――ロンドン出身ですが、いつ頃、どのような経緯でバンドを結成したんですか?
トム(以下同) 「きっかけはある友人のハウス・パーティでメンバーのマイクとローレンスに出会ったことからなんだ。その夜、ガールハントに失敗した3人が部屋の隅のステレオの前に集まって、タイプの違ういろいろな曲をかけてどれだけみんなを踊り続けさせることができるか、ちょっとした賭けをしたんだ。
マイケル・ジャクソン 、
スーサイド 、
フレーミング・リップス とかね。その中で3人の音楽趣味が近いことが分かってきて、そう言えば今、
ビーチ・ボーイズ や
スーパー・ファーリー・アニマルズ みたいないろいろな音楽要素を取り込んだポップ・ミュージックをやるバンドが少ないよねって話になったんだ。で、だったら僕らでやってみようかということになってね」
――ほかの2人にも声を掛けたわけですね?
「うん、心当たりのある仲間がいたんで、やりたい音楽の話をしたら二つ返事で引き受けてくれてね。そこからは半年間で100曲くらい曲を作って、僕らでそういうポップ・ミュージックが作れるか試してみたんだ」
――どの曲もポップで明るくキャッチーで、ドリーミーなメロディの曲が多いと思います。こういうポップ・ソングを作るのは、実は一番難しいんじゃないかと思うんですが。
「そうなんだよ。キャッチーであることは大前提なんだけど、シンプルで新鮮なポップ・メロディを作るのはたしかに簡単なことではないよね。だから反復するメロディで耳に残るものを心掛けているんだ。それとポップ・ミュージックが存在する意味は、どれだけ曲のアイディアが大衆に受け入れられるかどうかだと思うから、たとえ難解なコンセプトの曲であっても受け入れやすいものにすることが重要であって、そこは自分たちでもかなり意識して作ってるんだ」
――そういえば「ストップ・メイキング・センス」という曲がありますが、これはトーキング・ヘッズ に対するオマージュ的な要素もあるんですか? 「もちろんだよ。彼らのことは大好きだし、彼らのアルバム・タイトルをヒントにこの曲が生まれたことを嬉しく思ってるんだ」
――ちなみに、トムさんが子供の頃に最も影響を受けたバンドや、憧れのアーティストがいたら教えてもらえますか?
「幼い頃はマイケル・ジャクソンと
クイーン が大好きだったんだ。もちろん今でもその影響は残っているわけだけど、一番は彼らの音楽が持っている祝福感のようなもの、その感覚を僕らの音楽も持っていると思いたいね。もちろんその対極にあるようなスーサイド、
ジョイ・ディヴィジョン 、
レディオヘッド のようなダークな音楽もそのあとで聴いて好きになって影響されたわけだけど、そこを通過した上で今の音楽があるんだ」
――ところで、どんな経緯からフランツ・フェルディナンドのアレックス・カプラノスがプロデュースすることになったんですか?
「共通の友人がいて、彼からアレックスにデモテープが渡ってたんだ。そのあとで一緒に飲みに行く機会があって話をしたら意気投合してね。というのも、それまでに何人かのプロデューサーと会っていたんだけど、あまりに方向性が違うというか、話が合わなくてね。僕はPCで作られたようなポップ・ミュージックが氾濫している中、もっと血の通った人間的でオーガニックな音楽を作りたいってところで共感し合えてね。そしたらアレックスから、僕がプロデュースするよって思いがけない展開になったんだ(笑)。もちろんこのアルバムには、僕ら全員大満足してるし、アレックスと一緒にやれたことを誇りに思うよ」
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