――今年で結成20周年ということですが、これまでの活動を振り返っていかがですか。
笹子重治(g/以下、笹子) 「マイペースで続けているうちに気がついたら20年経っていたという感じです。常にショーロクラブ中心に活動していたら大変だったと思うんですけど、僕らはそれぞれ、他のアーティストの仕事をすることが多いですから。だからこそ音楽的に無理のないペースで活動できたのかもしれませんね」
――今回、4年ぶりとなるアルバム『Trilogia』を発表されたわけですが、久々のレコーディングはいかがでしたか。
笹子 「ある人にいわせると、我々は3日で1枚のアルバムを録り終えてしまうグループらしいんです。いわゆる制作期間はそれ以上あるんですけど、実作業を足したら3日間ぐらいで終わってしまう(笑)。今回もまったく同じパターンでしたね。各自が曲を書いてきて、リハを5〜6回やって、アレンジを固めて、スタジオで録っておしまいっていう」
――たとえば曲の雰囲気だとか、事前に何か打ち合わせをしたりするんですか。
秋岡 欧(bandolim/以下、秋岡) 「特にしませんね。他の2人がどういう曲を書いてくるかは、だいたい想像がつくから、そういう意味では安心といえば安心です」
笹子 「あまり難しいことを考えずに済むから、曲の方向性は広がるよね」
秋岡 「でも、たまに、“この曲、あのとき誰かが書いてきた曲と似ていないか?”ってことがあったりして(笑)」
笹子 「それが20年、一緒にやってることの恐ろしさですよ(笑)」
沢田穣治(cb/以下、沢田) 「そう考えたら、知らず知らず、お互い影響を与え合っているのかもしれないですね」
――ショーロクラブの曲って、すごく微妙なアンサンブルの上に成り立っていると思うんですけど、そのあたりは、やっぱり慎重に……。
沢田 「いや、それほどでもないですね。最初に決まっているのはメロディとコードだけだし。譜面も書かないし」
――そうなんですか? すごく緻密な譜面が存在してると思ってたんですけど(笑)。
笹子 「そもそも譜面を読めないんで(笑)。アレンジは基本的にリハーサルを重ねながら固めていきます」
――たとえば、今回のアルバムでいうと、「限りなき未知」とか、ああいうプログレっぽい複雑な展開の曲も、同じくそういうやり方で?
笹子 「そうですね。あの曲に関していえば、レコーディング当日まで文句言ってましたけど(笑)。“こんな曲、弾けるか!”って」
秋岡 「でも、ショーロクラブの音楽って、“弾ける/弾けない”を実はそれほど重視してないんですよ。上手く弾くというよりも、どういう音色で、どういうアプローチで、その曲を弾くかということを重視していて。テクニック的な部分は、それぞれの努力でなんとでもなるけど、演奏の間合いみたいなものを共有するのって、なかなか一長一短にはいかないですから」
――たしかに“わびさび”というか、ショーロクラブのサウンドには日本人特有の“間”のようなものを感じます。
笹子 「ブラジルのメディアにも“ショーロ・ゼン(禅)”という表現で紹介されたり。やっぱり向こうの人から見たら、間の取り方が独特みたいですね。でも、自分たちでは、いわゆる“日本的な感覚”とか、まったく意識していないんですけどね。反対に、ブラジル音楽をブラジル人のように演奏しようとも思ってないし。あくまでも自然なスタンスでコンテンポラリーな音楽を演奏しているつもりです」
――トラディショナルなブラジル音楽としてのショーロを目指しているわけではない、と。
笹子 「そもそもショーロをやろうとも思っていないですから(笑)。もともとは僕と秋岡さんに数名が加わった室内楽的な編成でショーロを演奏していたんですけど、沢田さんが加入してトリオ編成になった時点で、純粋なショーロをやろうという考えは一切なくなったんで」
沢田 「名前だけが残ってるんです(笑)」
笹子 「そういう意味で、このバンド名は大変まぎらわしいんですけど(笑)。だから、今回のアルバムも、ショーロクラブという名前で、オリジナルをやっているバンドという認識で聴いてもらえたら嬉しいですね。そうしたら、僕らがやっていることを、より楽しんでもらえると思うんで」
取材・文/望月哲(2009年6月)
〈祝!結成20周年! ショーロクラブ コンサート“トリロジア”〉
●2009年9月5日(土)
●東京・めぐろパーシモンホール 小ホール
●[昼の部]開場15:00 開演15:30/[夜の部]開場18:00 開演18:30
●料金:前売り4,500円 当日5,000円
●問い合わせ:DISK GARAGE [Tel]03-5436-9600(12:00〜19:00)