢れるステージを披露したブロークン・ソーシャル・シーン。その中心人物であるブレンダン・カニングが、同じくメンバーであるケヴィン・ドリューに続き、初のソロ・アルバム『サムシング・フォー・オール・オブ・アス』を発表した。共鳴し合う仲間が集い、色彩豊かな楽曲が連なりながら、ギタリストとしてのプレイも光る傑作が誕生した。




 カナディアン・ロック・シーンの台風の目といえばブロークン・ソーシャル・シーン(以下、BSS)。自主レーベル、アーツ&クラフツを拠点にして、バンドのアルバムはもちろん、メンバーのソロ作や新人バンドの作品もリリースするなど、BSSのピープル・トゥリーに豊かな果実を実らせてきた。そのBSSの創始者のひとり、ブレンダン・カニングが初めてのソロ・アルバム『サムシング・フォー・オール・オブ・アス』を完成させた。これがまたBSSに負けないパワフルな内容で、オリジネイターの底力を見せつける痛快な仕上がりだ。
 「とにかく心の赴くままに、自然の流れに身を任せながら“ミュージック・ジャーニー”を楽しみたいと思って作ったんだ。これまで持っていたアイディアをいろいろと試してみたり、初めて使った“おもちゃ(楽器)”もあって、そういう意味では実験的な作品といえるかもね」

 BSSではおもにギターをプレイしているブレンダン。本作ではとことんギターを弾きまくり、BSS以上に多彩なギター・サウンドが渦巻いている。
 「ギター・ループやフィードバック・ノイズ、アコースティック・ギター、オルタネイト・チューニング、フィンガー・ピッキング……いろいろ盛り込んだよ。BSSだったら“この曲にはギター・パートが6ヵ所あるけど、そのすべてを自分でプレイしたい!”と思っても、バンドにはギタリストが大勢いて、そんなことできるわけなかった。でも今回はそういうことも問題なくやれたし、ギタリストとして思う存分、音を出し切れたんだ」

 本作に収録されたナンバーも、ギター・プレイ以上に多彩だ。幾重にも重ねられたエレクトリック・ギター・サウンドが炸裂するタイトル曲をはじめ、ホーン・セクションを導入して「最高のファンキー・ソングに仕上がった」と本人もお気に入りの「Love Is New」。あるいは、「All The Best Wooden Toys Come From Germany」なんてユニークな曲名をもつ、ファンタジックなインスト・ナンバーも印象的だ。
 「この曲は森の中で可愛いエルフ(妖精)たちが木を切っているイメージを思い浮かべながら作ったんだ(笑)。曲のタイトルは以前、子供が生まれたばかりの友達が“ドイツ製のオモチャは最高だぜ!”って連呼しててさ、その時に“それは初耳だな。でも、そのフレーズってなかなかいいから、今度曲のタイトルに使わせてもらおう”って思ってたんだ。おっと、彼のこのアルバムをプレゼントしなくちゃね(笑)」



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 そして、そんなバラエティ溢れるサウンドをさらに賑やかにしているのが、ケヴィン・ドリュー、エイミー・ミラン、ジェイムス・ショウなどBSSのメンバーをはじめ、リアム・オニール(スティルス)、リズ・パウエル(ランド・オブ・トーク)など数多くのゲスト陣だ。BSS本体がそうであるように、ブレンダンもまた仲間たちとのセッションを重ねることで強烈な音の磁場を生み出している。
 「僕は自分のやりたいことをやり遂げるために必要だと思った人たちと、いつも一緒に仕事しているんだ。自分の音楽に取り組むのは大好きだし、アイディアを出すのも苦じゃないけれど、自分ひとりのアイディアだけでは飽きてくるんだよね(笑)。やっぱり他の誰かとアイディアを出し合いながら、ひとつのものを作り上げていく作業が大好きなのさ。だからこうして、いろいろなミュージシャンと一緒に仕事をしてるんだ。初めてのソロ・アルバムが完成したいま、これからは優れたソングライター、優れたプロデューサー、優れたアレンジャーになれるよう可能な限り頑張りたいと思ってる。今後、自分がどういう方向を目指すべきか、このアルバムを制作することによってはっきりとわかったからね」
 ブレンダンの新たな旅がここから始まる。



取材・文/村尾泰郎(2008年8月)
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