デス・メタルの王道を突き進む米国の
カンニバル・コープス(Cannibal Corpse)が、シリーズ・イベントの“Extreme The Dojo Vol.22”に参加するため、6月上旬に来日公演を敢行した。13年ぶりの日本ツアーだったが、王者の風格を見せつける問答無用の素晴らしいパフォーマンスだった。結成21年目の今年2月に発表した11枚目のアルバム
『エヴァイスレイション・プレイグ』も、ビルボードの総合アルバム・チャートの66位にランクイン。すべては何にも媚を売らずに鍛錬を重ねて深化し、コンスタントに活動を続けてきていることの賜物だ。バンドの頭脳でありソングライティングの要でもある、超絶ベーシストのアレックス・ウェブスターに直撃!
――最新作がチャートの66位に入ったことを知った時、どんな気持ちでした?
アレックス・ウェブスター(b/以下同) 「少し驚いたかもしれない。ただ、今まで買っていた音楽をタダでダウンロードするような人も多いけど、メタルのファンはすごく忠実でCDをちゃんと買ってくれるのも大きな要因だと思う。だから10年前なら今の数の売り上げだとあまり上位には入らなかっただろうけど、今エクストリーム・メタルも含めたヘヴィ・メタルがちょっと人気あるジャンルになって、ぼくらが有利にもなっているね」
――新作の音楽性も大きく変わらず、カンニバル・コープスにはブレがないと思います。
「ただ、ぼくはいつも新しい方法というのを考えている。もちろん同じカンニバル・コープスの音楽だし同じデス・メタルだけど、違うリズムや違う拍子とかを使って変化を入れたりして、なおかつ同じサウンドを作っていく。それはとても大きなチャレンジなんだ」
――昔からほとんどの曲の長さが2〜4分で、アルバム全体でも40分以内で短いですね。凝縮するというか、贅肉を削ぐみたいな。
――曲の中にフックを入れるのも意識しているのでは? 複雑だけど覚えやすいです。
「バランスがすごく大切だ。ぼくは曲作りをしていく上ですごくテクニカルな曲にも興味を持っているけど、記憶に残らない曲になってしまうのは良くないよね。どの曲にもアイデンティティが必要だ。レコードのどこに針を落としても違う曲だとわかるように、記憶に残る曲にしたい。それが一番大事だと思う」
――今テクニカル〜と言いましたが、ジャズも好きですか? その要素も演奏に感じます。
「好きだよ。ぼくはベース・プレイヤーだからベースから入っていく。
ゲイリー・ウィリス、
ジョン・パティトゥッチ、
トム・ケネディといったミュージシャンがすごく好きで、ジャズ/フュージョンの全体が好きになった。違うスタイルのベース・プレイヤーのミュージシャンシップにも惹かれるから、すごくいろいろな音楽に心を開いて聴いているよ」
――歌詞ですが、実際のシリアル・キラーなどからインスパイアされたものもあります?」
「歌詞によってはシリアル・キラーのキャラクターもあるけど、でもそれは特定の人のことではないよ。何かのニュースや映画を見てインスピレーションは受けているけど、すべてがフィクションと考えてもらっていい」
――新作には、どこかの国の虐殺とかの政治的なイメージが思い浮かぶ曲もありましたが。
「まったく政治的なものではなく、野蛮な人たちがある村を襲撃してすごく残忍なことをやったりする感じのイメージだ。たとえば(“コナン・シリーズ”の)コナンとか『ロード・オブ・ザ・リング』みたいな。いつどこの出来事とかいうのはなく、あいまいにしておいて、歌詞を読んでいる人たちが想像力をふくらませていく感じにしたかったんだ」
―― 一貫して宗教云々の歌詞はないようで。
「前のシンガーはそういう歌詞を書いたかもしれないけど、ぼくとポール(ds)が歌詞を書くようになってからは、できる限り宗教的なものと政治的なものを避けている。宗教のことを書くとみんな怒ったりするから。歌詞はホントに現実逃避みたいな感じで現実的ではない。『13日の金曜日』や『ハロウィン』とかの映画を観に行くような感覚で、興奮して怖がってもらえればいいと思っているよ」
――最後にバンド名の由来を教えてください。
「ホラー的なものでデス・メタルを象徴するような感じで、ぼくが付けたんだ。“C〜 C〜”という綴りや響きも記憶に残りやすいし。死人が起き上がって人を食べちゃう映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の、ゾンビみたいなイメージが頭に浮かんだのさ」
取材・文/行川和彦(2009年6月)